「カトパン」の愛称で親しまれ、最近は報道番組でも活躍する加藤さん。いつも笑顔で楽しそうに仕事をしているけれど、今の彼女があるのは、その裏で、たくさんの努力を重ねてきたから。そんな頑張り屋の加藤綾子さんに仕事や対人関係の極意を聞きました!!
「自分からわき出てきた言葉しか言わない。ニュースを伝えるうえで、 いちばん大切にしていることです」
最初のころは、緊張の連続で、生送中の2時間、生きた心地がしなかった
「バラエティ畑で育ってきた私が、今、報道番組をやっているなんて、自分でもびっくりしています」
加藤綾子さんがそう笑うのは、古巣のフジテレビで、4月から始まった夕方の報道番組「LiveNewsit!」のこと。彼女はこの番組でキャスターとして本格的なデヒューを果たすことになった。
「お話をいただいたときは、正直、迷いました。これまでやってきた情報番組とは違って、報道番組は、扱うニュースの重さや深さが違うので、自分にできるだろうかって。でも、そうやって必要とされることはとてもありがたいことだし、ちょうど新しいことに挑戦したいと思っていたタイミングでもあったので、お引き受けすることにしました」
思い切っての決断だったが、「最初のころは、本当に怖かったですね。生放送中の2時間、生きた心地がしなかった」と言う。
「夕方はものごとが動く時間帯でもあるんですね。放送の10分前に事故や事件の一報が入ってくることもしばしばです。突然、現場の映像が映し出されることもあって、その映像に対して臨機応変に対応しなければならないし、進行も急に変更になるので、『ここは何分つないでください』とスタッフの指示が出るなかで、全体を調整していかなければならない。緊張の連続でした」
頭の中はまさにフル回転!こんなタフな現場を仕切れたのは、とっさの機転が必要とされるバラエティで培った経験があったからだが、その一方、不慣れな仕事に萎縮してしまうことも。
「バラエティは、ものごとをニュアンスで伝えることができればいいけれど、報道はそうはいきません。事件や事故をちゃんと理解して、自分なりの解釈をしっかり持っていないと伝わらない。でも、なかなかそこに自信が持てなくて。
たとえば番組で専門家などに話を聞くときも、『この質問、変かな』『こんなこと聞いたら恥ずかしいかな』と不安で、それで語気が弱まってしまうことがあったんですね。そうしたら番組を統括している方がそんな私の気持ちを察知して、『心配することないよ』と。『加藤が感じていることは、間違ってないから、はっきり聞いて大丈夫だから』と励ましてくださったんですね。それですごく背中を押された気がしました。私が自分らしくいられる環境を皆さんがつくってくれたことに感謝しています」
「これ、どう思う?」と聞かれたとき、自分の考えを言える自分でいたいんです
「今は自分を磨かなければいけない時期。大事なのは、周囲の評価を気にすることではなくて、自分のやるべきことをしっかりやること。頑張っていると、その気持ちが周りに伝わるので、少しずつ周囲との距離も縮まっている感じがします」
毎日、新聞数紙に目を通すのは当たり前。疑問があれば、同番組の解説員・風間晋さんに聞いて勉強したり、ときには気になる現場には足を運んで取材するなど、積極的にニュースにアプローチしている。
「たとえばプロデューサーに『このニュース、加藤、どう思う?』と聞かれたら、『私はこう思うから、こういう展開がいいと思う』と意見を言って、それを台本に反映してもらったり、自分で言葉を書き足したり。先輩たちと意見交換しながらバランスをとっていきます。だから『これ、どう思う?』と聞かれたとき、ちゃんと自分の考えを言える自分でいたいんですよね。
オンエア前には会議があって、報道局の方々が、その日の出来事について解説してくれるんですね。そのやり取りを聞いて、『この事件は、もっとここをひもといていく必要がありそうだな』という道すじを自分なりに見いだしています」
「最近『顔つきが変わってきた』と人に言われるようになりました」
緊張感あふれる生活のせいか、「最近顔つきが変わってきたと人に言われる」ことも。以前のやわらかムードとは違う、シャープな新生カトパンへとステップアップしつつある。そんな加藤さんが、伝えるうえで最も大切にしていることは、「自分からわき出てきた言葉しか言わないこと」だ。
「表向きのきれいな言葉とか、当たり障りのない言葉を並べるのではなくて、自分が本当に感じたことしか言わない――と決めています。人の目や周囲からの評価を気にして発言すると、どんどん軸がブレるので、そこは腹をくくらないと視聴者にも伝わらない気がするんですね。
だからといって、バッサバッサと切っていくのも自分らしくないので、冷静に視聴者に投げかけるのが自分のスタイルなのかな。『it!』という番組名のとおり、『これ、気になってたよね』というところをガチガチに決めた言葉ではなくて、自然体でお伝えすることができたらいいなと思っています」
いつも楽しそうに明るい笑顔で仕事をしている加藤さん。でもその下には、人に見せないたくさんの努力と強い決意が隠されている。
人前が嫌だった中学生時代。今はつらくても苦労できる喜びのほうが大きい
さまざまなプレッシャーがあってもそれを顔に出さず、周囲を盛り上げながら前進する加藤さん。それには、こんな思いがあった。
「実は中学生のころ、アトピー性皮膚炎がひどくて、外に出るのも嫌だったんですね。それを考えると、今、人前で話す仕事ができていることは、心からありがたいと思うんです。だからつらくてもあまり苦にならない。苦労できる喜びのほうが大きいんです」
彼女の笑顔にみんなが元気づけられるのは、こんなポジティブマインドゆえだろう。
「ちょっと落ち込んで『ハア~ッ』となっても、ずっとそこにしばられたり、あとあとまで悔いを引きずることはないですね。気持ちの切り替えが早いのかもしれません」
では仕事で怒ることは?
「もちろんあります。『それはないでしょう!』『もう!』って(笑)。でも、急に感情的になったりすることはないですね。頭にきても何日か考えて、『言わなくてもいいかな』と思うことは言わないし、『やっぱりおかしい』と思えば、ハッキリ言うし。そのときは怒りをぶつけるのではなくて、相手に気づいてほしいこと、変えてほしいことを冷静に伝えるようにします。『こういうやり方は、こういう理由で納得できないから変えてほしい』って」
怒りを人にぶつけるのではなく、それを分析して、改善策を探る。できそうで難しいことのようにも思える。テレビなどを見ていて感じる彼女のコミュニケーション上手は、「生まれ持った才能なのでは?」と思われがちだが、こうした努力や気づかいがあるからなのかもしれない。
「どこの職場でも、何をやっていても、いい面、悪い面は必ずあります。たくさんの人とかかわっている以上、すべてがうまくいくなんてことはないですよね。だからこそ、ある程度、許し合って、よりよい関係をつくる道すじを探ることが大事なのかなと思います」
対人関係を磨くために私が努力している5つのこと
コミュニケーション上手な加藤綾子さんが、対人関係で気をつけていること、努力していることとは?
「相手の気持ちを知る」に近道はない
「相手の立場に立つ」のは簡単ではない。摩擦や葛藤から逃げず、相手の気持ちを考え続けることが大事
人の話を聞くときは、ほっぺたキープ
口角を上げるだけでなく、頰の肉を意識してキープすると、生き生きとした表情に。リフトアップ効果も!?
初対面で人を判断しない
初対面で判断するのは、人づきあいの幅を狭めることに。相手を観察して、少しずつ関係を築く
好きになると好かれる
相手への愛があれば、会話も弾んで温かい雰囲気に。「愛あるツッコミ」で、相手への愛情を表現してみる
ひと手間を惜しまない
直筆の一筆箋、小さなお土産など、人とは違うちょっとした気づかいは、相手に必ず伝わるはず
撮影/熊木優〈io〉ヘア&メイク/野口由佳〈ROI〉スタイリスト/斉藤くみ取材・文/佐藤裕美構成/喜多佳子〈BAILA〉 ※BAILA2019年10月号掲載