編集ぶん&ライターくぼやんがアートを紹介する新連載。第1回は東京都現代美術館の「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」を訪問しました。
今月の展覧会は…「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」@東京都現代美術館
“シンプルな線と色の背景にある物語 “知れば知るほど面白い!”

©2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.
Photo: Kazuo Fukunaga
《ウォール・ドローイング #46 垂直線、非直線、非接触、最大密度で均一に分散し、壁全体を覆う》(部分)初回展示1970年
タイトルどおり、定規を使わない縦線が、互いに触れず、交わらず、壁に直接描かれている。ルウィットの友人で、作品と同じ1970年に夭折したアーティスト、エヴァ・ヘスへの想いが込められた作品。繊細で、静謐な雰囲気をたたえている

©2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.
《ウォール・ドローイング #770 カラー・インク・ウォッシュを塗り重ねた非対称のピラミッド》1994年9月初回展示
770番目のナンバリングがされた、カラフルな巨大作品。距離感を変えて眺めると、様々な発見が

©2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.
Photo: Kazuo Fukunaga
会場風景。1980年刊行のアーティスト・ブック《自伝》
後半はじっくり“読み込む”展示。アーティスト・ブック《自伝》は一冊を分解し、すべてのページをたどれる

ライターくぼやん
アートって何? 作者って誰? 深い問いかけを、楽しく考えさせてくれる!
編集ぶん&ライターくぼやんが、東京都現代美術館 担当学芸員 楠本 愛さんに聞いた!

担当学芸員
楠本 愛さん
東京都現代美術館学芸員。担当した主な展覧会に、2023年「デイヴィッド・ホックニー展」(同館)など。本展のドキュメントでもある展覧会公式図録も刊行予定!
ぶん 天井の高い、広い展示室が気持ちいいですね。白い壁を覆うように鉛筆の線が無数に描かれています。
くぼやん 何を意図して描かれているのか、パッと見てわからないところが“現代アートっぽい”ですね。
楠本 これは、1960年代半ば以降アメリカで活動し、2007年に亡くなった、ソル・ルウィットのウォール・ドローイングという作品のひとつです。
ぶん 50年以上前に描き残された作品なんですか?
楠本 いいえ、これらはすべて、今回のために“ドラフトパーソン”という人々の手で壁に描かれました。展覧会が終わると、塗りつぶされてなくなってしまいます。
ぶん 作者がいないのに作品が生まれるって不思議。
楠本 はい、それこそが、ルウィットがアートのあり方を大きく変えた点。現代アートという分野において重要な作家といわれる理由です。従来の芸術は、誰が、どんな意図で作ったかが評価の中心で、作品の完成形に価値がつくものでした。ルウィットはそうではなく、作品を生み出すための「アイデア」こそがいちばん大事なのではないかということを、この時代にはっきりと示したアーティストだったんです。
くぼやん もしかして、作品タイトルはドラフトパーソンへの指示になっているのでしょうか?
楠本 加えて細やかな指示書があり、彼らに適正な対価が払われることなども定められています。今回は、ルウィットの生前から活動をともにした人、館から新たに声をかけた人、合わせて16名が18日間をかけて制作に関わりました。彼らにはルウィットのアイデアの背景にあるストーリーも共有しています。
ぶん それを知って作品を見ると、味わい方が変わりますね。すごくシンプルなドローイングから、そこにいないルウィットの人間性や、作品にまつわるエピソード、関わる人の息づかいまで聞こえてくるようです。
くぼやん のびやかな空間のドローイングと立体のほか、ルウィットのアイデアが詰まった、ZINEの原点のようなアーティスト・ブックの展示も見どころでした!
訪れたのは…東京都現代美術館
「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」
〜4/2
〒135-0022 東京都江東区三好4の1の1
東京都現代美術館 企画展示室 1F
10時〜18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜 入館料/一般¥1600ほか
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/LeWitt/
他にも行きたい展覧会
「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」@横浜美術館

戦後80年間の日韓現代アートを展示。音楽、ファッション、食だけではない深い関わりも感じたい。5月に韓国でも開催。
【展覧会DATA】
〜3/22
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3の4の1
10時〜18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/木曜
入館料/一般¥2000ほか
https://yokohama.art.museum/exhibition/202512_jkart1945/
「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」@東京都美術館

19世紀末〜20世紀、スウェーデンで生まれた絵画をたっぷり。自然の風景や北欧らしい趣に、旅する気分が味わえる。
【展覧会DATA】
~4/12
〒110-0007 東京都台東区上野公園8の36
9 時30分〜17時30分(金曜〜20時、入室は閉室の30分前まで)
休館日/月曜 入館料/一般通常¥2300ほか
https://www.swedishpainting2026.jp
取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2026年4月号掲載

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。

























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編集ぶん
噛み締めるほど味わい深く、どこかぬくもりも感じる作品。いつまでも浸っていたくなる!