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三宅香帆が選ぶ「先輩たちの体験談から学ぶ本」4選【働いていても読みたい本】

三宅香帆が選ぶ「先輩たちの体験談から学ぶ本」4選【働いていても読みたい本】

文芸評論家の三宅香帆が、バイラ世代におすすめの本をピックアップ! 今回のテーマは「先輩たちの体験談から学ぶ本」。さまざまな人生を歩んできた先輩たちの経験や言葉から、自分らしく生きるヒントが見つかる4冊を、三宅さんが解説します。

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三宅香帆

文芸評論家

三宅香帆


みやけ かほ●1994年生まれ。文芸評論家。ヒット作に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)など。自伝的エッセイ『それを読むたび思い出す』(青土社)が発売中。

【三宅香帆の働いていても読みたい本】先輩たちの体験談を学ぶ本

『はいつくばって』

『はいつくばって』

『はいつくばって』
ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳 新潮社 3245円

アーティストとして活躍する45歳の主人公が、迫りくる「更年期」に向き合う大長篇。中年ならではの身体的な悩み、ひと筋縄ではいかない結婚生活……。崖っぷちとも思える道を突き進んだ先には、はたして光がさすのか。

年を重ねた先の自分のために“そなえておきたさ”がある

25歳くらいの頃、「人生って長いなあ」と絶望していた。仕事もしはじめて、毎日くたくたで、こんなに大変なのに、まだ人生は4分の1くらいなのかもしれない。そう考えるとあまりの先の遠さにぐったりと疲れた。これから先が長すぎる。しんしんと肩に降り積もる人生の重みに耐えきれない日がくるのかもしれない、と思っていた。

それから7年くらいたち、30代になって数年がたった。最近はなんだか毎日があっという間で、「なんだか気づいたら40代に入ってそうだな」と、ふっと感じる。すぐに一日が終わって、ああ気がつけば年末の足音が近づいてきている。はやいなあ、とぼんやり目を細める。そんなときに気になるのは、自分が年齢を重ねた先にある光景のことだ。

ミドサーからアラフォーになったら、どんな感じになるのだろうか、自分。不安というよりは「そなえておきたい」という気持ちのほうが強い。できれば予習しておきたい。気をつけておけることがあるなら、気をつけたい。先輩方の実感をあらかじめ読みたい。

こんなことを書くと、「やっぱり女性は年齢を重ねることに恐怖がありますか」なんてしたり顔で聞いてくるやつの顔が浮かぶのだが(ごめん)、そういうことでもない気がする。恐怖とか不安とかそんな大きな感情は、普通に目の前の大きな仕事の本番にとっておきたい。年齢を重ねた先にある風景に対して感じるのは、もっと漠然とした「そなえておきたさ」である。だっていつくるかわからない地震に対して感じるのは、恐怖よりも、そなえておかなければ、という用心深さではないだろうか。自分の体や立場の変化も、荒々しい自然といかに向き合うか、と同じようなものだ。

今回紹介する本は、45歳女性が主人公の小説。アーティストとして成功をおさめて、夫と子どもがいて、ちょっとお休みをとろうとしてニューヨークにドライブ旅行を企画する。が、自宅から車でたった30分ほどのところで、そこから先へ進めなくなってしまうのだ。滞在することになったのは、モンロビアという小さな町。せっかくだからと旅費をつぎこんである行動に出たところから、彼女の旅が始まっていく。

本書の面白いところが、主人公にはまったく共感できないこと。正直、主人公はとてもパワフルだし、キャリアも築ききっているし、なんだかすごい女性だ……と最初は読みながらその強さにおののいてしまう。が、むしろ共感できないからこそ「こういうふうに七転八倒しても、まあなんだかんだ人生そういう時間が必要になるのかもな」と思えるところがとてもいい。自分とまったく違う人生を生きる主人公の物語を読むときにこそ、私たちは、「どういう人生だってありだよな」「自分もどうなるかわからないんだ」と希望をみいだすことができる気がする。

正直、そなえておきたい、と書いたものの、完璧にそなえることなんてきっと無理なんだろうなというあきらめもある。自分自身の変化をきちんとコントロールしようだなんて思うほうが傲慢なのだろう。というか、コントロールできている、なんて感じてしまうのはきっと危うい。他者も、自分も、年齢や時代とともに変化していくものだからだ。とはいえ、何も準備しないのは心もとない。だからこそ本を読んで、少し予習したいという下心をもって、先輩方の人生を知ると、なんだか人生のはてしない遠さに対抗できるような気がしてくるのだ。

これも読んでほしい!

『パーティーが終わって、中年が始まる』

『パーティーが終わって、中年が始まる』

『パーティーが終わって、中年が始まる』
pha著 幻冬舎 1540円

日本一有名なニートとして名を馳せた作者による、中年になって自分や周囲がどう変わっていったかを綴ったエッセイ。読むとなんだかこわばっていた肩の力が抜ける気がする。最近疲れが抜けないな、と感じたときに読んでほしい。

『40歳だけど大人になりたい』

40歳だけど大人になりたい

『40歳だけど大人になりたい』
王谷晶著 平凡社 1870円

国際的な文学賞を受賞したことで著名な小説家が、40歳になった自分の「生活」について吐露したエッセイ集。みんなちゃんとしているように見えるけれど、案外そう見せているだけなのかも……?と思える名著。理想と現実のギャップに悩んだときにぜひ。

『43歳頂点論』

『43歳頂点論』

『43歳頂点論』
角幡唯介著 新潮社 1034円

冒険家による中年論。仕事のピークは一体いつなのか、表現者として中年以降の時期をいかに迎えていくのか、自分がうまく自分と向き合っていくには何が必要なのか。文芸作品なども取り上げながら考えていく新書。キャリアや趣味と年齢を考える上でもおすすめ。

くま

撮影(べあら)/久々江満 ※BAILA2026年12月号掲載

BAILA編集部

BAILA編集部


30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。

【BAILA連載】三宅香帆の働いていても読みたい本

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