7/13~9/29の間、Bunkamuraザ・ミュージアムでアルフォンス・ミュシャ本人の名作はもちろん、後世の国内外でミュシャに影響されたアーティスト作品約250点が展示されています 。ミュシャのキラキラ世界に触れてみてはいかがでしょうか。
ミュシャのキラキラ世界に、 作家さんたちもときめいちゃう♥のはなぜ?
1.アルフォンス・ミュシャ『ヒヤシンス姫』 1911年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵/©Mucha Trust 2019
19世紀末から20世紀初頭にパリで活躍し、アール・ヌーヴォーの旗手として名を成したアルフォンス・ ミュシャ。 この記事の下の作品は、すべてミュシャにインスパイアされた後世のアーティストによるものだけど、絵の雰囲気や、優美で繊細な線の美しさが本当によく似ているね。
「ミュシャは没後、いったん忘れ去られましたが、イギリスで大回顧展が開かれた1963年以降、ブームが再燃。サブカルチャーのグラフィックアーティストたちに多大なる影響を与えました。サイケデリックロックのLPレコードジャケットやポスターにミュシャのモチーフや、曲線的なデザインが描かれ、それがアメリカ西海岸で発生したヒッピー文化と共鳴して、世界に広がっていったのです」
と、教えてくれたのはミュシャ財団のキュレーター・佐藤智子さん。下にある3のスタンレー・マウスのポスターなんて、ミュシャのパクリかと思うほどそっくり。「これは1896年にミュシャが描いた『JOB』というポスターと構図が一緒で、色を変えています。マウスは『ミュシャ作品の精密な表現は、今なお私を驚愕させる』と語り、彼をとてもリスペクトしているのですよ」
2.山岸凉子 『真夏の夜の夢』「アラベスク」 (『花とゆめ』1975年4月9号 付録ポスター用 イラスト) 1975年 カラーインク・紙/©山岸凉子
実はこれに先駆け日本でも、明治時代の無名のデザイナーが、文芸誌の表紙に『JOB』そっくりの絵を描いており、当時の日本の文芸誌を並べると「どことなくミュシャ風」な表紙のオンパレードだとか。パリで学んだ洋画家たちが日本にミュシャを伝え、与謝野晶子の『みだれ髪』の表紙をデザインした藤島武二や一條成美など、多くの画家が影響を受けたらしい。
「当時は個人的な心理の動きや感情を率直に綴る文学が生まれたころ。そうした新しい文学のための 文芸雑誌の表紙を飾る絵として、ミュシャのテイストがフィットしたのですね」
「人を幸せにする美」が体現されててキュン☆とするんです
3.スタンレー・マウス&オールトン・ケリー 『ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド コンサート (1966年10月7〜8日 アヴァロン・ボールルーム)』 1966年ごろ オフセット・リトグラフ/Artwork by Stanley Mouse and Alton Kelly.©1966,1984,1994. Rhino Entertainment Company. Used with permission. All rights reserved. www.familydog.com
20 世紀後半に話を戻すと、’60 年代後半から’70 年代初めにかけて、日本でも再びミュシャの作品が紹 介されるようになり、洋書店にミュシャの画集やポスターがたくさん並んだんだって。さらに彼の影響が見受けられるアメリカン・コミ ックスも次々に輸入され、それらを見てミュシャの世界観や線の美しさにときめく若者が続出。その なかには山岸凉子さん、松苗あけみさん、花郁悠紀子さん、天野喜孝さん、出渕裕さんなどそうそうたる方々が。しかも皆さん、隠すことなく熱いミュシャ愛を叫んでいらっしゃるのだからすごい。
4.天野喜孝 『ファイナルファンタジーXIV 嵐神と冒険者』 2010年 アクリル・紙/FINAL FANTASY XIV/©SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved./ IMAGE ILLUSTRATION:©YOSHITAKA AMANO
時空を超え、国を超え、ミュシャの何がこんなにアーティストたちをときめかせるのかな?
「皆さんが声をそろえておっしゃっていたのは、やはり美しさ。美しいものを描こうとすると自然とミュシャ風になってしまうのだそうです。実はミュシャはアートをコミュニケーション手段と考えていて、人を喜ばせ、幸福にする表現を理論面から研究しつくして、あのようなパステル調の色使いや調和的な構図を生み出しました。そういった人を幸せにする哲学の部分に、共鳴する方が多いのでしょう」
ハッピーになれる美を追求する姿勢がみんな一緒なんだね。
このアートはここで見よう!
『みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術』
アルフォンス・ミュシャが後世に与えた影響をたどる。
本人の名作はもちろん、後世の国内外のアーティスト作品まで約250点を展示。
7/13~9/29 Bunkamuraザ・ミュージアム 東京 都渋谷区道玄坂2の24の1
10時~18時(金・ 土~21時) 休館日/7/16、7/30、9/10 入館 料/¥1600
問☎03(5777)8600 www.ntv.co.jp/ mucha2019/