【スタイリスト加藤かすみのupdate BASICS】オーバーシルエットな3つのトレンチコートで作る、旬スタイル

“いつか欲しい”ではなく、“今、着たい”気持ちで選ぶ、新しいベーシック。定番と呼ばれるアイテムを、nowとnextの二つの視点でセレクトし、加藤かすみさんがパーソナルな目線で語る。

今回のテーマは久しぶりに着たい気分のトレンチコート。今までと変わっているのは軽やかでゆとりのあるオーバーシルエット、さらっと無造作に羽織れる気軽さやクールさ。イメージする女性像も変化しているトレンチスタイルを深掘り。

今の気分を絶妙に落とし込んだモダンなトレンチ。素材感もカラーもライトなセオリーの一枚は着る人を選ばず、平等に洒落感を演出してくれる。ラインがきれいで、少し着くずしたとしてもかっこよさがブレないんです。着こなしはモノトーンのツイードを合わせ、かっちりでも、抜きすぎでもなく、あくまで女っぽく。

大人の好みやトラッドを知り尽くしているから、ドゥロワーのトレンチはいつも素敵で信頼できます。今季私が気になったのは、一見シンプルでいてジレとジャケットに展開できる3way。ボリュームとツヤのあるタフタスカートといういつもより盛ったモードな選択を楽しみたいときも上手に受け止めて、品よく決まるんです。

3着のトレンチに共通しているのは、さらっとイージーに楽しめる軽やかな着心地。この空気感をまとうのが気分で、今のワイドなラインの服にちょうどいいんです。いわゆる王道トレンチの場合、はっきりとした輪郭のディテールやパーツが多く、堅く見えて手に取りにくいという人も多かったのでは。今回私がピックアップしたトレンチは、薄手でしなやかなギャバジンやボタンレスが特徴だから、そんなに気負う必要はなくて、気軽に女性らしく取り入れられます。前を開けて無造作に着る気分なので、インに何を選ぶか、コーディネートの感度も大事なポイント。同時に、動いたときにどう見えるかのチェックを。羽織り方や着こなしで今のムードを上乗せします。

ごくわずかな違いが着こなしに大きく表れるのがトレンチの面白さ。それを自分の変化に重ね合わせて選んでみるとより心地よく、ぐっとくるスタイルに出会える気がします。でも実はインを包み隠してくれたり、あいまいにもしてくれるから、少し勇気がいるようなドキドキする服を着る日に選ぶことも。ちょっとした気持ちに寄り添ってくれるから、やっぱりトレンチが好き。

テーラリングを得意とし、素材やディテールでモダンに構築されたワードローブが素敵なデビューしたばかりの新ブランド、バウトから。そぎ落とされたメンズライクなトレンチをブルーシャツとデニムにキャップを添えてスノッブに着るのが、私の気分。今、最も好みなセットかもしれません。

撮影／長山一樹〈S-14〉　ヘア&メイク／笹本恭平〈ilumini.〉　スタイリスト／加藤かすみ　モデル／比留川 游　構成・原文／陶山真知子 　※BAILA2023年4月号掲載