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上田岳弘の超越的恋愛小説『最愛の』をレビュー【バイラ世代におすすめの本】

書評家・ライターの江南亜美子が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、秋の夜、人肌恋しい季節に読みたい恋愛小説2作、上田岳弘の『最愛の』と千早茜の『マリエ』をレビュー!

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江南亜美子

江南亜美子


文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。

秋の夜、人肌恋しい季節に読みたい恋愛小説2作。読めば手紙を書きたくなるかも

『最愛の』   上田岳弘著 集英社 2310円

人は自分に似た人物を好きになるのか、異なるから愛せるのか。そんな自己愛の本質を問うエモーショナルな物語が本作では展開される。

中学時代、不慮の事故により転地療養も兼ねて引っ越してしまった望未と、主人公の久島は文通を続ける。「最愛の」との呼びかけで始まるそれは、青春期の存在の不安を打ち明け、互いを気づかい、友愛に満ちたものだった。しかし彼女は大学生になっても再会を望まず、「私のことはすっかり忘れてほしい」と彼を拒む。

30代後半となり、「血も涙もない的確な現代人」として渋谷で働く久島は、ひょんなことから知り合った男に、「忘れられない誰か」について書けばいいと助言され、記憶のディテールを思い返す。手紙は靴の空き箱にある。そうして過去の扉が開くのだ。もう一人、タワマンに住む学生兼愛人業のラプンツェルも、久島と望未の物語に興味を示す。「君の物語は果たしてどうなのかな?」

金と権力に加え、「永遠の恋人」を求める80代の老人も登場。久島は老人の哲学を通して、望未の真の願いを探り続ける。物理的な距離と心理的な距離についての考察が胸にくる、純度の高い大人のための恋愛小説だ。

『最愛の』

上田岳弘著
集英社 2310円


「私のことは忘れて」謎めいた恋人との愛の行方
学生時代に長く文通した相手との断絶と偶然の再会。彼女を忘れかけていた30代の久島は、仕事先で知り合った男に「自分だけの文」を書けと言われ、思い出を綴る。令和時代の『ノルウェイの森』。

これも気になる!

『マリエ』 千早茜著  文藝春秋 1870円

『マリエ
千早茜著 
文藝春秋 1870円

手放すって気持ちいい。人との関係の理想形は?
40歳目前で夫に離婚を切り出されたまりえは人生の優先順位を思う。結婚相談所の人々、離婚したての同級生、料理を習いに来る年下の男性。大人がふと無防備になる瞬間をとらえた美しい恋愛小説。

イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2023年11月号掲載

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