リモートワークが増えたことで姿勢が悪くなり、肩甲骨まわりのコリに悩む人が急増! ガチガチ肩になるとどんな不調が出るのかを専門家が解説。また、3分以内でできる肩甲骨ストレッチと呼吸法をレクチャーします。
・3ステップのテストで「ガチガチ肩甲骨」深刻度をチェック
●長時間同じ姿勢
●狭い視野
●ノートPC・タブレットで目線が下がる
●テーブルの高さ
⇒リモートにはガチガチ肩甲骨になるトラップだらけ!
医学博士
根来秀行先生
ハーバード大学医学部客員教授。ソルボンヌ大学医学部客員教授。最新の著書『ハーバード&ソルボンヌ大学の最先端研究から考案! 肩甲骨リセット』が話題に。
前かがみ姿勢で肩甲骨が硬くなると、呼吸が浅くなる!
リモートワークにより、ガチガチ肩甲骨の人が増えているが、原因を医師の根来秀行先生に伺った。
「リモートワークには、肩甲骨が硬くなる多くの要因があります。まず、パソコン作業に適していない机を使っている人が多く、ただでさえ姿勢がくずれやすい状況です。それに加えてノートパソコンやタブレットを使う人が多いので、目線が下がって前かがみ姿勢になります。オンライン会議があれば、このような悪い姿勢をさらに長く続けることに。こうして肩甲骨を動かさないでいると、そのまわりの筋肉や腱、靭帯が硬くなり、ガチガチ肩甲骨になるのです」
こうなると多くの問題が発生。
「肩甲骨まわりの筋肉は、肩を上げる・下げる、腕を上げる・下げる、胸を張る、腕を回すといった腕や肩の様々な動作に使われます。でも肩甲骨が硬くなると、これらの筋肉が使われずに衰えるため、血流が悪くなります。すると全身に栄養や酸素をうまく運べず、老廃物や疲労物質がたまって、痛みやコリが生じやすくなります。また、ガチガチ肩甲骨になると前かがみ姿勢が定着するので、横隔膜の動きが制限され、呼吸が浅くなってしまうという問題も!」
ガチガチ肩甲骨になると体はバッドスパイラル一直線
ガチガチ肩甲骨で呼吸が浅くなると、さらに多くの問題が発生。
「私たちは、酸素を外から取り込む肺呼吸(外呼吸)と、酸素を細胞内に取り込む細胞呼吸(内呼吸)によってエネルギーをつくり出しています。呼吸が浅いと1回の肺呼吸で取り込める酸素の量が減り、細胞に送られる量も減って酸欠に。すると、たとえば筋肉細胞が酸欠になると肩コリや腰痛が、肌細胞が酸欠になるとシミやシワが、脳細胞が酸欠になると集中力低下や頭痛がと、酸欠が起きた部位で不調が発生。また、呼吸が浅いと自律神経のうちの交感神経が優位になるため、毛細血管にうまく血液が流れず血管自体が劣化。そのため、ますます栄養や酸素が行き渡らなくなり体に不調が出るのです」
これを防ぐのに効果的なのがガチガチ肩甲骨を改善する「肩甲骨リセット」。まずは以下のテストでガチガチ度をチェックして。
前かがみになり姿勢が悪くなる
背中を丸めた前かがみ姿勢を続けるとその姿勢のまま肩甲骨が硬くなり、前かがみ姿勢が基本姿勢になってしまう
横隔膜の動きが制限され、呼吸が浅くなる
呼吸は横隔膜が上下に動くことで行われるが、前かがみ姿勢になると横隔膜の動きが制限され、呼吸が浅くなる
細胞が酸欠になり毛細血管も劣化。酸素が巡りにくく
呼吸が浅いと肺や細胞に取り込まれる酸素が減って酸欠に。交感神経が優位にもなるため毛細血管の血流も悪化
肩コリ、腰痛、頭痛、集中力低下など、心身の不調に
細胞の酸欠や毛細血管の劣化によって、肩コリ、腰痛、集中力の低下、頭痛、シミやシワなど心身に不調が発生
⇒これを阻止すべく肩甲骨リセット!
どこまでできる?肩甲骨ガチガチ度チェック!
呼吸浅くなってない?
肩甲骨が硬くなっていると呼吸が浅くなりやすい。このテストで呼吸が浅くなっていないかどうかをチェックしてみて。
何秒息を止めていられるかチェック
静かに鼻から息を吐いたあと、息を止め、息をしたくなるまでの時間を計る。無理に息を止めるのはNG
息を何秒止められた?
×30秒未満…呼吸が浅く、ガチガチ肩甲骨の可能性大
○30秒以上…呼吸は浅くなっていないので問題なし
◎40秒以上…理想的な深い呼吸になっていて◎
ひじが鼻の高さまで上がる?
両ひじを合わせて真上に上げることで、肩甲骨の柔らかさをチェック。鼻の高さまで上げられないならガチガチ肩甲骨。
1.左右の手のひらとひじをくっつける
足を腰幅程度に開いて立ち、胸の前で左右の手のひらとひじをくっつける
ひじがくっつかず上げられない
2.ひじを鼻の高さまで上げられたらOK
手のひらとひじをくっつけたまま真上に上げる。ひじを鼻の高さまで上げられたらOK
腕が60度以上上がる?
体の後ろで手を組んで、上に上げるテスト。腕が上がる角度が60度未満なら、肩甲骨がガチガチになっているサイン。
1.体の後ろで手を組む
両足を腰幅程度に開いて立ち、体の後ろで手を組む
2.手を組んだまま上に上げる
両手を組んだまま上に上げる。腕を60度以上上げられたらOK
・3分でできる肩甲骨ストレッチ+呼吸法でガチガチをリセット!
6つのうちからひとつをチョイス! 肩甲骨ストレッチ
6種類の「肩甲骨ストレッチ」のいずれかと、記事の一番下の「4・4・8呼吸法」を合わせて合計3分でできるガチガチリセット。リモートワークの合間に行って。
1.肩まわりを伸ばして肩甲骨リセット
肩甲骨を開く「外転」の動きのストレッチ。肩甲骨が左右に開くのを意識して行って。
1.浅めに座り、胸の前で手を組む
椅子に浅く座り、背すじを伸ばし、胸の前で手を組む。足はかるく開く
2.息を吐きながら腕を前に伸ばす
息を吐きながら腕を前に伸ばす。限界まで伸ばして20秒キープ
上体を倒すと開きが悪くなる
一日の目標:20秒×3セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
2.腕まわりを伸ばして肩甲骨リセット
肩甲骨を開いて上げる「上方回旋」と、肩甲骨を寄せて下げる「下方回旋」の動き。
1.ひじを曲げて指先を肩にのせる
椅子に座り、両ひじを曲げ、指先を左右の肩先にのせ、胸を張る
2.腕全体を前後にまわす
両ひじで円を描くように腕全体をまわす。前まわし、後ろまわし各5回
背中を丸めたまままわすのはNG
一日の目標:前後各5回×3セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
3.肩甲骨をつかんで肩甲骨リセット
肩甲骨の「上方回旋」と「下方回旋」の動き。肩甲骨まわりが柔軟に。
1.右手の指で左の肩甲骨をつかむ
左腕を上げ、右手の親指を左わきの下に入れ、ほかの指で左の肩甲骨をつかむ
2.肩甲骨をつかんだまま腕を内まわし
左腕を肩の高さに下ろし、内側に5回まわす
3.そのまま外まわしも5回
次に、外まわしを5回。左右の腕を入れ替えて同様に行う
一日の目標:内外各5回×3セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
4.肩まわりをゆるめて肩甲骨リセット
肩甲骨を上げる「挙上」の動きと、肩甲骨を下げる「下制」の動きのストレッチ。
1.タオルを持って真上に上げる
タオルを肩幅よりも広めに持ち、腕を真上に上げる
2.タオルを首の後ろに引き下げる
タオルが首の後ろにくるようにひじを曲げたら、ひじを伸ばし1に戻る
うしろ
一日の目標:10回×2セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
5.胸を開いて肩甲骨リセット
腕を後ろに引くことで、肩甲骨を寄せる「内転」の動きのストレッチ。
1.両腕をまっすぐ前に伸ばす
両足を肩幅くらいに開いて立ち、両腕をまっすぐ前に伸ばす
背中は丸めず背すじを伸ばして
2.両ひじを水平に引いてキープ
両ひじを水平に引き、限界まで引いたら5秒キープし、1に戻る
水平に引かないと肩甲骨が寄らない
一日の目標:5回×3セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
6.胸と背中を開いて肩甲骨リセット
壁に手をついて胸を張り、肩甲骨を寄せる「内転」の動きのストレッチ。
1.壁のコーナーに立ち両手を壁につける
壁のコーナーの正面に立ち、ひじを曲げ、両手を壁につける
2.体重を前にかけて胸を突き出す
体重を前にかけ、胸を突き出し、10秒キープしたら1に戻る
手の位置が肩より上になるのはNG
一日の目標:3回×3セット+4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
4・4・8呼吸法で横隔膜をよみがえらせる
硬くなって動きが悪くなった横隔膜をよみがえらせる呼吸法。深い呼吸ができるように。
1.両手をおへその上に置く
椅子に座り、両手をおへその上に置く
2.4秒かけて鼻から息を吸う
お腹をふくらませながら、4秒かけて鼻から息を吸う
3.息を止めて4秒間キープ
4秒間息を止める
4.4秒かけて鼻から息を吐く
お腹をへこませながら、8秒かけて鼻から息を吐く
1日の目標:2回×3セット
撮影/山下みどり ヘア&メイク/藤本 希〈cheek one〉 モデル/中島真亜沙(スーパーバイラーズ) 取材・原文/和田美穂 撮影協力/EASE ※BAILA2022年2月号掲載