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現代短歌と野球。そこにある悲喜こもごもが、心に染みる【エディターズピック】

『野球短歌 さっきまでセ界が全滅したことを私はぜんぜん知らなかった』

あふれる阪神タイガーズへの愛が切ない。野球好きにはたまらない歌集

 7月号のBAILA COLLEGEでは現代短歌の特集を組みました。それ以来、現代短歌の本を読む機会が増えたのですが、なかでもお気に入りの一冊をご紹介します。『野球短歌 さっきまでセ界が全滅したことを私はぜんぜん知らなかった』(ナナロク社)です。大の阪神ファンである著者の池松舞さんが2022年の阪神戦を詠んだ全313首が収録されています。著者と同じく、私も野球と「阪神タイガース」というチームが子どもの頃からずっと好きです。2022年といえば流行語大賞にもなった岡田監督が「アレ」を達成する前年、矢野前監督の最終シーズン。開幕9連敗から始まり、けれど優勝争いに絡み、CSで散る、というファンにとっては狂おしいシーズンでした。

そして今は2024年、ペナントレース終盤。夢に見た「アレンパ」は遠くなりつつあります。

そうだよね 連覇なんてさ 生まれてから 一度も見たことないものね

と、自ら短歌もどきを詠んで自分を納得させる日々。(それにしても、今シーズン私が観戦に行った試合は全敗(涙)チケットを買っている9月の神宮ではなんとか勝ってほしい)

 今この歌集を改めて読むと、様々な感情が去来するのですがその最たるものは無常観です。2022年シーズンでは大活躍し、歌にも度々出てくる選手が、今年は絶不調で打たれまくっていたり、そもそも今季、一軍で一度も見ていない選手もいれば、トレードでチームを離れた選手も。ナイターの照明に照らされる彼らの輝きは刹那的で、だからこそ美しいし、心に染みる。この本にある一首、一首がそのことを思い起こさせます。

 野球好きでなくても、登場する選手たちのことを知らなくても、ここにある歌からは、現代短歌という形式でこそ表現できる悲喜こもごもがあふれていて、それはきっと心に届くはず。そして、シーズン最終盤、阪神タイガースが見たことのない奇跡を見せてくれることを願ってやみません。

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