書評家・ライターの江南亜美子が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、山内マリコの『マリリン・トールド・ミー』と、千早茜の『グリフィスの傷』をレビュー!
江南亜美子
文学の力を信じている書評家・大学教員。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』など。
「時々、話し相手になって」現代の東京と60年前のNY。時空を超えた女同士の連帯
マリリン・モンローの生まれた時代と場所がもしも違っていたら? プラチナブロンドに妖艶なメイク、セクシーな肉体美で一躍有名になった映画女優は、撮影の合間に小説や哲学書に読みふける意外な一面を持っていた。
そんなマリリンから、現代の東京郊外で大学生活を送る杏奈は電話を受ける。この対話は現実、それとも夢?やがて女性の媚びについて、ルッキズムについて、杏奈はマリリン・モンローの研究とその時代背景の考察を続ける。自身も就職活動などを通して社会と相対しながら。「マリリンは完全にフェミニストだ」。
昔のスターに勇気づけられるのが面白い、現代を生きる女性のための青春小説。
『マリリン・トールド・ミー』
山内マリコ著
河出書房新社 1870円
コロナ禍で独りぼっちの女子大学生に、ある夜電話が。「ハロー、もしもし?」受話器の向こうは、往年のハリウッドスター、マリリン・モンロー。世間が求める姿とのギャップを愚痴られて……。ユーモラスな長編小説。
これも気になる!
『グリフィスの傷』
千早茜著
集英社 1760円
「きずあとは私を冷静にさせる」存在価値と傷あとをめぐって
体に刻まれた歴史の傷あととしての「傷」を多様に描く、10編の作品集。低温熱傷と恋、謝罪メールの痛み、切断された指……。加害と被害の両面から人間を捉えるまなざしがさえる物語だ。
イラスト/chii yasui ※BAILA2024年8・9月合併号掲載