どんな役も魅力的に演じ、圧巻の芝居で見る人の心を動かす実力派俳優・安藤サクラが語る「私が撮影現場に立ち続ける理由」。
“やっぱり、演じるのが好き”
自分を生きて、役を生きて人生の彩りが増していく
「原田組に呼んでいただけるとは思っていなかったので、オファーが届いたときは驚きましたし、出演を決めたときは武者震いしました。それはもう、ガクガク震えるほど」
安藤サクラがそう語るのが映画『BAD LANDS バッド・ランズ』だ。硬派な作品を数多く手がけてきた原田眞人監督のもと、社会の底辺でたくましく生きるネリを好演している。勇気を出して飛び込んだ原田組の感想を尋ねると、彼女の口から何度も飛び出したのが「楽しかった」という言葉。頭の中で登場人物を動かしながら8時間かけて読んだ台本も、芝居の準備に追われた日々も、緊張して足が震えた初日の撮影現場も、すべて「楽しかった」と笑う。
「やっぱり、私は現場が好きで、演じることが好きなんです。どんなところが好きなのか具体的に教えてくれと言われたら、その答えは山ほどあるのですが……。ひとつは、どんなに自分と価値観が違う人でも、どんなに自分がまったく知らない世界でも、自分の肉体をそこに持っていき、その人の言葉を話し、その人のことを考える。“演じる”って“他者を理解する”ってことに近いと思うんです。その作業は、毎度、自分の人生に大きな学びを届けてくれるというか。ひとつの作品に携わると、必ず自分の価値観も変化するんです」
自分として生きている時間、役として生きている時間、二つが合わさったときに新しいものが生まれる。そこでの経験が人生や視野を広げてくれる。人生の彩りをどんどん増やしてくれる、と安藤さんは続ける。
「私にとって“新しいことを感じてワクワクする”というのはとても大事なことで。それは私の“生きる力”にもつながっています」
今作も「怖かったけど、やってよかった」と振り返る。いくつもの作品に出会い、たくさんの人(役)のことを考えながら歩いてきた。彼女の目に安藤サクラはどんな人に映っているのか、最後に質問してみた。
「“安藤サクラ”は、出会ったことのない方々にも知ってもらえている存在であり、いろんな人のイメージでつくられている存在だと思うので、私にはもうわかりません(笑)。ただ、“柄本”サクラさんはわりといい人だと思います(笑)。足りないものばかりだし、自信もないけど、周りにいる人たちが100点だから。自分のことはよくわからないけど“ありがとう、私でよかったな”って!」
© 2023「BAD LANDS」製作委員会
映画『BAD LANDS バッド・ランズ』
出演/安藤サクラ、山田涼介、生瀬勝久、宇崎竜童ほか
監督・脚本・プロデュース/原田眞人
9月29日(金)より全国ロードショー
原田眞人監督が小説『勁草』を映画化。大阪で特殊詐欺に加担する橋岡煉梨(安藤)と弟の矢代穣(山田涼介)。ある日、社会の日陰で生きる二人が手にしたチャンスとピンチ。二人はこの危険な“BAD LANDS”から抜け出すことができるのか……
安藤サクラ
あんどう さくら●1986年2月18日生まれ。2007年、俳優デビュー。『愛のむきだし』『万引き家族』、連続テレビ小説「まんぷく」など、数々の話題作に出演。今年はドラマ「ブラッシュアップライフ」そして映画『怪物』が大きな話題に。その演技力に注目が集まる人気俳優。
カーディガン¥173800・タンクトップ¥51700・パンツ¥149600 /ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー) 二連のリング¥95700・シグネチャーリング¥105600/エドストローム オフィス(シャルロット シェネ)
撮影/峠 雄三 ヘア&メイク/星野加奈子 スタイリスト/吉田 恵 取材・原文/石井美輪 構成/渡辺敦子 ※BAILA2023年10月号掲載