10代の頃から芸能界の第一線を駆け抜けてきた上戸彩さん。BAILA8月号の表紙を飾ってくれた上戸さんが、バイラ読者のお仕事についてのお悩みに答えてくれました。
Q 大きくなっていく“責任”との向き合い方とは?
30代に入ると役職が上がることもあれば、任される仕事や責任もどんどん大きくなっていきます。やりがいを感じることではありますが、たまにそれが自分の負担になってしまうことも。責任に押しつぶされそうになってしまう瞬間があります……。(32歳・アパレル)
A 私自身、10代の頃から今もずっと自分が背負う責任の大きさと闘い続けている気がします。その闘い方はただひとつ「やるしかない」。逃げられるものなら逃げたかったけど、役者は代わりがいないお仕事だからこそ、途中でほうり投げたり逃げるわけにはいかない。昔はそれがイヤでイヤで仕方がなかったのですが……(笑)。仕事を楽しめるようになってからは「代わりがない」ことが仕事のやりがいにつながるようになりました。
責任のある仕事を任されるのは期待されているということ。「あなたならできる」と信じてもらっているということ。それをただの“負担”に感じてしまうのはもったいないですよね。だからこそ、プレッシャーに負けそうになったときは自分にこう尋ねてほしい。「自分はこの責任ある立場に就きたかったんじゃないの?」「20代、仕事を必死に頑張ったのはこのためじゃないの?」って。ずっと欲しかったものを今の自分は手に入れている、その実感がわけばきっと、見える景色も変わってくるんじゃないかな。
Q 大事なプレゼンでいつも緊張してしまう!
もともと人前に立つのが大の苦手。大事なプレゼンもガチガチに緊張してしまい、そのせいで失敗してしまうことも。どうしたら、大舞台で緊張しなくなりますか?(30歳・広告)
A 今も昔もずっと大事な場面の撮影では手が震えるし、長ゼリフの前は心臓の鼓動がうるさく感じるほど心がこわばってしまう。私も“ 緊張しい”なのでその気持ちは痛いほどわかります。失敗するのが怖いから私は「もう大丈夫だ」と思えるほど練習を重ねる、それは緊張しいの私に小さな自信も与えてくれます。できる限りの準備をしておけば、たとえ失敗してしまったとしても「これが今の私の最大限なんだ」と納得することもできますしね。
そんな準備はもちろんですが、カッコつけないこともまた大事なこと。子どもの受験を目前に控えたママ友からよくこんなことを聞かれるんです。「面接で緊張して失敗してしまいそうで怖い。彩ちゃんは仕事で緊張したときどうしている?」その質問の答えも「カッコつけないこと」。そういうときはまず「緊張しています」と先に言ってしまう。自分の内側にある気持ちを吐き出すと、それだけで、少し気持ちが楽になるんですよね。
完璧でいたい、よく見られたい、そう思うから緊張してしまうわけで。だったら、先に自分から情けない姿や素顔を見せてしまえばいいんです。実際、撮影現場で私は緊張を隠したりしません。緊張で手汗グッショリになった情けない姿もさらけ出していますから(笑)。
Q “頼り下手”な自分にウンザリ
「申し訳ない」「迷惑をかけてしまうのではないか」そんな気持ちが強く、周りに頼ったり甘えることができません。結果、仕事を抱えすぎてしまいがち。弱音を吐くのも苦手、周りに相談するのも苦手、そんな自分にたまに疲れてしまいます。(35歳・マスコミ)
A 悩んでいるときはすぐに相談するし、困っているときは「助けてほしい」と素直に伝えます。どちらかといえば、私は“頼り上手”なのかもしれません。「周りの人の力を借りるのは決して悪いことではない」そう思えるのはきっと、誰かの力を借りないとここまで歩いてこれなかったから。たとえば「これをお願いできますか?」のひと言を臆せず口にすることで、その手助けの分、ほんの数分だけでも眠ることができる……。その“数分”や“数十分”に私は何度も救われてきましたから。
また、自分自身もよく思うのですが、頼られるのって、嬉しくないですか?まったく忙しそうじゃない人からお願いされたら「あれ、仕事を押しつけられている?」と感じるかもしれないけど、本当に困っていることや相手の力を借りたいことをちゃんと伝えれば「頼りになる相手として求めてくれて、認めてくれてありがとう」という気持ちになる。
自分は「申し訳ない」と思っていても意外と相手は「嬉しい」と感じてくれていたりするんですよね。だからこそ、臆病になってしまうのはもったいない。私なんて、年配の方や、普通は緊張してしまうような偉い方にも自分からどんどん声をかけてしまいますから(笑)。そういう方ほど器が大きく優しく、頼られることを喜んでくれる方が多いんですよ。
Q 仕事の失敗を引きずってしまいます
上司から注意されたり、仕事でミスをしてしまったり、小さなこともクヨクヨと引きずってしまいます。うまく気持ちを切り替える方法が知りたいです。(32歳・IT関連)
A 反省するのはとても大切なことだけど……それが前に進むのを阻むようなら考えもの。どんなに考えたところで、時間は巻き戻らない。失敗をなかったことにできるわけでもない。なんの解決にもならないのだから。そういうときは、自分に考える隙を与えない。
「ヨガに行こう」「映画が始まっちゃう」「友達と会わなきゃ」私だったら、とにかくスケジュールを詰め込みますね。そんなふうに、ほかの何かに夢中になっているうちに心のクヨクヨやモヤモヤは、いずれ時が解決してくれますから。
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上戸 彩
うえと あや●1985年9月14日生まれ。「第7回全日本国民的美少女コンテスト」をきっかけにこの世界へ。ドラマ「絶対零度」や「半沢直樹」シリーズ、映画『あずみ』や『テルマエ・ロマエ』など代表作を多数持つ人気女優。7月16日から開催される『特別展アリス』にて展覧会用の音声ガイドに初挑戦。私生活では2児の母でもある。
撮影/中村和孝 ヘア&メイク/中谷圭子〈AVGVST〉 スタイリスト/青木千加子 取材・原文/石井美輪 ※BAILA2022年8月号掲載