働く30代が抱える日々のもやもやを、一見冴えない(!?)アンガールズの田中卓志先輩にぶつける連載【隣の部署の田中先輩】第20回! 今回は、明らかにモチベーションが落ちている後輩に声をかけたいという悩みに田中先輩が的確アドバイス!
《今月のお悩み》明らかにモチベーションが落ちている後輩に声をかけたい(31歳・IT)
頑張り屋で、伸びしろに期待したい後輩がいるのですが、見るからに疲れてモチベーションも下がっているように見えて心配です。「なんのためにこんなに働いているんだろう…?」となっていそうなんです。先輩として、どう接したらよいのでしょうか。
田中先輩の答え…やる気を失った後輩には“ヒリヒリするほどの刺激”を
正論を語りたがる『名探偵タナカ』は封印
芸人のなかにも、やる気をなくしてしまい、志なかばでこの仕事を辞めてしまう人がたまにいます。ただ、その理由はたいてい「目標を達成することができなかったから」。自分の実力に限界を感じたから引退する人がほとんどで。「なんのために働いているんだろう」というボンヤリとした理由で辞める人は意外と少ないんですよ。芸人の場合、わかりやすい目標が常に目の前にあるからかもしれませんね。まずはライブに出たい、出れるようになったら次はちゃんと笑いをとれるようになりたい、笑いがとれるようになったらテレビに出たい、あの番組でこんな仕事がしたい……。ひとつ目標をかなえたら、すぐ次に新たな目標が待っている。そこにはいくつもの段階があり、達成感を得るチャンスもたくさん転がっているので、意外とボンヤリしている暇がないというか。だからこそ「いつか売れる!」のモチベーションを失わずに突き進むことができるんですよ。
僕が思うに、相談者さんの後輩がやる気を失っているのは、日々の業務がルーティン化してしまっているというか。同じことの繰り返しで、成長や達成感や何かが身についていく実感を感じることができなくなってしまっているからなんじゃないかな。ならば、やる気が出るような目標を、わりとすぐに達成感を味わえるような近い目標を、届けてあげるのはどうでしょう。たとえば、プレゼンを任せてみたり、重要なプロジェクトに参加させてみたり、企画を出してとお願いしてみたりね。
日々の仕事と生き生きと向き合うためには多少の刺激が必要です。僕はね、年に2回はヒリヒリするような仕事をしたほうがいいと思っているんですよ。たとえば、僕でいうなら『IPPON グランプリ』。芸人が集まり戦い、大喜利王を決める、この番組のプレッシャーのヒリヒリ感はハンパないんですけど。その分、笑いをとれたら嬉しいですし、笑いをとれなかったとしても「今の自分に何が足りないのか」が見えてくる。そこで得た自信や課題は、日々のバラエティ番組への向き合い方も変えてくれるんですよね。
そんなヒリヒリとした刺激を届けることも大事ですが、後輩の心にそっと寄り添うのもまたきっと大事なこと。基本、理系脳で違うと思ったら「意義あり!」と言わんばかりに反論。悩み相談をされるたび相手を理詰めで追い詰めてしまいがちだった僕ですが、トーク番組で女性陣から「そんなのは求めていない!」と責め立てられてからは正論を封印。たとえば、奥さんが仕事で落ち込んでいたら、「そんなやつ、オレだったらぶん殴るけどな」と、絶対に自分ができもしないことをあえて言ってみたり(笑)。小さな笑いを交えつつ、とにかく相手の話をウンウンと聞くようになりました。そんなふうに、一度後輩の話を聞いてあげるのもいいかもね。自分もそうだけど、元気がないときはやっぱり誰かに味方になってほしいもの。「そうだね」の同意ひとつで気持ちが軽くなったりするんですよね。だからこそ、今日も僕は奥さんの話を「そうだね」「そうだね」とうなずきながら聞くのです。自分の中で「真実はひとつ!」と叫び正論を求めようとする『名探偵タナカ』がいるのを感じながらも……(笑)。
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田中卓志
たなか たくし●1976年生まれ、広島県出身。大学時代の友人、山根良顕とお笑いコンビ「アンガールズ」を結成。「呼び出し先生タナカ」(フジテレビ系)など多数のバラエティで活躍中。
撮影/黒沼 諭〈aosora〉 ヘア&メイク/高橋将氣 スタイリスト/高山良昭 イラスト/ますこえり 取材・原文/石井美輪 撮影協力/アワビーズ ※BAILA2024年6月号掲載