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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都美術館「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第37回は東京都美術館の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」を訪問しました。

今月の展覧会は…「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」@東京都美術館

“作品と人物像に新たな見方が。ゴッホはまだまだ面白い!”

市川紗椰さん 東京都美術館でゴッホ展 家族がつないだ画家の夢をご案内

市川紗椰が語る「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」

フィンセント・ファン・ゴッホ、世界で最もポピュラーな画家の一人かもしれません。作品にも人物像にも触れる機会が多い! 私も、展覧会の知らせを見て「今年もゴッホやってるなあ」なんて、まるで花火や紅葉狩りの年中行事みたいに思って(笑)、ついつい見逃してしまうことも。そう、有名すぎて「知った気持ち&見たつもり」になりがちなんです。今回訪れたゴッホ展は、そんな“ゴッホあるある”を気持ちよく裏切ってくれた意欲的な展覧会。「まだこんなに知らなかったことがあるんだ」「あらためて見るとこんなにすごい!」と、新鮮な驚きがありました。

ひとつは一人の女性の存在。ヨー(ヨハンナ)・ファン・ゴッホ=ボンゲルという女性を知っていますか? ゴッホの画業を支えた実弟のテオは有名ですが、彼女はその妻。ゴッホの死後半年で、後を追うように亡くなったテオの遺志を継ぎ、作品を管理し世に出すことに尽力したのは、未亡人となったヨーだったそうです。彼女に光が当てられることで、画家の人生の先に新たな家族の物語が続いていたことを知り、わくわくしました。

もうひとつ興味深かったのは、展示室内にイマーシブ・コーナーがあったことです。名画のイマーシブ鑑賞は近年すごく流行っていますが、ここでの特別感はなんといっても「実物の絵と見比べられること」。視界いっぱいに広がる映像への没入体験はもちろん臨場感があって面白いけれど、その前後に実物のゴッホの絵を前にして、筆跡や絵の具の盛り上がりをのぞき込めることでひと味違った息をのむほどの没入感が得られます。両方楽しめる場はなかなかないので、贅沢かつ満足度が高い。

グッズも、大充実のぬいぐるみコレクションなど新味がいっぱい。“かわいいゴッホ”にも出会えるので、見逃し厳禁です!

イマーシブ+実物の絵画という組み合わせが斬新。いちばん理解が深まる展示方法かも!

市川紗椰  イマーシブ+実物の絵画という組み合わせが斬新。いちばん理解が深まる展示方法かも!

最後の展示室には、ゴッホの作品世界を体感するイマーシブ・コーナーが。ほかの展示でも、通常は解説パネルがあるところにモニターが設置され、映像による解説が流れているのが目新しい

市川紗椰 フィンセント・ファン・ゴッホ《画家としての 自画像》1887年12月~1888年2月

フィンセント・ファン・ゴッホ《画家としての自画像》1887年12月~1888年2月

ゴッホの自画像。明るく細かな色彩の重なりに思わず吸い込まれそう!

市川紗椰 アンリ・ファンタン=ラトゥール《花》1877年

アンリ・ファンタン=ラトゥール《花》1877年

奥は後年のヨーの写真。彼女が唯一自分のために購入した絵画(右)も写っている

ポール・ゴーガン《クレオパトラの壺》  1887-1888年

ポール・ゴーガン《クレオパトラの壺》1887-1888年

同時代を生き、ゴッホの盟友でもあったゴーガンの珍しい立体作品。弟テオによるコレクションのひとつ

三代歌川豊国(歌川国貞) 《花源氏夜の俤》 1861(文久元)年

三代歌川豊国(歌川国貞)《花源氏夜の俤》 1861(文久元)年

ゴッホが収集していた膨大な浮世絵コレクションもヨーに継承された

市川紗椰 フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年11月

フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年11月

描かれた年代・土地別に作品が並ぶ。展示室の壁の色が画家の見ていた情景や心境を表しているよう

市川紗椰 フィンセント・ファン・ゴッホ 《耕された畑(「畝」)》1888年9月

フィンセント・ファン・ゴッホ 《耕された畑(「畝」)》1888年9月

市川紗椰 (手前)フィンセント・ファン・ゴッホ「傘を持 つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファ ン・ラッパルト宛ての手紙」1882年9月23日頃 (奥)フィンセント・ファン・ゴッホ「ベンチに 座る4人の人物と赤ん坊が描かれたアント ン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」 1882年9月12-17日頃

(手前)フィンセント・ファン・ゴッホ「傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」1882年9月23日頃(奥)フィンセント・ファン・ゴッホ「ベンチに座る4人の人物と赤ん坊が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙」1882年9月12-17日頃

展覧会の目玉のひとつがゴッホの直筆の手紙。細密な筆跡に才能と人格が表れている

トビラの奥で聞いてみた 市川紗椰×東京都美術館 学芸員 大橋菜都子さん

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… 東京都美術館 学芸員 大橋菜都子さん

大橋 ゴッホといえば「孤高の画家」というイメージがありますよね。生きている間は評価されなかった彼が、今もこれだけ世界的に人気があるのはどうしてなのか?  その疑問に対してひとつの道すじを紹介しているのが、この展覧会です。

市川 ゴッホの弟テオは有名ですが、その妻、ヨーのことは初めて知りました。

大橋 はい、28歳で夫のテオを亡くした彼女は、彼が所蔵していたゴッホの膨大な作品を引き継ぎ、ゴッホの手紙を編纂し、作品を適切な場所に広めてきました。絆の深かった兄弟を隣同士のお墓に移すなど、家族らしい心づかいも見せています。

市川 彼女自身はアーティストではないですが、いいものを残し伝えようという才能と情熱があったのですね。近代美術の世界で実は女性が活躍していたという事実は、今まで歴史の中で埋もれてきたように思います。ここ数年、そこに光を当てる展覧会を多く目にするようになりました。今回も、あまりにも有名なゴッホの人生に、新たな見方とキャラクターが存在するんだ!と知って嬉しいです。

大橋 今まで幾度となく開催されてきたゴッホ展ですが、切り口を変えることで新しい発見が生まれます。私自身、準備を通して新たに知ることがたくさんありました。ヨーの存在を知り、ヨーの視線であらためて作品を見ることで、これだけ多くの作品が失われずに、いい形で100年以上伝わってきたということのすごさを感じてくださる方もいて、とても面白く思います。

訪れたのは…東京都美術館

市川紗椰が東京都美術館 「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」へ行く

【展覧会DATA】

「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」
〜12/21
東京都美術館
東京都台東区上野公園8 の36
9時30分〜17時30分(金曜〜20時、入室は閉室の30分前まで)
休室日/月曜、11月4日(火)、11月25日(火)※11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開室
観覧料/一般¥2300ほか
※土・日・祝日、12/16以降は日時指定予約制
https://gogh2025-26.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

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撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2025年12月号掲載

BAILA編集部

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30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。

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