女医が教える、大人の女性のためのセルフプレジャー講座

女性も性欲を感じるのは当然！　頭では理解していても、マスターベーションをするのは少し抵抗がある。そう感じている人は多いのではないでしょうか。

近年はセルフプレジャーという言葉で認知度が高まっており、アイテムを使って楽しむ人も急増中。興味はあるけれど、どうやってするの？どんなアイテムがあるの？リスクやデメリットはないの？セルフプレジャー初心者の疑問に、産婦人科医の宋美玄先生が答えてくれました。

いわゆるマスターベーションで、自分で自分を気持ちよくする行為を指します。パートナーの有無に関わらず、性的な衝動や性欲を感じることがありますよね。そういった欲望を自分で満たすことができる、とても有意義な行為です。

思春期の発来とともに自然と行う男性に対して、女性はセルフプレジャーに関する情報に触れる機会が少ないため、未経験のまま大人になった人も少なくありません。自分の性感帯を知らないことは、セックスを楽しめなかったり、苦手意識を感じたりする原因になり得ます。

女性にはたくさんの性感帯があり、どこで感じるか、どんな刺激を好むかは人それぞれ。それを探し当てる作業をパートナーに任せるよりも、自分で見つけて伝えたほうが、よほど効率的だと思いませんか？　しかも、パートナーがいなくても自分の好きなときに性欲を満たすことができますし、快感の幅が広がり、パートナーとのセックスもよくなります。女性が自身の性欲と向き合い、自分でマネージメントすることは、人生の質の向上にもつながりますよ。

体の全体にあり、感じるパーツはもちろん、感じかたや快感の大小も十人十色です。一般的に感じる人が多いフェムゾーン、いわゆる股の部分に限って言うと、クリトリス、Gスポット、ポルチオの3パーツが挙げられます。中でも、女性の多くが快感を得られるパーツはクリトリス。膣の中に位置するGスポットやポルチオと比べて刺激を与えやすく、セルフプレジャーによってオーガズムに達しやすいといえます。

性感帯を開発するためには、とにかく触って刺激してみることがいちばん。ただし刺激を与え続けたからといって、必ず感じるようになるわけではありません。例えばGスポットは、膣の中からクリトリスの奥にある神経層を刺激することで快感を得られるのですが、神経層の位置は人によって異なり、気持ちよく感じない人もたくさんいます。

Gスポットに限らず、挿入によって大きな快感を得られる人はごく一部。また、膣の外であれ中であれ、オーガズムに達することができる人ばかりではありません。イクことだけが気持ちよさの指標ではないので、無理に開発しようとしないでくださいね。いちばん大切なことは、自分の性欲が満たされることですから！

自分の指や道具を使って性感帯に刺激を与えて、気持ちよさを高めていくことから始めましょう。オーガズムに達するためには、基本、性感帯に一定の刺激を与え続けることが効果的ですが、自分の手ではなかなか難しいもの。満足する快感を得られない場合は、セックストイとも呼ばれるセルフプレジャーアイテムを使うのもおすすめです。

形も作用も様々なセルフプレジャーアイテムは、電力で動くタイプが最もポピュラー。人の指では与えられないスピーディーな振動の刺激によって、オーガズムに達しやすくなります。

セルフプレジャーアイテムは主に、あてがうタイプと挿入するタイプの二つに分けられます。1度も使ったことがなく、どこにどう使ったらよいかわからない人には、あてがうタイプがおすすめ。振動させながら股にあてて、より気持ちよく感じる場所を刺激し続けてみてください。

リップスティックほどの小ぶりのものから、パソコンのマウスほどの大ぶりなものまでがありますが、初めて買うなら後者を。広範囲を刺激できて、性感帯を探りやすいのがその理由です。私も愛用している「iroha」のゆきだるまは、大きさがほどよく、人肌のようなふっくらとした質感が気持ちいい。ひと目ではセルフプレジャーアイテムとわからないため、同居する家族やパートナーにバレたくないという人にもピッタリです。

普段から挿入によって感じやすいならば、もちろん挿入タイプから取り入れてOK。挿入タイプは痛みを感じやすいので、失敗しないためには、シンプルなデザイン＆小さめのサイズから試すのが賢明です。クリトリスとGスポットの両方を刺激できるバイブレーターなど、複数の機能を備えたアイテムもありますが、私は使いこなすのに時間がかかりました。

フラットなマインドの状態から始めるよりも、セクシャルな気分が高まった状態でするほうが感じやすくなります。手っ取り早いのは、過去に感じたセックスを想像してみること。それがない場合は、セクシャルな動画や漫画、官能小説などに触れてみてください。経験したことがないプレイに興奮したりムラッとしたりして、自分の知られざる欲望に気づけることも！

ただし男性向けのアダルトビデオはファンタジーな要素が強めなので、あくまでフィクションとして楽しんで。動画の女性と同じように感じられない自分はおかしいのかも、などと思わないでくださいね。

ちなみに興奮すること自体に嫌悪感や罪悪感を抱く人もいますが、それは性欲がある人間にとって、ごく普通の感情です。セックスを楽しむことは悪いことではなく、その意識が変われば、体の感じかたも変化するはずです。一方で、性欲の度合いや有無も人それぞれ。全く性欲がない、セックスに興味がない、という人は一定数いますし、その場合は無理にセックスやセルフプレジャーを行う必要はありません。

強いて言うならば、セルフプレジャーによる刺激に慣れてしまって、パートナーとのセックスでは満足できなくなってしまう可能性があることです。とくにセルフプレジャーアイテムは刺激が強いため、頻用すると人の愛撫では物足りなく感じてしまうんです。

対策として、アイテムに頼りすぎずに、指による刺激と交互で楽しむとよいでしょう。ただ、万が一そうなったとしても、アイテムを使わなくなれば感覚は元に戻ります。リスクを恐れすぎず、試してみたいという気持ちに素直に従ってみてくださいね。

絶対に安全とは言い切れませんが、セックス同様、通常は問題ありません。前置胎盤や切迫早産の可能性がある場合などはセックスを控えるように伝えますが、そういった指摘を受けていなければ心配しなくていいでしょう。また、セックスはだめでもセルフプレジャーならばいい、という状況もありますので、主治医に相談してみてください。

あてがうタイプならば、先ほど挙げた「iroha」のゆきだるまに加えて、プチもおすすめです。水分たっぷりの寒天を花やシェルの形に固めた、主にクリトリスを刺激するためのアイテム。水分たっぷりだから濡れていない状態でも使えて、しかも使い切りだから家族やパートナーに見つかる心配もありません。振動がないので、強すぎる刺激が不安な人にもピッタリです。

オーラルセックスによる快感を得たい人は、最近流行りの吸引式アイテムを試してみて。「ウーマナイザー」を筆頭に、様々なブランドが販売しています。吸引口をクリトリスに当てると、口で吸われているような感覚を得られます。

撮影／新谷真衣　イラスト／green K　構成・文／中西彩乃