褒められると嬉しい。褒め合うとチームの雰囲気がよくなる。ビジネスの場で“褒め”はとても重要。…わかっているけど、うまく褒めるのは難しい! そんな悩みを抱えるBAILA読者に、褒め上手な人たちに聞いた「褒めるコミュニケーション」のコツ、教えます!
1.7割が苦手?ビジネスの場で相手を褒めづらい理由
わざわざ呼び止めるほどでもないか…
思っていても、うまく言葉にできない…
噓っぽく聞こえてしまいそう…
なんか上から言ってるみたい…
バイラ読者にアンケート
【2023年2 月2 日〜2 月7 日、BAILAメルマガ会員にアンケート。29〜42歳の93人が回答】
Q ビジネスシーンにおいて、相手を褒めることは苦手ですか?
苦手と答えた人は、なんと7割! 褒めることに苦手意識を持つ人が多数という結果に。特にビジネスの場では、「どう褒めたらいいの?」と悩んでしまう人が多いよう
Q 褒めるのが苦手な理由は?
上から言っているみたいになりそう 27%
噓っぽくなりそう 22%
褒め方がわからない 11%
褒めたいことが見つけられない 10%
私に言われて嬉しいの?と考えてしまう 10%
わざわざ言わなくていいかと思う 9%
口に出すのが恥ずかしい 9%
その他 2%
自分が評価している側、というようにとらえられてしまわないか不安なよう。「チャットでのやりとりばかりになり、褒めるところを見つけにくくなった」(34歳・IT)と、テレワークで苦手になった人も
Q 相手を褒めることは職場の人間関係をよくするひとつの方法だと感じますか?
なんと95%もの人から「褒めの効果はある」とのお答え。「褒めることは、職場のコミュニケーションのよいきっかけになっていると思います」(42歳・事務)。これは、褒め上手になるしかないのでは!
2.ぺこぱ 松陰寺太勇さんに聞く!自分も相手も心地よくする “褒めニケーション”ルール
よいことだけでなく、ネガティブをもポジティブに覆してきた芸人・ぺこぱ松陰寺さん流の“褒め方”とは?
お笑い芸人・ぺこぱ
松陰寺太勇さん
しょういんじ たいゆう●1983年11月生まれ。アルバイト先で出会ったシュウペイとぺこぱを結成。「M-1グランプリ2019」で決勝に進出し大ブレイク。「ぺこぱポジティブNEWS」(テレビ朝日)など、レギュラーTV番組多数。
バイト時代、俺が見る後輩は絶対伸びるって言われてました
自分のことを褒め上手だと思ったことはないと話す松陰寺さん。けれど、バイト時代は後輩を育てることに定評があったのだとか。
「新人の子にマンツーマンで教えてました。できるまでやってもらって、最後にはすごく褒める。それだけで成長してくれるんですよ。何かを注意したいときも、褒めってかなり役に立ちますよね。僕もネタ見せのとき、よくない点だけ言われた経験がたくさんあります。もちろん指摘はありがたかったけれど、いい点も一緒に言ってもらえるとやっぱり嬉しいですよね。同じ指摘でも“あそことあそこは面白かった、でも最後ちょっとつまずいちゃったかな”みたいな言い方のほうが、いい。“ダメだった”ではなく、“よかったものがさらに2倍3倍よくなる”というふうに伝わりますからね。注意するときこそ、褒めるべきタイミングだと思いますよ」
わざとらしくなりそうで褒めるのが苦手……。そんなBAILA読者のお悩みに対して、松陰寺さんは“ながら褒め”をおすすめ!
「“こいつ褒めにきたな”って思われたくないってことですよね。じゃあもう、逆に目を見ないこと! 書類に目を通しながら、ページをめくりながら、運転しながら、“ついでに言ってる感”を出すんです。この“ながら褒め”を会得すれば、わざとらしさは軽くなるはず」最後に、褒めるポイントの探し方について聞くと……?
「褒めるところがまったく見つからないんだったら、無理しなくていいと思いますけどね(笑)。でも、少しでもいいところがあるならふくらませて褒めればいい。たとえば“いいところ:悪いところが2:8だな”と思う相手なら、心の中で5:5にしてあげて、褒める。そもそも人間は悪いところのほうが目につきやすいものです。でも、悪いところって、ひっくり返せばいいところ。だから逆側から見て、いいところにしてあげる。雑なやつはその分“仕事が早い”し、行けるタイミングで営業をかけられない人は“人当たりがいい”。食べ方が汚い人だって“ワイルド”と言ってしまえば褒め言葉! それでも褒めどころが見つからない、だけど褒めたい……というときは、“何かよかったわ”と曖昧に褒めて、“何がよかったかは明日までに考えとくわ”って言っちゃえばいいんじゃないですか? とにかく褒めたい! という気持ちだけ伝えるのもありだと思いますよ」
人を褒めることは自分のためにもなりますか?
結果、必ず自分の仕事に返ってくる
「“頑張りを見ていてくれる”と思ってもらえれば信頼関係が築きやすくなるし、褒めることは“自分もできているかな?”という振り返りにもなり、気も引き締まる。相乗効果で自分の仕事もよくなるはず」
褒められたときはどうしたらいいですか?
まずは「ええっ⁉」って驚け!
「自信をつけようと褒めてくれているのに、謙遜するのはもったいない。受け入れるのが難しいならまず驚く。“自分じゃ気づかなかったです!”とリアクションするのも◎。褒めがいのある人になろう!」
MY褒めニケーションルール
1 まずは伝聞で褒める
「“〜さんが言ってたけど……”と、人から聞いた相手のいいところを伝える。ちょっと大げさに。“前よりよくなったけどもっと頑張ってほしい”と聞いていたなら、“前よりよくなったって言ってたよ!”でOK。そしてさらに、自分で褒めれば効果絶大!」
2 自信がない人には結果を褒める
「“過程を褒めろ”といわれていますが、僕は自信がない人にほど結果を褒める。“これでいいんだろうか?”という不安を払拭するには、完成したものを褒めるのがいちばん。逆に、注意するときは取り組み方に言及。修正の仕方がわかりやすいですから」
3 褒めの香りを背中に残しながら去る
「後輩を褒めるときは話の入りで褒め、話の終わりにまた褒めるサンドイッチ方式です。べた褒めすると、“裏があるかも”と不安になる子も多いので。最後は相手のリアクションは見ず、背中に褒めの残り香を漂わせながら去る。これがちょうどいい!」
3.職場における“褒めニケーション”ケース&スタディ
褒めたい気持ちはあるのに、うまく褒められない…そんなあなたへ。実際どうやって褒めればいいの? 褒め下手さんあるあるなお悩み事例に、褒め上手なお二人がアドバイス!
イラストエッセイスト
犬山紙子さん
エッセイストとして多数の連載を持つほか、コメンテーターとしても活躍中。著書に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)など。
リクルートエージェント カスタマーサービス3部 部長
中村果代さん
転職エージェント、カスタマーサービス部門の部長として約75人をマネジメントしている。リクルートエージェントは、仕事について表彰する機会や、褒め合うことも多いそう。
【To 職場全体:CASE1】Q 褒めたいと思ってもどこを褒めたらいいかわからないし、タイミングもわかりません(30歳・メーカー事務)
A
相手の努力していそうなところに目を向けてみては(犬山さん)
「結果ではなく、努力を褒める。ふと見かけたときに頑張っていたこと、たとえば“集中して企画書作ってたね!”とか、小さなことでもいいと思います」
「ありがとう」のタイミングで事実とセットで伝えてみましょう(中村さん)
「感謝を伝えるときに“〜まで確認くださるなんてすごいですね!”と一緒に褒めると、自然な褒めの流れになりますよ」
褒めはとにかく鮮度が大事! by 犬山さん
「褒めは寝かさない。私は素敵だと思ったら、すぐ伝えるようにしています。1カ月後に伝えても、本人は“いつの何の話?”とピンとこないかも。その場ですぐ伝えれば、タイミングに悩む必要もありません。いいと思ったらすぐ、です!」
【To 職場全体:CASE2】Q テレワーク中にメールやチャットで褒めたいとき、感情や“褒めている感”を文字に載せるのが難しい(36歳・食品メーカー)
A
文書の最後にさらりと短くつけるくらいが心地いいはず(犬山さん)
「むしろ文章は短めのほうが重くなくていいかも? ほかの用事で連絡したときに、最後2行くらいでさらりと具体的に褒めるのが自然だと思います」
言葉に悩むよりスピード優先でOK(中村さん)
「すぐに伝えられるのがチャットのいいところなので、“すごくよかったよ! 今度会ったときに詳しく言うね!”くらい速さ重視でいいと思います」
褒めニケーションは練習あるのみ by 犬山さん
「みんなきっと最初は褒め下手だと思うんです。私もうまくできなくて、駅ですれ違う人の褒めポイントを探したり、身近な人に伝えたり、練習しました。その成果か、褒めが習慣化して、褒めモードに入りやすくなりました」
【To 職場全体】Q 相手の見た目や持ち物を褒めたいとき、何がOKで何がNGなのか。細かいところまで見ていると引かれそうだし…(40歳・IT系)
A
「変えたね」ではなく、そこにある事実を褒める(中村さん)
「“ネイル変えたね”など、変化の指摘は観察されている印象を持たれるかも。“ネイル可愛いね”など、そこにある事実のみを褒めて」
それを選ぶ相手のセンスに落とし込んでみて(犬山さん)
「容姿の“持って生まれたもの”は触れるべきではないですね。持ち物はそれ自体を褒めるのではなく、“それを選ぶあなたのセンスが素敵!”だとより◎」
【To 取引相手】Q 特にはじめましての相手には、褒め言葉がわざとらしく聞こえていそうで心配になります(34歳・製薬会社)
A
無理して褒めようとしないほうがベター(中村さん)
「“話を聞く”から始めましょう。会話から相手のよさを探すぞ! と聞き役に回り、本当に心が動いた瞬間に褒めればきっと自然です」
知ったかぶりして褒めるのを避けてみよう(犬山さん)
「知ったかぶりの褒めだけはモヤモヤの原因になるかも。相手本人や会社のことで、よく知らない部分には触れずに褒めよう!」
お世辞だって本当は悪くない by 犬山さん
「“噓をついているみたい”と気にする方もいるようですが、お世辞は“雰囲気をよくしたい”という善意によるものなので、何ひとつ悪いことじゃないですよ! 極端な太鼓持ちにならなければ気にしなくていいと思います」
【To 上司】Q 素敵だな、すごいなと思った上司の行動を素直に伝えたいが、「上から目線」「馬鹿にしている」と思われてしまいそうで…(39歳・商社)
A
「自分がどう思ったか」を素直に伝えるのが◎(中村さん)
「いい悪いを評価するのは避け、“素敵には触れずに褒めよう!”のように感想を伝えると◎。管理職になると褒められる機会が減るので、どんどん褒めてくれると上司側も嬉しいです(笑)」
「これから真似させてもらいます!」と言ってみる(犬山さん)
「目上の方に使いやすいワードは“真似させていただきます”と“勉強になりました”です」(犬山さん)
【To 後輩男子】Q 褒めたいことがあっても、セクハラととらえられたり、異性として意識していると思われないか心配になってしまう(36歳・食品メーカー)
A
褒めるときは、男性であるがゆえの部分以外を(犬山さん)
「男らしさ、女らしさのフレームを外して褒めること! “○○男子だね”などの言葉は褒めのつもりでも嫌な気持ちになる人もいるので注意」
自分が言われたら嫌なことは、褒めでも言わない(中村さん)
「性別にとらわれず、自分が言われて不快な話題は、後輩男子にもNGだと考えて。恋愛がらみの話題もよほど親しい場合以外は避ける」
褒めができる人は伸びる by 中村さん
「褒める人=相手のいいところに気づける人。観察して吸収できる人が多く、成長も速いイメージがありますね。また、褒める習慣があると、自分のいいところにも気づきやすくなるので、強みを伸ばすことにもつながりますよ」
【To 同僚、後輩】Q できる後輩がいて、チームとしてはありがたいことで本当は褒めたいのに悔しさや「なんで自分にはできないんだ」という気持ちが先にきてしまいます(31歳・マスコミ)
A
嫌みったらしく、自虐につなげないのが大事(犬山さん)
「褒めたい気持ち、素敵です! “私にはできない”と卑下しつつ褒めたり、早く出世する同僚に“コミュ力あるよね”というような、意地悪ともとれる表現をしなければ大丈夫!」
褒めとセットで、できる理由を聞きに行ってみては(中村さん)
「褒めとセットで“何でできるの?”とコツを聞いて、自分の糧にする! 気持ちの折り合いもつくし、成長もできます」
褒めニケーションは社内の潤滑油 by 中村さん
「褒めは、チームの雰囲気をよくしてくれる潤滑油。褒められて“チームの役に立っている”と実感が持てると、居心地がよくなり、安心して仕事ができますよね。さらに、“強みを言語化する”という意味でもとても大事です」
イラスト/二階堂ちはる 取材・原文/東 美希 ※BAILA2023年5月号掲載