意外に知らないクラシック音楽の疑問に3人の専門家が回答。これさえ知れば、敷居の高さも払拭され、今すぐクラシック音楽を聴いてみたくなるはず! まずはクラシック音楽の基礎的な知識を押さえておこう。
クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄さん
音楽専門誌や書籍、楽譜の執筆・翻訳、セミナー講師など幅広く活躍。「ららら♪クラシック」(NHK)に出演。
ディスクユニオン スタッフ
川崎 忍さん
「ディスクユニオン 新宿クラシック館」勤務。レコードやCDなど、日々、何万枚ものクラシック音楽を取り扱う。
クラシック音楽YouTuber
nacoさん
幼少期からピアノとエレクトーンを学び、2020年4月より、YouTube「厳選クラシックちゃんねる」を開設。
基礎編
Q そもそもクラシック音楽ってなんですか?
A
「一般的には、1600年代からヨーロッパで発達してきた音楽文化の総称をクラシック音楽と呼びます。発祥は聖書の祈りの言葉から。そこに抑揚ができて聖歌となり、そしてオペラへ。さらに楽器が加わり、現在のオーケストラの形へと発展する流れがベースにあります。近現代音楽もクラシック音楽と呼ぶ理由は様々ですが、いちばんの特徴は音楽理論に基づいていること。発祥時は口承で歌い継がれてきましたが、楽譜ができたことでロジックが生まれ、現在では精巧に組み立てられたロジカルな音楽=クラシック音楽となっています」(飯田さん)
「どんなに自由に演奏しているように聴こえても、クラシック音楽は作曲家への敬意を込めて楽譜に忠実に演奏されているものです。そこで僕はクラシック音楽=楽譜を重要視する音楽だと考えています」(川崎さん)
Q オーケストラと室内楽の違いは?
A
「室内楽は部屋で聴ける編成の音楽です。デュオ(2名)〜室内オーケストラ(10〜40名程度)が室内楽に含まれます。中でも弦楽四重奏が最もポピュラー。シンプルな編成ですが4つのパートがあると音楽が豊かになるからです。かつての著名な作曲家も多くのカルテット(四重奏)を残しています。またオーケストラの編成は50名程度から100名以上になることも。マーラーの交響曲第8番『千人の交響曲』に代表される1000名もの大人数で演奏される作品もあります」(飯田さん)
Q 交響曲と協奏曲の違いは?
A
「交響曲はオーケストラと指揮者によって演奏され、協奏曲には独奏楽器を演奏するソリストも加わります」(飯田さん)。
「基本的にはひとつの曲が4楽章に分かれた、主題を展開するソナタ形式のものが交響曲と呼ばれます。1楽章は盛り上がり、2楽章はゆっくり、3楽章は軽快に、4楽章では1楽章の主題が再び復活してさらに盛り上げるなど、起承転結がある音楽です。協奏曲はソリストとオーケストラが一緒に演奏する音楽。かつては独奏者のパートは即興演奏が許されていましたが、ベートーヴェンはソリストの演奏まで楽譜に書いたというエピソードもあります」(川崎さん)
Q オペラやバレエ音楽もクラシックですか?
A
「もちろん、そうです。交響曲もオペラから生まれたといわれているほど、オペラは歴史あるクラシック音楽のひとつです。またジョルジュ・ビゼーの『アルルの女』や、セルゲイ・プロコフィエフの『ピーターと狼』に代表されるような劇付随音楽も、クラシック音楽といえます」(nacoさん)
「バレエはイタリアの宮廷で生まれ、そこに舞台や衣装とともに音楽がつけられたのが始まりです。当時の音楽といえば今の私たちが“クラシック音楽”と呼ぶものなので、バレエ音楽もその仲間といえます」(飯田さん)
Q 指揮者の役割って? 同じ楽譜なのに人によって変わるもの?
A
「指揮者は海外で“シェフ”と呼ばれるように、楽譜に書かれた音楽を解釈し、楽曲全体を作っていくのが仕事です。同じ文章でも読み手によってとらえ方が違うように、作曲家の解釈も一人ひとり異なります。そこで音楽の解釈は指揮者一人に託され、オーケストラのメンバーは指揮者の方向性に合わせて演奏することで意思統一を図るのです」(川崎さん)
「指揮者は本番前の役割も大きく、楽譜を通して作曲家の意図をくみ取り、事前練習でオーケストラの奏者と楽曲の方向性を共有しています。舞台でいうなら演出家、映画なら監督のような立ち位置です」(nacoさん)
イラスト/KOTOMI FUJIWARA 取材・原文/池田旭香 ※BAILA2024年10月号掲載