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7月歌舞伎座に #ナウシカ 役で出演!! #中村米吉 のほぼ独り語りスペシャル♡【歌舞伎沼への誘い♯40】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。そのスペシャル版としてお届けするのは、愛らしいルックスと毒のあるトークで人気の若手の女方・中村米吉(よねきち)さんのインタビュー。7月歌舞伎座の『風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―』では、ナウシカ役で出演します!! 世界的人気作品のヒロインを米吉さんがどう演じるのか、バイラ歌舞伎部は興味津々。そのビジュアルや役作りについて伺いました!!

ナウシカを勤める中村米吉の独占インタビュー

↑この日は、ナウシカカラーの青を意識したお着物の米吉さん。気品があって素敵です♪ 鳥の人・ナウシカだけに、歌舞伎座の座紋・鳳凰丸とも相性バッチリ。

■どすっぴんキャラのナウシカと舞台化粧のバランスをどうとっていくかが難しいところです

まんぼう部長 米吉さん、7月歌舞伎座でのナウシカ役、おめでとうございます!! 

米吉 ありがとうございます。お話をいただいたときは、まさに青天の霹靂で、菊之助のお兄さんに「本当によろしいのですか」とおうかがいしたくらいです。 世界的にも人気のキャラクターを演じるということで、プレッシャーはありますけれど、機会をいただいたからには、良い作品になるように精一杯勤めたいと思っています。

部長 2019年新橋演舞場での新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』では、昼の部・夜の部と分けて、物語の全編を上演しましたけれど、今回は物語の前半部分を中心に、『風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―』と題して、クシャナを主人公にした物語ですね。

ばったり小僧 そして初演でナウシカを演じた尾上菊之助さんが今回はクシャナを演じて、初演でケチャ役だった米吉さんが、今回はナウシカ役に。扮装したビジユアルを拝見しましたが、めちゃくちゃかわいいです!! ボブカットも似合ってるし、足元のブーツも私物のようにハマっていて、まるでフィギュアのようですね。

米吉 それは言いすぎですよ(笑)。ナウシカの髪型は、初演で菊之助のお兄さんがナウシカを演じたときは、原作に近いボブのようなものもありましたが、真ん中で振り分けにして、後ろはポニーテールで、もっと古風な雰囲気のものを主に使ってましたよね。それは歌舞伎の床山さん(ヘア担当)が作ったものだったんですけれど、今回は一般の舞台でもお仕事をされているスタッフの方がナウシカのビジュアルを監修してくださっていて、より原作に近い形でということで、あの写真のボブのカツラを作ってくれました。更に、もともとある衣裳や小道具を活かしつつ、靴を新しくしたり、飛行帽なんかも新たに作ってくださっています。

小僧 わあ、それも楽しみです。

ナウシカ役の歌舞伎俳優の中村米吉

↑ナウシカの扮装をした米吉さん。超キュートです!! 前回のケチャ役もかわいくて、歌舞伎を観たことのないお客さまに「ひとりだけ女の子いたよね」と言われていましたが、今回もきっと惑わされる人がいるはず!?(令和4年7月歌舞伎座 撮影/永石勝)

米吉 ただ、あのカツラにあうメイクはどんなものなのかなということで、それを考えるのはたいへんでした。菊之助のお兄さんやプロのヘアメイクさんとも相談して、まずは手始めに肌の地色をどう作っていくかというところから考えました。白く塗るのか、塗らないのか。一度白粉を使って顔をしてみてボブのカツラをかぶったんですが、「いや、これは白すぎる」ということで、もっとトーンを落として肌に近い色で作ってみたり。そこから、眉の描き方、目元の化粧、口紅をどうするかなど、何度も何度も試しまして、結局、自分としても明確な正解の出ないまま、この扮装の写真撮影をしたんですね。

写真はこんな感じになりましたけど、写真では良くても舞台に立ったら見え方が変わります。お客様は距離のあるところからご覧になるし、照明もあたるので、もっと舞台映えするお化粧にしなければならないかもしれない。でも、ナウシカって、化粧っけがあるキャラクターじゃない。あの子、完全なるどすっぴんだと思うんですよ(笑)。そういう飾り気のないキャラクターと舞台化粧のバランスをどうとっていくかというところが難しいです。さらに僕は男性ですから、男性が女性を演じるというところも考慮しないといけないので、まだまだ課題が山積です。これから稽古をやりながら、また変化していくと思います。ことによったら初日が開いてからも。

部長 そうすると、衣裳やメイクによって、お芝居もまた変わってくるという感じですね。

米吉 菊之助のお兄さんのナウシカが基本になるとは思いますが、これだけ拵えが原作に近いものになってくると、どういうバランスでやったらいいのか……というのが悩ましいですね。たとえば通常、女方のカツラは、いわゆる富士額で、額の真ん中がハートマークみたいなラインになっています。でも、今回のナウシカのように前髪がおりてますと見え方が全然違ってくると思うんですね。それでお芝居を古風なものにすると、果たして合うのか、という不安があります。とはいえ、歌舞伎ですし、あまり現代的にもできません。今のところ、お先真っ暗という感じです(笑)。菊之助のお兄さんや振付の尾上菊之丞さんをはじめ、いろいろな方のご意見をよくよく伺いながら、歌舞伎のナウシカとして作り上げていきたいと思っています。

歌舞伎俳優の中村米吉の撮り下ろし写真

↑米吉さんの美しさが映える空抜けのカット。その目の輝きに、ナウシカに賭ける気持ちを感じました!!

■「ナウシカにはなれない」って言ってたのに、なっちまったじゃないかって話です(笑)。

部長 米吉さんは、ナウシカのどんなところが魅力的だと思いますか。

米吉 ナウシカは、かわいらしさ、幼さがありながらも非常に芯が強いところがあります。勇ましくて能動的で、率先して自ら動いていきますし、理想に向かって、かなり突っ走るし、ときには思い切った行動に出るところもある。そこが王道のヒロイン像とは違うところで、ナウシカというキャラクターが意外性をもって、みなさんに受け入れられたところじゃないかと思います。

今ある社会を変えようとしてる、と言ってしまうとナウシカは革命家みたいに聞こえますが、それがただの無鉄砲な人に見えないのは、やっぱり彼女が崇高な理想を掲げているからだと思うんですね。人種はおろか、どんな生き物も差別をせず、戦争を憎み、平等で平和な、皆が支えあえる社会を理想としている。好きな人のために命をかけるとかではなくて、これだけの大きな流れの中に突入していく女の子っていうのは、歌舞伎では、すごく珍しいですよね。 ですから、そういうナウシカに対して、観てくださる方々に「なんだ、このむちゃくちゃな人は!!」と思わせないように僕は勤めないといけません。共感できる、応援したくなる存在になっていないと、話として成立しなくなりますから。

だから本当に中身、ですよね。ナウシカの扮装を見て、みなさんにお褒めの言葉をいただきましたけれど、それは表層的なことでしかなくて、大事なことは、たとえ見た目が役に似ていなくてもその役に見えてくる、その役としてお芝居を成立させることです。自分にそういう腕があるかどうか——というところが試されている気がします。

美しい中村米吉の独占インタビューと撮り下ろし写真

↑ナウシカに向けてダイエットしているせいか、お顔もシュッとして、凛々しさ増し増しの米吉さん。力強い目線に小僧はハートを射抜かれたのでした♪

小僧 ちなみにナウシカのように「大きな理想のために闘うぞ!! 」みたいな気持ちは、米吉さんの中にもありますか?

米吉 ないです、ないです、僕、小市民だから。理想と現実の狭間でうごめく有象無象ですよ(笑)。前回、ケチャをやったとき、「とてもナウシカにはなれない」というセリフがありましたけれど、そういうことです。ナウシカは、崇高な理想のために、自分を犠牲にできるような人。自らを顧みず他者を救おうともするし、誰もあんなふうにはなれない。でも、そうなれたらいいなって憧れがある。そこがナウシカが愛される理由だと思います。でも、「ナウシカにはなれない」って言っていた人がなっちまったんですけれど(笑)。

小僧 確かになっちまいましたね(笑)。でも、取材会で菊之助さんが米吉さんのことを「清らかさがある」とおっしゃってましたから、ナウシカとどこかイメージがかぶるところがあるんじゃないでしょうか。

米吉 「清らかさ」って、お兄さん、誰かと間違ってないかしら(笑)。そうおっしゃっていただけるならば、そのお言葉を信じて清らかで売っていくしかないんですが(笑)最近は、バイラさんのおかげもあって口ばっかりの米吉が知れ渡ってきてしまったので、お客さまは「あのおしゃべりが!」と思って観るかもしれないから心配ですね。

部長 誰もそんなこと思って観ないですよ!!(笑)。

米吉 本当にー?(笑)だけど、これは(坂東)巳之助のお兄さんが言ってくださったんですけれど、「今回は確かにクシャナを中心にした芝居なのかもしれないけど、ナウシカはナウシカだからね」と。「お客さまは『風の谷のナウシカ』を観にいらっしゃるんだから」と。兄さんは『ナルト』を歌舞伎化した経験もおありになるから、原作のある作品のタイトルロールの役を演じることの重みをよくご存じなんだと思います。だから僕も菊之助のお兄さんのクシャナに頼りきるのではなくて、ナウシカとしてちゃんと存在しないといけないなと思っています。

ナウシカを勤める歌舞伎俳優の中村米吉の独占インタビュー写真

↑米吉さんの横顔に魅せられたカメラマンのつゆっきー。右側の顔立ちは、より繊細な感じで美しいです♥

小僧 物語のラストは、ナウシカの宙乗りということで、これも楽しみです!! 米吉さんは初めての宙乗りだそうですが、高いところは大丈夫ですか?

米吉 何とかと煙は高いところに上りたがるっていうから、大丈夫なんじゃないですか(笑)。 7月の歌舞伎座で空を飛ぶというのは、僕の中では大きなことなんです。小さい頃、(市川)猿翁のおじさまが、毎年7月の歌舞伎座で空を飛んでいるのを拝見してました。僕の初舞台のときもおじさまが「狐忠信」をやっていらして、みるたんびに「おじさん、また空をとんでらぁ!」って思ったのが思い出されます。それから22年たって、まさか同じ劇場で宙乗りができるなんて、思いもよらないことですよ。心して勤めたいし、できれば楽しんでやりたいです。宙乗りは、お芝居をショーアップして、さらに魅力的に見せるためのアイテムで、アイスクリームのトッピングみたいなもの。お芝居が幕になるときの宙乗りでもありますし、お客さまに「あー、おもしろかった」と思ってお帰りいただけるような宙乗りができたらと思います。

また、7月は一部では(市川)猿之助のお兄さんが『小栗判官』で宙乗りをなさるので、一部と三部で宙乗りになります。1300回以上宙乗りをなさっている猿之助のお兄さんの足元にも及ばない、僕の24回の宙乗りですけれど、飛んでいくナウシカというのは原作でも印象的な場面です。それこそ猿翁のおじさまが「宙づりになっちゃいけない」ってよくおっしゃっていましたけれど、ナウシカは「鳥の人」という枕詞がつく人なので、軽やかに颯爽と飛びたいと思います!!

中村米吉を撮り下ろした写真

↑八月歌舞伎座の納涼歌舞伎でも活躍の米吉さん。第二部『安政奇聞佃夜嵐』で松本幸四郎さん、中村勘九郎さんと共演。こちらも見逃せませんっ。

■ナウシカへのスイーツの手土産は、お菓子のパーティパックとかが喜ばれる!?

小僧 それにしても以前、「僕はお稽古が嫌いで、怠け者だから」みたいなことをおっしゃっていましたけれど、最近は、次々大きなお役をやるようになって、怠けてる場合じゃなくなってきましたね。

米吉 大きなお役をやっているから怠けてないかと言ったら、それはまた話が別です。大きなお役をやるにしては、怠けている(笑)。 いや、これ言い方が悪いですね。別に本当に怠けてるわけではないんですよ。自分なりには精一杯やっているんだけれど、人から見たら、怠けてる程度だろうということです。まだまだ全然努力が足りないということですね。

小僧 そうなんですね!? 本当に怠けてるのかと思ってました(笑)。

部長 小僧ったら、本当に失礼だわ。

小僧 では、失礼ついでに、スイーツ好きな米吉さんに質問です(笑)。ナウシカとしてクシャナにスイーツの手土産を持っていくとしたら、何を持っていきますか?

米吉 またバイラはキテレツな質問を考えて……。ナウシカが持って行くとしたら、それはチコの実ですよ、チコの実。

小僧 物語に登場する架空の食べ物ですね。酸っぱそうですけど。

米吉 たしかに、あれ甘いのかな(笑)でも、あの世界に甘いもんなんてほとんどないでしょ? アスベルにあげたみたいに、「うちの近所で取れた甘いものですー」って、クシャナにもチコの実を持っていくしかないですよ。そもそもクシャナは甘いものとか食べなさそうじゃないですか。「インスタで話題の限定スイーツ、行列に並んで買ってきた」とか言っても全然喜びそうにない。その点、チコの実は栄養価が高くて、癖になる味だから、そっちのほうが喜びますよ。そもそも、クシャナは毒殺とかを警戒して絶対に人にもらったものを口にしそうにないけど(笑)

ナウシカ役を勤める歌舞伎俳優の中村米吉の和装写真

↑アンストッパブルなおしゃべりに、ひときわ丁寧な言葉使い。さらにそこに毒が……じゃなくて、ウイットが加わり、絶品トークが完成。米吉さんの頭の回転の早さには部長も感心しきり。

部長 それでは米吉さんがナウシカに手土産を持っていくとしたら?
米吉
 ナウシカって、母性本能みたいなものがすごく強いと思うんですね。身を挺して虫を守ったり、キツネリスに対してもすごくやさしかったりして、人を守りたい、助けたいという母性愛が強めなところがあります。クシャナもナウシカのそういうところに触れて、感化されていくんだと思います。だからナウシカに何か手土産を持って行っても「みんなで食べて」って人にあげちゃいそうなんですよね。ということで、持っていくとしたら、みんなで分けられるお菓子のパーティパックとかですかね? あとほら、コンビニで売ってる小さいシュークリームが何個も入ってるやつとか……って何の話してるんだか!! (笑)

小僧 さすが米吉さん、ナイスな回答ありがとうございます!!

部長 では、最後にこれから舞台を観る読者へメッセージをお願いいたします!!

米吉 取材会で菊之助のお兄さんもおっしゃっていたように、初演のときは、ナウシカはどこか遠い世界の物語でしたけれど、その後、コロナのような病気が流行ってマスクで生活することが当たり前になったり、ロシアとウクライナの戦争が激化したり、SDGsが大変盛り上がりを見せていたり、ナウシカの世界をとても身近に感じるようになりました。そういう意味で、今こそ、さらに輝ける作品なのかなと思います。 また今回は、まだまだ未熟な僕が等身大のナウシカをやるというところに、自分がナウシカをやる意味があるのかなと感じています。菊之助のお兄さんとともに『風の谷のナウシカ』の世界観をつくりあげていきたいと思っていますので、みなさんもぜひ劇場に足を運んでください!!

部長 メーヴェに乗って空飛ぶ米吉さん、見逃せないわね!!

小僧 はいっ、部長! 七月の夜は、歌舞伎座で熱く盛り上がりましょう~!!

歌舞伎俳優の中村米吉の和装撮り下ろし写真

↑米吉さんはお姿も麗しいけれど、声がまた素晴らしい☆彡  よく通るだけじゃなくて、いろんな表情があって、歌ってるみたいでいつまでも聴いていたくなります。ナウシカは、いったいどんな声になるのか楽しみでっす!!

7月歌舞伎座に #ナウシカ 役で出演!! #中村米吉 のほぼ独り語りスペシャル♡【歌舞伎沼への誘い♯40】_9

■「七月大歌舞伎」

劇場:歌舞伎座

日程:2022年7月4日(月)~29日(金)

【休演】11日(月)、20日(水)


第三部 午後6時30分~

『風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―』

原作:宮崎駿(徳間書店)

脚本:丹羽圭子、戸部和久 

演出:G2  

演出:尾上菊之助 

演出・振付:尾上菊之丞

協力:スタジオジブリ


出演

クシャナ:尾上菊之助

ナウシカ:中村米吉

アスベル / 口上:尾上右近

ケチャ:中村莟玉

幼き王蟲の精:尾上丑之助

幼きナウシカ:寺嶋知世

ラステル:上村吉太朗

クロトワ:中村吉之丞

ミト:市村橘太郎

トルメキアの王妃:上村吉弥

ジル:河原崎権十郎

城ババ:市村萬次郎

チャルカ:中村錦之助

ユパ:坂東彌十郎

マニ族僧正:中村又五郎

◆公演詳細

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/766

◆公演チケット情報

https://www.kabuki-bito.jp/ticket.html

写真/露木聡子   取材・構成/バイラ歌舞伎部  

まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 

ばったり小僧……歌舞伎歴2年。やる気はあるが知識は乏しい新入部員。若いイケメン俳優だけでなく、オーバー40歳の熟年俳優も大好き。

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