意外に知らないクラシック音楽の疑問に3人の専門家が回答。これさえ知れば、敷居の高さも払拭され、今すぐクラシック音楽を聴いてみたくなるはず! 今回は初めて聴くのにおすすめの曲からおすすめイヤホン・スピーカー、ポップスとの関連性など鑑賞の基礎知識&トリビアを網羅。
クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄さん
音楽専門誌や書籍、楽譜の執筆・翻訳、セミナー講師など幅広く活躍。「ららら♪クラシック」(NHK)に出演。
ディスクユニオン スタッフ
川崎 忍さん
「ディスクユニオン 新宿クラシック館」勤務。レコードやCDなど、日々、何万枚ものクラシック音楽を取り扱う。
クラシック音楽YouTuber
nacoさん
幼少期からピアノとエレクトーンを学び、2020年4月より、YouTube「厳選クラシックちゃんねる」を開設。
鑑賞編
Q 初めて聴くクラシック音楽、何を基準に選べばよいですか?
A
「入門編におすすめなのは19世紀の音楽です。ロマン派のベートーヴェン以降からショパンやラフマニノフ、チャイコフスキーやドヴォルザークならメロディメーカーが多く、口ずさめる曲が多いからです」(飯田さん)
「名曲や名盤の中から、どんなテイストの曲が好きかで選ぶのがいいと思います。派手でインパクトがある音楽が好きならベートーヴェン交響曲第7番を。落ち着きのあるものが好きならエリック・サティ『ジムノペディ』のように叙情的なピアノ曲などはいかがでしょうか?」(川崎さん)
Q J-POPやK-POP好きな人におすすめのクラシック曲は?
A
「ロックが好きな人には、ヴェルディのレクイエムの『怒りの日』やベートーヴェンの『月光』第3楽章を聴いてみてほしい。特に『月光』はエレキギターで演奏する人がいるほど、激しさと情熱が感じられる曲調です。ジャズ好きには、ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』やカプースチンの『8つの演奏会用エチュード』を。またK-POPファンには、ビゼーの『カルメン』やハチャトゥリアンの『仮面舞踏会』などをはじめとする、劇的な音楽がおすすめです」(nacoさん)
Q 歌詞がないクラシック音楽は、どのように理解するのが正解?
A
「もちろん解釈したいと思うなら、具体的な音楽の知識があれば鑑賞ポイントは増えるもの。ただ、最も必要なのは自分が楽しむこと。イラストを見るときに理解しようという気持ちが芽生えないように、クラシック音楽も五感で自由に感じればいいだけです」(nacoさん)
「歌詞がない音楽だからこそ、自分のマインドをそのままのせられるのも魅力。正解がないからこそ、伸び伸びと音に向き合えるはずです」(飯田さん)
「歌詞がない音楽というなら、ジブリの映画音楽も同じはず。そこに自分の心が動けば、理解しようなんて思わなくて大丈夫です」(川崎さん)
Q 今、注目の日本人若手アーティストは?
A
「ピアニストでいうなら、務川慧悟さんと亀井聖矢さんです。ビジュアルはもちろんですが、とにかく奏でる音色が素晴らしく、どの演奏を聴いても間違いありません!」(nacoさん)
「作曲家だと坂東祐大さん。現代音楽の楽曲をメインに作曲しているアーティストですが、アニメ『怪獣8号』のテーマ曲や『竜とそばかすの姫』のサウンドトラックを手がけるなど、クラシック音楽だけにとどまらず幅広く活躍しています」(川崎さん)
©Yuji Ueno
ピアニスト
務川慧悟さん
2014年パリ国立高等音楽院に審査員満場一致の首席で合格し渡仏。現在は国内外での演奏活動の傍ら、フォルテピアノ科に在籍。2022年には『ラ ヴェル:ピアノ作品全集』(NOVA Record)をリリース。
©Yuji Ueno
ピアニスト
亀井聖矢さん
2001年生まれ。2019年、第43回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、及び聴衆賞を受賞。2022年には、マリア・カナルス国際ピアノコンクール第3位など、国内外で数多くの受賞経験あり。
Q クラシックを手軽に楽しみたいときどんなサービスで聴くのがよいですか?
A
「まずはYouTubeなどでいろんな音楽をつまみ食いし、自分の好きと嫌いを理解するのがいいと思います。気になる曲や作曲家が見つかったら、音源をダウンロードしたりCDを買ってみたりするなどすれば、だんだんと自分の好みに気づけるはずです」(nacoさん)
「最初はSpotifyなどのサブスクで聴くのが気軽に楽しめると思います。一方で、あちこち聴きすぎると自分が何を好きかわからなくなることもあるので、気に入った曲は盤を買って、繰り返し聴いてみてください」(川崎さん)
Q クラシック音楽に適したイヤホンやスピーカーはありますか?
A
「スマホで音楽を流すときも、せっかくなら音響のよさにこだわりましょう。イヤホンなら、テクニクスのEAH-AZ60M2が圧倒的におすすめ。音の広がりがイヤホンで見事に表現できる優れものです。またスピーカーなら、バング&オルフセンから発売されているA1を。ブルートゥース対応型で、空間にふわっと音が広がるのが特徴です。コンパクトで愛らしい見た目も魅力」(飯田さん)
高音質なワイヤレスタイプ
小型だけれどクリアで臨場感のある音が楽しめるテクニクスの逸品。イヤホン¥27720(編集部調べ)/パナソニック ディーガ・オーディオ
小さくても迫力のサウンド
ラウンドの形状であらゆる方向にサウンドを届けるポータブルスピーカー。スピーカー ¥39900/バング&オルフセン ジャパン
Q ポップスの根底にはクラシック音楽があるって本当?
A
「西洋音楽の礎を築いたバッハの平均律クラヴィーア曲集で使われる転調や移調などの技法は、現代のポップスでも多用されています。たとえばYOASOBIの『アイドル』が曲の終盤にかけて高音へと上がるのは、転調によるもの」(川崎さん)
「BLACKPINKの『Shut Down』は、パガニーニの『ラ・カンパネラ』をサンプリングしたもの。そのほかYOASOBIの『アイドル』にはビゼー作曲の『カルメン』第3幕への間奏曲が使われているなど、さりげなくクラシック音楽が隠されているポップスが数多くあります」(nacoさん)
Q コンサートに行くときのドレスコードはありますか?
A
「ニューイヤーコンサートなどドレスアップを楽しむものもありますが、ほとんどのコンサートは普段着で行けます。会場にもよりますが、基本はオフィスカジュアルで大丈夫です。心配なときは、各ホールのホームページを見ると記載されているのでチェックしてみてください」(nacoさん)
イラスト/KOTOMI FUJIWARA 取材・原文/池田旭香 ※BAILA2024年10月号掲載