先送りしてしまうのは、もとの性格や能力のせいではなく、心理傾向や脳の特徴の影響もあるというのは本当? 幸せへの道は敵を知ることから!ということで、今回は「脳科学」の観点から専門医が先送り体質の原因&改善方法を解説。
脳科学者
増尾好則さん
東邦大学理学部生物学科教授を経て、現在、一般社団法人ブレインアナリスト協会学術顧問として幅広く活躍。You Tube「【脳と香り研究第一人者】脳科学者増尾好則が人生に思う事」を配信中。
脳科学的には不安を強く感じすぎて、行動に移せないから
先送りグセのある人には、脳にも特徴があるかもしれない⁉
「近年の研究で、先送りをしがちな人は、脳の二つの部位に特徴があるとみられることがわかってきました。ひとつは【扁桃体】。感情や記憶に関する主要な役割を果たす部位で、特に恐怖や不安といったマイナスの感情に深く関わります。もうひとつの【前帯状皮質】、その背側部は行動をモニタリングし、調整する部位です。ここで、扁桃体からの情報を受け取り、行動を決定するのを助けてくれます。たとえば、ひとつの仕事を前に扁桃体がうまくいくか不安を感じていたとします。不安なままでは行動しづらいのでその感情を抑制し、その仕事がうまく実行されるようにコントロールしてくれる、そんなイメージですね」
心配性で、行動に移すのをためらう。先送りするのはそんな脳
「【扁桃体が大きく、かつ前帯状皮質背側部の連結が弱い】と、悲観的な感情を制御できず、先送り傾向が強まる可能性があると言われているんです。扁桃体が大きい人は、物事を始める前に悪い結果を心配して、実行をためらいがち。そのとき、連結が鈍く前帯状皮質背側部がうまく働かないと、その不安を抑制できず、いつまでも行動に移せないというわけですね。ただ、まだまだこの分野は研究段階ですし、そのような脳の特徴を持つ人が100%先送り体質になるとは限りません。脳には対応力があり、長い時間をかけて適応することもできるのです」
先送り体質の改善にはマインドフルネスが有効
「実は、脳と心の休息法として、現代人に広がっているマインドフルネス瞑想には、扁桃体の神経細胞が集まるエリアを小さくする効果があるといわれています。香りの力のように、不安などのストレスを和らげる方法を取り入れるのも効果があると思います。またやるべきことから逃避したい感情に脳が支配されない程度にまで任務を細かく分けて、小さなことから始めるのもいいでしょう」
香りでストレスを軽減できる!
「先送りの原因にもなり、先送りしてしまうことでも強く感じるストレス。和らげる方法として、脳のストレス応答を弱くする=五感を刺激することが有効であることが知られています。最新の私の研究から、コーヒー豆、ごま油、ヒノキ精油、ラベンダーの香りをかぐことで、ストレス反応が軽減されると証明しています」
イラスト/ボブ a.k.a えんちゃん 取材・原文/木村真悠子 ※BAILA2022年12月号掲載