そこにいるだけでドラマチックな生きざまが透けて見える俳優・窪塚洋介。紆余曲折を経てたどり着いた、優しくてポジティブな仕事論と人生論。
人生には絶対に、バックドアという逃げ道が存在している
今から約20年前。ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」や映画『GO』など、組織や社会に立ち向かう若者の役を数多く演じてきた窪塚さん。韓国発のウェブ漫画を映像化したAmazon Original映画『ナックルガール』では、ヒロインの敵役となる、裏社会の組織に君臨するボスを強烈な存在感で演じている。
「20代の頃はたまたま主演を演じることが多かったけど、当時からバイプレイヤーも楽しみたいという思いはあったんです。主人公が目標に向かうために必要な“踏み台”になるって、脇役じゃないと味わえないうまみがあるから」
近年は海外のクリエイターと仕事をする機会も多く、日韓共同で制作された本作も、韓国人監督と積極的にコミュニケーションをとったという。
「こう見えて俺、実はわがままなアーティストタイプじゃないですよ。我を出すのは芝居の中だけでいい。協調性を大切にして現場をつくっていくタイプだから、“40℃のお風呂”みたいに、みんなが集中できていいパフォーマンスができる、ちょうどいい温度に調節したいんです。空気がぬるかったら指摘するし、ガッチガチに沸騰していたら突拍子もない冗談でみんなを笑わせたりもする。20代の頃はそれができなかったけど、経験を重ねてだんだんできるようになったかな。今はそれも俳優の仕事だと思うから」
俳優だけでなく音楽活動やアパレルのプロデュースなどにも挑戦し、キャリアはすでに28年。
「使い古された言葉ですけど、“失敗は成功の母”だし“No Rain, No Rainbow”なんで、どんな経験も無駄じゃなかったと思います。俺の場合、一回マンションから落っこちたことが芸能生命の危機でした。でも今は、そこから本当の意味で人生が始まったと思える。もしどうしてもつらいことがあったら逃げてもいいんですよ。人生には絶対にバックドアという逃げ道が存在しているし、そこには誰も鍵をかけられないから。ドアの先には新しいステージや新しい出会いが待っているし、いつかその選択を『マジでよかった』と思えるかもしれない。俺にとってはそれが音楽だったりしたわけで。ピンチも失敗もよくなるためのインビテーション。そう思えば、何が起きてもポジティブな力に変えられると思う」
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Amazon Original映画『ナックルガール』
出演/三吉彩花、前田公輝、細田佳央太、窪塚洋介、伊藤英明ほか
監督/チャン 原作/JGstreet原作、Daywalker(Sang Jin Yoo)作画
11月2日(木)よりPrime Videoにて世界独占配信
気鋭のボクサー橘蘭(三吉彩花)はある日、妹が失踪したと警察から知らせを受ける。事件の裏には、白石誠一郎(窪塚洋介)率いる犯罪組織の存在があると気づいた蘭は、命懸けのバトルに身を投じていく。韓国の人気ウェブ漫画を、韓国人クリエイターと日本人キャストで映画化。
窪塚洋介
くぼづか ようすけ●1979年5月7日生まれ、神奈川県出身。’95年に俳優デビュー。ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」、映画『GO』『ピンポン』『Silence-沈黙-』、BBC×Netflix London『Giri/Haji』など話題作に数多く出演するほか、音楽活動、モデル、執筆と多彩な才能を発揮。今後も多数の待機作を控える。
撮影/田形千紘 ヘア&メイク/佐藤修司〈Botanica make hair〉 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2023年12月号掲載