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作家・金原ひとみさんの文章とともに贈る、30代の自分を“確固たる”ものにするジュエリー

作家・金原ひとみさんの文章とともに贈る、30代の自分を“確固たる”ものにするジュエリー

なにげない日常のシーンでも、スペシャルな輝きを放つジュエリーと時計。その圧倒的な品格が、働く私たちの毎日をポジティブに照らしてくれる。作家・金原ひとみさんが綴る文章と、「シャネル」の気品あふれる逸品たちが、30代の確固たる自分を奮い立たせてくれるはず。

ディサイデッド ――作家 金原ひとみ

自分は、こんなに野菜が好きだったんだ。離婚して気づいたことの一つだった。
十年以上結婚していたのだから、味覚に変化があったのかもしれないけれど、
いつも元夫の好みをうっすら考慮しながら献立を考えていたのだろう。
元夫は野菜嫌いで、野菜だけのおかずは一口も食べない人だった。
家具や食器、服にもその変化は現れた。自分の好きなものを買っていると思っていたけれど、
そこにも少なからずバイアスがかかっていたようで、私は離婚後あらゆるものを処分した。
好きって、自分を削ぎ落としたり、削ぎ落とされたり、混ざり合わせたり、
混ざり合わせられたりすることなんだな。十年ぶりくらいに作ったラタトゥイユを
たっぷりお皿によそって食べながら、私はそんなことを思った。

初めて会った友人宅のホームパーティ、気づくと毎日送り合っていたLINE、
終電まで飲んだ二軒目、今度あそこ行こう、これしよう、と増えていく口約束。
このままいったらこの人と付き合うことになるんだろうなとどこか他人事のように思いながら、
胸の奥をジリジリ焼く切迫感があった。
これ以上好きになったら、私は進んで彼と混ざってしまう。

その前にと来店予約を入れたのは、ジュエリーショップだった。
もう十年くらい前に、「あ」と思ったまま、ずっと保留にしていたスクエアダイヤの豪奢なリングだった。
えいっと思い切れば買えたのに買わなかったのは、
元夫と見据えていた子供を持つ未来、買うかもしれないマンション、
値段を聞いたら引いたであろう元夫の価値観、
婚姻にまつわるそういう様々な突起に足を取られたからだ。

重みのあるリングを十年越しに指に嵌めると、足りていなかったピースが揃ったように、
腑に落ちた。好きな人に狂っていないまっさらな自分が選んだ輝きは、
北斗七星のようにいつも変わらずそこにある指針となって、
これからどんな人を好きになった私にも行くべき先を照らしてくれるだろうと思うと、
全身が安堵に包まれた。満足そうな私に満足そうな店員が微笑みかけ、
私は自分を照らす光を手に入れた。          

作家

金原ひとみ


2003年『蛇にピアス』ですばる文学賞。翌年、同作で最年少で芥川賞を受賞。その後も数々の賞を受賞し、若者の感覚や社会問題など時代を映し出す作品を繊細な視点で描く。

CHANEL

CHANEL

メゾンのスピリットを表すアイコニックな時計とジュエリーが、自分らしさの指針となってくれる。「プルミエール」コレクションの新作時計は、ダブルのチェーンストラップがいっそう華やか。それぞれに気品と個性あふれるジュエリーは、その日の気分で重ねて。時計「プルミエール アイコニック チェーン ダブル ロウ」(SS〈ゴールドプレート〉×クォーツ)¥1210000・ネックレス「ココ クラッシュ」(WG×DIA)¥1061500・ブレスレット「コレクション N°5」(YG×DIA)¥577500・リング(上)「カメリア コレクション」(YG×DIA)¥1094500・(下)「ココ クラッシュ」(YG)¥682000/シャネル カスタマー ケア センター(シャネル)

撮影/渡辺謙太郎 スタイリスト/加藤かすみ 取材・原文/東原妙子 ※YG=イエローゴールド、WG=ホワイトゴールド、DIA=ダイヤモンド、SS=ステンレススチールの略です ※BAILA2025年12月号掲載

BAILA編集部

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30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。

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