連載「中村アンのハッピーモード」第10回のテーマは「ニットと文庫本」。今回は「休日のニット」と「端正なニット」を、それぞれの個性に合わせて選んだ文庫本を添えてご紹介。身も心も豊かにしてくれる価値あるニットを見つけて。
休日のニット
![中村アン 休日のニット](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/b7/b7449209-63c6-4c43-8209-46eb12422239.jpg)
リラックス気分のお休みの朝。お気に入りのフーディを着て、文庫本と一緒にどこへ出かけようか
ローゲージ編みの豊かな表情に心惹かれるニット。柔らかな“もこもこ”に埋もれる喜びは、この季節の特権に違いない。両袖と前身ごろ全体を使って表現されたJWAの特大ロゴが、面積の広いニットをリズミカルに魅せるアクセントに。フードについた極太のマリンロープは、顔まわりにさりげなく愛嬌を加えてくれる。ボリュームのあるニットとは対照的に、落ち感のきれいなスカートを合わせて。ニット¥104500・スカート¥66000/三喜商事(JW アンダーソン)
![『ウマし』 伊藤比呂美 著 中公文庫](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/8d/8db00e94-34c4-41ae-823e-6fc5af521d63.jpg)
『ウマし』
伊藤比呂美 著 中公文庫
好きなものをただ好きなように食べる、その幸せ
アメリカ西海岸と熊本、東京を長らく行き来してきた詩人は、食とその時々の思い出をエネルギッシュに語る。アメリカでスモウと呼ばれるデコポン、娘と食べたパンケーキ、老舗のうな重、禁断のエナジードリンク……。生きる活力がぐっと刺激されるエッセイ集。
端正なニット
![中村アン 端正なニット](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/d5/d5c521da-0261-44bf-bac2-c37ad4b0d2c2.jpg)
凜と背すじが伸びる襟つきのニットを着たくなる日がある。ページをめくり初心に返るみたいに
ハンガーにかかっているときは少し地味だけど、袖を通せばわかる美しさ。コットン100%のハイゲージリブニットは、生地に適度なハリがあり、ボディラインとの距離が絶妙。そこに生まれるほどよい緊張感が、襟つきニットの端正なたたずまいを後押しする。かなり長く設計された袖丈、大きめの襟に対して控えめなボタンと前立て、洒落たショルダーラインの位置。細部まで研ぎ澄まされた美意識が、日常着に心地いい刺激をくれる。ニット¥33000・スカート¥44000/オーラリー
![『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』シモーヌ・ヴェイユ 著 今村純子 編訳 河出文庫](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/81/81fe98fd-e9c4-494b-9eb1-aef743b609c2.jpg)
『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』
シモーヌ・ヴェイユ 著 今村純子 編訳 河出文庫
美には呼びかける声がある―。夭折の思想家が遺したもの
第二次世界大戦前から活躍したフランスの女性思想家の、自らの工場労働の経験や戦争も踏まえて紡いだ、美や不幸についての思考の軌跡。「力の支配を重んじなければ、愛することも正義であることもできない」。普遍的で、純度の高い言葉に触れることのできる一冊。
撮影/尾身沙紀〈io〉 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/佐藤佳菜子 モデル/中村アン 選書・原文/江南亜美子 ※BAILA2021年11月号掲載