漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、webアクションで公開され13万PVを記録しSNSで大反響を呼んだ「天国までひとっとび」他3編が収録された『天国 ゴトウユキコ短編集』をレビューします。
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中川 薫
漫画・音楽・旅好きのライター。韓国の伝統音楽と’80sを融合させたバンドLEENALCHIが最近のお気に入り。
10代のあの頃に戻りたい? それとも戻りたくない?
©ゴトウユキコ/双葉社
10代の頃の甘酸っぱい経験を思い出すときがある。いい思い出だったな、と思うときもあれば、あんな経験はもうしたくない、と思うことも。あなたは、どちらが多いだろうか。今回取り上げるのは、思春期の繊細なジレンマをすくい上げ、“いつかのあの瞬間”を呼び覚まし、そのすべてを抱きしめて、新しい感情をもたらしてくれるような短編集だ。
亡くなった女子中学生と幼なじみの男子の揺れ動く心を切なくもまぶしく描いた「天国までひとっとび」。思春期の恋の迷走ぶりを描いた「2月14日の思い出」。主要人物二人の思いと夏の鎌倉が爽やかに共鳴し合う「家庭教師」。田舎の小学校に通う同級生3人が繰り広げる“スタンド・バイ・ミー”物語の「迷子犬とわたしたち」。4編すべてが青春ど真ん中の思春期ストーリーかと思いきや、10代ならではの青く、残酷な感情にもあふれている。しかし、そんな痛さすら、まぶしい。この短編集が『天国』と名付けられているのは、そんな思いもあるのかもしれない。
『天国 ゴトウユキコ短編集』
ゴトウユキコ著
双葉社 全1巻 858円
13万PVの話題作「天国までひとっとび」、「迷子犬とわたしたち」(新作)、「家庭教師」、「2月14日の思い出」という、読者の心の奥底を開け放つような4編を収録。
これも気になる
『キルアオ』
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『黒子のバスケ』著者の新作は学園アサシンやり直しコメディ
事故で10代前半の姿になった伝説級の殺し屋・大狼十三(39)は、中学校に潜入任務を開始する。小学校までしか通えなかった十三は戸惑いつつも学びの楽しさを見いだしていく。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2023年11月号掲載