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「ラピダス」って何? 日本の半導体について大江麻理子キャスターと深堀り!【働く30代のニュースゼミナール vol.33】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第33回目は「ラピダス」について大江さんと一緒に深堀りします。

今月のKeyword【ラピダス】

らぴだす▶「Rapidus(ラピダス)」は2022年8月に設立した日本の半導体の新会社。トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど日本の大企業8社が出資し、国も支援。半導体において、日米両政府が連携し、米IT大手IBMとの提携により2027年をめどに先端半導体の量産を目指している。ラピダスはラテン語で「速い」の意。

今月のKeyword【ラピダス】

関連ニュースTopic

2022年11月

次世代半導体の国産化を目指す新会社ラピダスが本格始動
ラピダスが会見を開き、世界と協力して2027年をめどに先端半導体の量産を目指すことを発表。日本企業8社が約73億円を出資し、政府も700億円の補助金を助成する
2022年12月

ラピダスが米IBMとの提携を発表。最先端の半導体技術の提供を受ける
スーパーコンピューターなどに使う2ナノメートルの最先端半導体の技術をこの分野で世界をリードしているIBMとの共同開発により推進。国内製造拠点に導入する
2023年1月
西村経産相が米商務長官と会談。次世代半導体をめぐる日米連携を強化 
会談では、日米両政府が次世代半導体の早期実現に向けて連携を強化していくことで一致。ラピダスと米IBMも参加し、半導体の販路開拓での連携など戦略を報告した

バイラ読者にアンケート

 (回答数107名 2022年10月28日〜11月1日に実施)

Q ここ数年、世界で半導体が不足していることを知っていますか?

Q ここ数年、世界で半導体が不足していることを知っていますか?

約8割が「半導体不足を知っている」と回答。実際にその影響を感じたことのある人は、仕事と生活ともに各約3割との結果。具体的に「部品や機材の納期遅延」「新車の納車が1年以上かかり驚いた」などの声が

大江ʼs eyes

認知度が高いですね。仕事と生活それぞれで半導体不足の影響が出ている様子がコメントに表れていました。「発注先に機材が確保できないと言われた」「工場勤務の人がよく休みになっている」といった仕事での切実な声、生活では「給湯器の故障にすぐ対応してもらえなかった」との声もありました

Q 次世代半導体の国産化を目指す新会社「ラピダス」が、日本で発足したのを知っていますか?

Q 次世代半導体の国産化を目指す新会社﹁ラピダス﹂が、日本で発足したのを知っていますか?

認知度は約3割。知らなかった人の「わかりやすく教えてほしい」という声の一方、知っていた人は電子機器メーカー、SE、IT系の仕事が多く、「国が半導体産業の救済に乗り出すのが遅いが、期待している」との声も

大江ʼs eyes

日本は半導体の製造の分野では後れをとっていたのですが、ラピダスの誕生により、次世代半導体を国内で量産することが期待されています。それは経済安全保障において、日本だけでなくアメリカやアジアにおける重要な存在になり得るもので、日本の果たす役割が世界から注目されています

Q アメリカが半導体技術の中国への輸出規制をしていることを知っていますか?

Q アメリカが半導体技術の中国への輸出規制をしていることを知っていますか?

認知度は約3割。ただ、このニュースと半導体不足がどうつながっているのかわからない人も多く、「米中対立と日本の半導体不足にはどんな関係が?」「そもそも半導体不足はなぜ起きているの?」といった質問も

大江ʼs eyes

半導体不足の背景には、米中対立やコロナ禍での巣ごもり需要やウクライナ侵攻など様々な要因がありますが、激化する米中対立に日本は大きな影響を受けています。アメリカは半導体製造装置のシェアが高い日本やオランダにも対中国輸出規制で追随を求める、強硬な姿勢をとっています

Q 日本政府が推進している経済安全保障の強化に賛成ですか?

Q 日本政府が推進している経済安全保障の強化に賛成ですか?

賛成が約8割。コロナ禍のマスクをはじめ現在の半導体まで、生活や産業に欠かせないものや材料が不足する事態を経験し「国内で安定して供給できる仕組みがあると安心」、日本の半導体産業の凋落を知る人からは「どう復興するのか知りたい」との声が

大江ʼs eyes

経済安全保障という概念が唱えられ始めたのはコロナ禍がきっかけで、サプライチェーンの多様化を考えなければいけないと、2020年以降、世界が本気で考え始めました。中でも半導体は私たちの生活から切っても切り離せない社会インフラのひとつで、安定供給が最重要課題となっています

関心が高まる「経済安全保障」とは?大江麻理子さんが分かりやすく解説!

「半導体は、産業の“コメ”から“インフラ”へ。日本がその製造分野で重要なプレイヤーに」

「ラピダスは、昨年設立した日本の半導体の新会社。世界でダイナミックな経済安全保障の動きが起きている象徴的な事例だと思い、取り上げました。特に今、半導体がずっと不足している状況です。アンケートにも生活に影響が出ている声がありましたね。スマホ、パソコン、自動車、産業機器、家電などあらゆる電子機器に搭載されている半導体は、私たちの生活に欠かせません。昔は産業の“コメ”と呼ばれていましたが、今は産業の“インフラ”。経済安全保障の代表的な存在になってきています。そして、その半導体の製造の分野で、日本が世界で存在感を示していけるかもしれない、重要な局面だと思います」と大江さん。背景にはどんな世界情勢がありますか?

「まず、米中の経済対立があります。半導体をめぐる米中の覇権争いが深刻化していて、アメリカは昨年10月から先端半導体の中国への輸出規制を開始。対中国に強硬な政策をとっています。その流れに日本も巻き込まれているんです。次に、最先端の半導体の製造拠点が限られている現状があります。世界の半導体の約6割を台湾の半導体大手TSMCが生産していて、台湾有事のリスクが取りざたされるなかで、『もう少し半導体の製造拠点を分散化させないといけない』という世界の認識があるんですね。台湾有事まで至らなくても台湾の海上封鎖が起こっただけで、半導体の輸出が止まり、世界中の製造業が打撃を受けるからです」

そうしたなか、昨年12月米IBMとラピダスが次世代半導体の開発で提携を発表。

「アメリカにとって、地政学的リスクを考えて製造拠点を分散するにあたり、日本が重要な存在になっているのだと思います。ラピダスは、IBMからスーパーコンピューターやAIに活用する2ナノメートル(ナノは10億分の1)の世界最先端半導体の技術提供を受け、日本で量産を目指します。半導体は回路線幅が小さいほど高性能。日本の技術は今、家電などに使う40ナノ台にとどまっているため、IBMとの提携は技術の遅れを取り戻すことにもつながります」

「日本にとってチャンス。もう一度、製造分野でも半導体強国になることを目指すときがきた」大江さん

「日本にとってチャンス。もう一度、製造分野でも半導体強国になることを目指すときがきた」

ラピダスはどのような会社ですか?

「日本の大手企業8社が出資し、政府も支援。官民の総力戦で、国際レベルで半導体を強化していこうという動きが具現化したような会社です。できたばかりのラピダスに、IBMがここまでコミットする理由は、日米両政府が次世代半導体の分野で協力していくことを確認していることが大きいと思います。トヨタ自動車をはじめ参画している企業はどこも半導体が不可欠な企業。一社でこの規模のものをつくるのが非常に難しいので、力を合わせているのです。ラピダスの小池社長と東会長は、日本の半導体産業界のレジェンドのような方々です」

日本は、1980年代に半導体産業で世界の約5割のシェアを占めていたことも。

「ただその後、すべてをひとつの会社のなかで完結しようとしてしまったこともあり、最先端の半導体に投資をして開発し続けることが体力的に難しくなってしまいました。半導体産業は、多額の設備投資が必要で、しかも世界の景気の波の影響を大きく受けるんですね。時を経て、米中対立の激化や地政学リスクの高まりを背景に、もう一度、日本が製造の分野で半導体強国になることを目指すべきときがきたといわれています。日本は、半導体を製造する過程で使われる半導体製造装置や、半導体の素材の分野では今も強みを持っていて、製造の分野が足りないパズルのピースなのです」

ラピダス以外にも、半導体の製造能力の強化の一環で、政府が支援をして台湾のTSMCの工場が熊本に建設されている。

「今、日本の基幹産業である自動車の生産が半導体不足のために滞っている状況です。これからさらにIoTの時代であらゆるものに半導体が入っていくなかで、ものが売れるタイミングに作れないといった機会損失を減らす意味でも、半導体を国内で製造する環境を整えることが重要なんですね」

これまで築いてきた各国との信頼関係や技術を生かして、日本だからこそできることが最近増えてきている、と大江さん。

「日本の立ち位置は世界でも特殊で、どの国ともある程度仲がいいことが強みになってきていると感じます。『日本が誇る“ものづくり”とIoTの機能を融合できると、どこよりも強いものができるはず』という日本のメーカーの思いを実現するためにも、ラピダスの事業がうまくいってほしいですね。読者の皆さんも、“半導体”や“経済安全保障”の分野で、日本が世界の中でどういう立ち位置にいるんだろうという観点でニュースを見ていただけたらと思います」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/花村克彦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2023年4月号掲載

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