働く30代が抱える日々のもやもやを、一見冴えない(!?)アンガールズの田中卓志先輩にぶつける連載【隣の部署の田中先輩】第19回! 今回は、理不尽な会社の対応に納得がいかないという悩みに田中先輩が的確アドバイス!
《今月のお悩み》理不尽な会社の対応に納得がいかない(40歳・IT企業)
10歳ほど年上の社長の側近の女性から、立場を利用して業務を絡めた嫌がらせをされています。そこで自分の部署で最も力のある上司に相談したら、なんと私が仕事を外されることに。納得がいきませんが、会社組織として決定されてしまえば逆らうこともできず……。どう挽回したらいいでしょうか。
田中先輩の答え…理不尽の裏には“未熟な自分”が存在するのかもしれない
仕事の人間関係にも合う合わないの相性はある
常日頃、僕が「理不尽だなぁ」と感じるのがヤンキーネタです。僕、基本的にヤンキーが苦手で、番組のスタジオでこんなエピソードを披露したことがあるんですよ。昔、相方の山根と歩いているときに「おい、おまえらテレビに出ているヤツだろう。写真撮らせろ」とヤンキーの親子に絡まれたことがあって。そこで僕は「失礼だな」という怒りを押し殺しつつ「一瞬、ガマンすれば終わる」と。ただ、せめてもの反骨精神で「絶対に笑顔やピースなんかしないぞ」と。そう心に決めて山根の隣に並んだんですけど、隣を見たらその山根がまさかの笑顔でピースをしていて。それを見たヤンキー父は「おまえもピースしろよ」と僕にまで強要。渋々、自分もピースをしてしまったという……。個人的にはとても悔しいエピソードだったのに、その日のスタジオには「昔、ヤンチャしていました」系の芸人が勢ぞろい。ほとんどが僕の話を聞いてキョトン顔。共感されると思いきや、むしろ、僕が悪いみたいな空気になっちゃったという。あれは本当に理不尽だなぁと思いましたよね。そもそも、元ヤン芸人は若い頃の行いを「ヤンチャ」の一言ですませるけど。そんなポップな表現で犯罪めいた空気を抜くなと僕は言いたい。表現をポップに変えたところで悪は悪、ヤンチャロンダリングはもう、法律で禁止にしたほうがいいですよ本当に‼
思い出し怒りでうっかり話が脱線しましたが、つまり僕が言いたいのは「仕事の人間関係にも相性がある」ということなんです。元ヤンキー芸人にはキョトン顔されてしまったけど、優しい生活を送ってきた芸人なら、きっとあの話に共感してくれたはず……。それと同じように会社でもきっと“意見の合う合わない”や“仕事のやりやすいやりにくい”が存在するわけで。相談者さんは「仕事から理不尽に外された」と感じているけど、上の人は仕事から外すことで合わない上司から相談者さんを守ってくれたのかもしれないよね。
自分の歩みを振り返っても思うけど、理不尽さって若手の頃ほど感じることが多くて、それはきっと未熟さゆえに見えないものが多いからなんだと思う。若手の頃、ネタ見せで作家さんからダメ出しをされることがよくあったんだけど、当時の僕はそれを無視。「自分の面白さが正しいんだ」ってそのまま舞台で披露したことが何度もあるの。それはそれで会場のお客さんにはウケたんだけど。経験を積んだ今、そのネタを振り返ると思うんだよね。「作家さんのダメ出しはやっぱり正しかった」って。そんなふうに、大人になった僕たちには昔はわからなかったけど今は理解できることが山ほど存在するわけで。今の相談者さんは理不尽と感じていても、それはちゃんと精査された結果かもしれない、実は上司の意見が正しいのかもしれない。そして、それをいつか理解できる日が来るのかもしれない……。そう言ってはみたものの、そんなものは「今はわからないよ!」「単純にイヤな奴かもしれないじゃん!」が本音ですよね(笑)。そんなときは上司を思い切り恨んでいいと思う。ネガティブな感情を“なにくそ根性”というエネルギーに変えて「見返してやる!」と新しい上司のもとで仕事に打ち込めばいいんです。「あのクソが!」って陰で悪口を言いながらね(笑)。
田中先輩へのお悩み相談はこちらから!
BAILAお悩み相談連載・アンガールズ田中卓志さんへのお悩み相談大募集!
田中卓志
たなか たくし●1976年生まれ、広島県出身。大学時代の友人、山根良顕とお笑いコンビ「アンガールズ」を結成。「呼び出し先生タナカ」(フジテレビ系)など多数のバラエティで活躍中。
撮影/黒沼 諭〈aosora〉 ヘア&メイク/高橋将氣 スタイリスト/高山良昭 イラスト/ますこえり 取材・原文/石井美輪 撮影協力/アワビーズ ※BAILA2024年5月号掲載