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注目ワード「PBR」って何ですか?大江麻理子キャスターが解説!【働く30代のニュースゼミナール vol.38】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第38回目は「PBR」について大江さんと一緒に深掘りします。

今月のKeyword【PBR】

ぴーびーあーる▶株価純資産倍率(正式名称はPrice Book-value Ratio)。企業が保有する資産価値から現在の株価の水準を判断するための指標。1株当たりの企業の資産価値に対して株価が何倍かを示す。PBR1倍が株価の下限として意識され、PBRが1倍を下回ると割安、あるいは市場から評価されていないことを意味する。

今月のKeyword【PBR】

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2022年4月

東京証券取引所が、プライム・スタンダード・グロースに市場区分を再編
東京証券取引所(以下、東証)が、市場の活性化を狙って東証1部など従来の市場区分を見直し、プライム、スタンダード、グロースという新3市場がスタート
2023年3月

東証はPBR1倍を割る上場企業に株価を引き上げる改善策の開示を要請
東証は市場区分の見直しに関するフォローアップ会議を開催し、企業価値向上のために、資本コストや株価を意識した経営を要請。PBR1倍超えなどを上場企業に求めた
2023年6月
日経平均株価が3万3000円台を回復。およそ33年ぶりの高値を更新した
’23年の日経平均株価は1月4日に2万5700円あまりの水準からスタートした後、上昇傾向が継続。5月に3万円台に乗せ、6月に3万3000円台を回復しバブル後の最高値を更新

バイラ読者にアンケート

 (回答数115名 2023年6月23日〜26日に実施)

Q PBRという言葉の意味を知っていますか?

Q PBRという言葉の意味を知っていますか?

認知度は2割弱だが、金融ニュースへの関心は高く、日経平均株価が3万3000円台を回復したことを知っている人は約6割。PBRに興味がある人も多く「一から知りたい」「株価への影響を教えてほしい」といった声多数

大江ʼs eyes

PBRは、東証のフォローアップ会議で注目された言葉で、今年に入ってからよく聞かれるようになりました。意味までの認知度は低めですが、耳にしたことがある人もけっこういるようですね。今後ますます注目され、投資をする際には欠かせない観点でもあるので、押さえておくといいと思います

Q 投資に関心がありますか?

Q 投資に関心がありますか?

「関心がある」と「どちらかといえば関心がある」をあわせると約8割。投資経験者は約半数で、最も多かったのが「投資信託」、次に「株式投資」。’24年導入予定の新NISAを利用してみたい人は約8割に上った

大江ʼs eyes

投資への関心が高く、経験がある方が多いですね。投資信託の経験者が多い点から、投資の中でも始めやすいところから経験を積まれているのかなと感じました。貯蓄から投資への流れを促すためにできたNISAという制度などがうまく機能しているということかもしれませんね

Q 東京証券取引所が、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場区分に再編したことを知っていますか?

Q 東京証券取引所が、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場区分に再編したことを知っていますか?

認知度は3割。知っている人からは「東証1部、2部から何が改善されたのですか」「東証の市場区分の再編と最近の日本株の株高に関係はありますか」、知らない人からは「なぜ再編したのですか」といった質問が

大江ʼs eyes

知らない方が多めですが、市場区分の変化による生活への影響などは確かに少ないかもしれませんね。ただ、プライム市場の上場を維持するためにPBR1倍超えを目指さなければならないなど、日本の株式市場改革が本格的に進んできています。そのもととなっているのがこの再編だということです

Q 勤め先が、企業価値を高める取り組みをしていると感じますか?

Q 勤め先が、企業価値を高める取り組みをしていると感じますか?

「はい」と回答した人からは、「若手女性を含めた人材の育成」「成長事業に力を入れて取り組んでいて、収益増に」「中長期的な経営ビジョンを掲げている」「賃上げや働きやすい職場環境づくりの推進」などの具体例が

大江ʼs eyes

回答から皆さんの肌感覚、働く人の視点からの企業価値の向上のポイントが感じられて興味深かったです。PBRは株主にどう評価されるかという視点ですが、働く人も会社の重要なステークホルダーです。誰から見ても企業の価値が上がっている姿が理想であるということに、あらためて気づかされました

「東証が上場企業にPBR1倍超えを要請。株式市場改革の推進が株高の原動力に」大江さん

「東証が上場企業にPBR1倍超えを要請。株式市場改革の推進が株高の原動力に」

「金融関係のニュースを聞いていて、よく耳にするようになったPBRという言葉。これまでもあった視点ですが、最近の東証の市場改革で注目され、今後も重要視され続けるキーワードだと思い取り上げました」と大江さん。アンケートでは投資への関心が高く、PBRを一から知りたいとの声も。

「PBRとは、株価純資産倍率と呼ばれる、株価の水準を判断する指標。企業が持つ資産価値以上の経営ができているかどうかを見る指標で、PBR1倍を割れていないかが重要な視点になります。少し難しいのですが、PBR1倍というのは、その企業をたたんで手持ちの資産を全部売ってお金に換えたときの価値と、株価が同じ状態。だからPBR1倍割れをしている企業は、解散するよりも企業の価値を損なっているような経営状態だと株式市場から思われていることを意味します。本来ならばもともとの企業価値を高める経営をしなければいけません。でも実は、東証のプライム市場の上場企業にもPBR1倍割れの企業が多いんです。そこで東証は、今年3月にPBR1倍割れのプライム・スタンダード市場の上場企業に対して、PBR1倍超えなど株価改善の具体策を講じるよう要請しました」

この低PBRを是正する改革が、最近の株高の原動力ともいわれていると大江さん。

「一部の日本企業は、これまでそんなに自社の株価を上げようという観点で経営をしてこなかったところがありました。ただ、企業は誰のものかと考えると、株主や従業員、その企業のものやサービスの利用者など、すべてのステークホルダーのものです。企業は社会の公器だといわれますし、皆にとって存在意義のある企業でいるためには、株価を上げることが企業の価値向上につながるという視点をより強化した経営が大切だと、東証が警鐘を鳴らしたんですね。東証の市場改革により、今はPBR改革に乗り出す企業が増え、PBRが1倍を超えなければ株主たちから突き上げられる状況になってきていることもあって、株高の基調をつくったと言われています」

「日本の株式市場が世界から注目されるなか、企業価値の向上が常に求められている」大江さん

「日本の株式市場が世界から注目されるなか、企業価値の向上が常に求められている」

PBR1倍を超えるために企業はどんな取り組みをしているのですか。

「目先の株価を上げるためには自社株買いなどの手立てもありますが、やはり将来の成長性に期待して株主は株を買うわけです。中長期的な視点で企業価値を高める経営をしていく必要があります。最近注目されたのがトヨタ自動車。電気自動車開発の新技術である全固体電池を’27年にも実用化する計画を発表すると、株主還元の強化と併せて株価が急騰し、PBRが1倍を超えました。象徴的な出来事だったと思います」

今年6月に日経平均株価が3万3000円台を回復し、およそ33年ぶりの高値を更新。「日本株が堅調なのには、株式市場改革のほかにも様々な要因があります。たとえば、世界から中国に向かっていたお金が、半導体分野などの米中対立の深刻化により別の行き先を探すため、中国ではない代替の投資先として日本が選ばれているという見方があります。海外から見ると円安による割安感もあるでしょう。米投資家のウォーレン・バフェット氏が日本の商社株を買い進めていることも話題になりました。日本企業の業績が好調なことも大きいですね。日本にお金が向かう流れが補完される理由がいくつもそろってきたこともあって、日経平均株価は3万円を超え、バブル期以来およそ33年ぶりの水準となっています」

読者からは、「この株高は日本経済にとってよい影響が大きいですか」との質問も。

「先のことは誰にもわかりませんが、企業業績を伴っていて、PBR改革を含めて企業の価値を高めていこうという機運が今の株高のもととなっていることを考えると、バブルのようなものではなく、実態を伴ったものであるという見方が今のところは多いです。一方、株などの資産を持っている人は恩恵を受けられますが、持っていない人はその恩恵を受けられないだけではなく、賃金の上げ幅が物価の上昇になかなか追いつかない厳しい状況が続いています。資産を持つ人と持たない人との間で恩恵に差が出ているのが現状だと思います」

これから「PBR1倍を超えている企業か」という視点を持つと面白いと大江さん。「まず投資判断の重要なポイントになってくると思います。そうなったときに1倍割れをして企業価値を高められない経営者に対する厳しい判断がニュースになることも増えるでしょう。『PBRが1倍を割ると、株主にこんなことを言われるんだな』とか『こんな大企業なのにPBR1倍割れなの?』といった視点で注目するといいと思います」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/木村 敦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2023年10月号掲載

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