“いつか欲しい”ではなく、“今、着たい”気持ちで選ぶ、新しいベーシック。定番と呼ばれるアイテムを、nowとnextの二つの視点でセレクトし、加藤かすみさんがパーソナルな目線で語る連載。今月のテーマは「シャツ」。
「今シーズン、真っ先に目に留まったのはブルーシャツ」というかすみさん。おなじみのアイテムは、選ぶ視点や新鮮に楽しむ術が気になるところ。新しい気分でアップデートする一枚にさらなる鮮度と深みを。
now.
brand:STUDIO NICHOLSON
メンズウェアやテーラリングに影響を受けながら、現代的。どこかソフトでリラックス感もある英国発のブランド、スタジオ ニコルソンから。オーバーサイズのボタンダウンシャツは今の気分を形にしたような逸品。ボタンを二つ外した胸元とチェーンネックレスが女らしさを繊細に演出してくれます。
「ブルーシャツとジャケットとデニム。春夏の展示会をチェックし始めた瞬間から、今季はこれだなと。シャツは襟を抜くというよりもゆったりとしたサイズ感を生かしつつ、前を少しあけ、デニムにイン。ベルトのゴールドも女らしさにつながって」。シャツ¥49500(スタジオ ニコルソン)・ジャケット¥286000(エンネオット)・デニムパンツ¥49500(アレッサンドロ ヴァシーニ)/ミューズ ドゥ ドゥーズィエム クラス 六本木店 ネックレス¥26400/マリア ブラック 表参道店(マリア ブラック) ベルト¥15400/アルアバイル
next.
brand:ZARA
次にマークしてほしいベーシックは新鮮なバランスが手に入るクロップトナイロンシャツ。試すきっかけになる、ザラで見つけた一枚は肌が少し見えるくらいの丈感。ややしぼられた裾のラインや素材感、コスパのよさが実は大人のメリットに。気軽でトレンド上手なブランドで探すという考え方。
「Aラインのショート丈は肌見せしたほうがバランスがきれいですが、あまり露出したくない大人にはドローストリングタイプを。開放感のあるシャツにオレンジのタフタサテンスカートとの南仏っぽいムードが今の気分」。シャツ¥4990/ザラ スカート¥71500/ミューズ ドゥ ドゥーズィエム クラス 六本木店(マディソンブルー) ピアス¥86900/エスケーパーズオンライン(ソフィー ブハイ) バッグ¥69300/ギャルリー・ヴィー 丸の内店(マリアラローザ) 靴¥40700/トゥモローランド(ファビオ ルスコーニ)
about shirt:
この春夏シーズンも“Y2K”というトレンドの大きな潮流が引き続きありますよね。その流れの中で30代のスタイルの軸になるのが、シャツ。気持ちはトラッドだけれど、かっちり着るのは今の気分にもライフスタイルにもマッチしないので、体に合うサイジングや丈感、意識するムードを見定めて。性別も世代も問わないシャツは、その人のセンスや備えているものをストレートに伝えてくれる。いつの時代もシャツの着こなしが素敵なファッションアイコンに心惹かれるのは、やっぱりその価値観も含めてなのだと。
新しいものを取り入れたいとき、たとえばハイブランドのバッグのように目に見えて印象が変わるものの恩恵に飛びつきがちですが、すぐ近くのシャツを替えてみるというのもナイスだと思うんです。ジャケットにはいつまでも白シャツ、ではなく、ブルーにしてみたり、クロップト丈にするだけで着こなしに大きな変化があるはず。いつもとちょっと違うことが刺激になって、次の自分をつくっていく。私自身、好きな服なのに日常的にシャツを楽しめていないので、今年はもっと手に取ってみようと考えています。
my BASIC.
brand:SACAI
主張のあるシャツも個人的に好き。スタンダードにひねりを加えた世界観が魅力のサカイで出会ったのは、極端なボリュームスリーブのビッグシャツ。ハリのある素材を構築的に仕立てたパワーのある一枚を、シンプルに引き算しながら楽しみたい。
「メインになるビッグシャツに細身パンツやデニム、ショートパンツを重ねてアレンジするのが私流。振り切ったデザインは特殊なようで、普遍的。実際長く楽しめるのもいいんです。気持ちが上がるようなアンリアルでいて絵になるボリュームが、いつでも着こなしの洒落た道しるべに」。シャツ¥159500・パンツ¥132000/サカイ ピアス¥77000/トーカティブ 表参道(トーカティブ) バッグ¥184800/エリオポール代官山(ザンケッティ)
スタイリスト
加藤かすみ
『BAILA』をはじめ、数々のファッション誌や広告、コラボ商品開発など多方面で活躍するスタイリスト。働く女性にふさわしいトレンドを見極め、シンプルに落とし込むスタイリングに定評がある。モデルや俳優からの信頼も厚い。
撮影/金谷章平 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/加藤かすみ モデル/emma 構成・原文/陶山真知子 ※BAILA2023年5月号掲載