やさしくて気づかいできるタイプほど、周囲のことが気になってモヤモヤしがち。読者から届いた職場や友人との人間関係のお悩みに、3人の先輩が「図太道」的視点からアドバイス!
お答えしたのは…
心療内科医・医学博士 姫野友美さん
ひめのともみクリニック院長。ストレスによる病気・症候群等に関するコメンテーターとしてテレビ番組や新聞・雑誌等で活躍。女性の立場に立った適切でわかりやすいアドバイスは多くの支持を集める。
曹洞宗徳雄山建功寺住職 枡野俊明さん
禅の思想と伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。大学教授、庭園デザイナーとしても活躍。ニューズウィーク誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」に選出。
イラストエッセイスト 犬山紙子さん
鋭い洞察力とユーモアあふれる視点のコラムが人気。雑誌、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍。2018年には「#こどものいのちはこどものもの」を発足させ、児童虐待をなくすための活動も行っている。
【お悩み①】
納期が近くなるとイライラして大きな声で怒鳴ったり舌打ちしたりと、不機嫌を表に出す先輩がおり、ストレスで肌荒れになり悩んでいます。(33歳・デザイナー)
相手は変えられませんが、かといって合わせる必要もありません。あるがままをそのままに認めれば好きも嫌いもない、ということを表す「悟無好悪(さとればこうおなし)」という禅語があります。その人はそういう人だとまず認める。そのうえで「もしよろしかったらお手伝いすることありますか?」とこちらから先に動くのもひとつの方法です。「ゆるがない自分でいること」を意識して相手に振り回されず“自分の距離感”で相手とつきあいましょう。(枡野さん)
世の中いろんな人がいるので、この人のやり方は合わないと思ったら心のシャッターを下ろし、ある一定の距離を保って“自分を守る図太さ”も必要です。生身のままでイライラを浴びる必要はなく、たとえば心の中であだ名をつけて一線を引くのも有効。“イライラさん”や“完璧マン”など(笑)、不機嫌な人をキャラ化して客観視することで距離を取り、自分を守って。(姫野さん)
【お悩み②】
女子会中にその場にいない人の悪口を一人が言いだし、段々とエスカレートしてきたとき、どうしたらいいか困ります。(32歳・総務)
怒りには「和顔(わげん)」というお布施をもって返す。「和顔」という禅語は、なごやかな表情という意味。口汚く悪口を言っている人をなごやかな表情で受け止めたら、相手はグウの音も出なくなるでしょう。なごやかな顔にはお布施と同じ効力があるのです。安易に同意せず、和顔でかわす。まさしく図太い、大人の対応です。(枡野さん)
これは嫌ですよね。いちばん大事なのは、悪口を言った人を“いい気持ちにさせない”こと。全然違う話をする、トイレに立つなど、「あれ、悪口言ったら皆が離れていっちゃったわ」と、失敗体験につなげて気づかせることが大事。自分以外みんなが同調していても、本当に悪口を言いたいのは意外に一人だけってことも多いと思います。(犬山さん)
【お悩み③】
上司や先輩など目上の人が残業していると、自分の仕事が終わっていても帰りづらいんです。(30歳・メーカー)
「今は働き方改革の時代だから、早く帰る人のほうが評価が高い」と心で唱えて、図太く一歩を踏み出しましょう。他人って自分が思うほど人のことあまり考えてないですよ。思っていたとしても「帰れるんだ、いいなあ」くらいのものです(笑)。モヤモヤするくらいなら、さっさと帰ってよし!(姫野さん)
イラスト/平松昭子 取材・原文/佐久間知子 構成/山岸成実〈BAILA〉 ※BAILA2020年2月号掲載