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桐野夏生の最新刊『燕は戻ってこない』をレビュー【バイラ世代におすすめの本】

書評家・ライターの江南亜美子が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、世の中の仕組みを見通せる、クリアな視座をくれる2冊、桐野夏生の『燕は戻ってこない』と上野千鶴子の『ガールズ・ビー・アンビシャス』をお届けします。

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江南亜美子

江南亜美子


文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。

『燕は戻ってこない』  桐野夏生著 集英社 2090円

女性がキャリア形成のために卵子を凍結、時機を見て妊娠出産しようとすると、まだ世間の風当たりは強い。ましてや代理母の利用などなおさら。出産はかくもややこしい。

29歳、非正規で病院事務につく大石理紀は、同僚から聞いた卵子提供のバイトに興味を持つ。しかしクリニックでは自身の卵子を使い、妊娠出産までを担う「代理母」にならないかと提案される。依頼者は有名な元バレエダンサーとイラストレーターの夫婦。自分の遺伝子を持つ子が欲しいと、夫のほうが積極的だ。

報酬は1千万円。倹約に疲れ、将来の不安を抱えるリキはお金に心が動く。富裕層に身体を利用される不均衡さも、日本国内では偽装結婚しなければならない事情もぐっとのみ込んで、彼女は言う。「私はお金がほしいんです。だから、ビジネス」

本書は、理屈では割り切れないリキの心の変化をつぶさに追う。性交渉ナシの妊娠を本能的に拒むように女性用風俗を利用したり、親の反応に動揺したり。変化はリキだけでなく依頼者夫婦にも訪れる。そして思いもよらぬ行動に突き動かされ……。女性と出産を主題に、経済格差や母性神話まで踏み込んで物語を構築した、桐野夏生らしい社会派小説だ。

『燕は戻ってこない』

桐野夏生著
集英社 2090円


「新しい愛が芽生えている」この子どもは誰のもの?
地方出身で経済的に困窮するリキは、人生の一発逆転として、自分の子宮を貸し出すことを選ぶが……。出産ビジネスとその構造、当事者たちの揺れる心理を描いた、サスペンスフルで先の読めない物語。

これも気になる!

『ガールズ・ビー・アンビシャス』 上野千鶴子、グレタ・トゥーンベリほか著 集英社インターナショナル 1430円

『ガールズ・ビー・アンビシャス』
上野千鶴子、グレタ・トゥーンベリほか著
集英社インターナショナル 1430円

「あなたらしく生きる」心に響く、21の言葉
持続可能な世界、弱者が虐げられない世界、働きやすく男女平等な世界……。私たちが夢見る世界を実現させるため、各界の著名な女性たちが後に続く若者に送ったスピーチ(言葉)集。心のよりどころに。

イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年6月号掲載

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