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【中間管理職はつらいよ〈まとめ〉】「平成」育ちの私たち、「昭和」も「令和」もどっちもわかるからこその苦悩!

自分が若手の頃は、上司や先輩たちにしがみつくようにがむしゃらに働くことが正解だと思って頑張ったこともある。でも、だからといって今の後輩にそれを押しつけるのがいいとは思わない。けれど、さらっとしすぎている後輩を見るとそれはそれでもやもやする…。そんなバイラ世代ならではの、時代とともに移り変わる価値観の“中間”で働く生きづらさについて考えてみました。

目次

  1. 1. バイラ読者は今どんな葛藤を抱いている?
  2. 2. 実は平成こそ、激動の時代。 まさに“価値観の変換期”に育った世代
  3. 3. マンガから見る働く女性の変化

1. バイラ読者は今どんな葛藤を抱いている?

アンケートの結果、はざまで悩む読者多数!

7割以上がいわゆる昭和っぽい上司、また今どきの若者の、どちらとも価値観が異なると感じた経験がある様子。われわれは昭和と令和、二つの相反する価値観のどちらにも属さない……!?

中間管理職はつらいよ

Q.上司と価値観が異なると感じた経験は?

とてもある34% どちらかといえばある52% どちらかといえばない13% ない1% 

Q.後輩などの若者と価値観が異なると感じた経験は?

とてもある30% どちらかといえばある43% どちらかといえばない21% ない6% 

Q.自分の価値観は「昭和」と 「令和」のどちらに近いですか?

昭和18% 令和36% どちらともいえない46% 

【2022年10月6日〜10月11日、BAILAメルマガ会員にアンケート。29〜42歳の67名が回答】

11月28日発売のBAILA2023年1月号では、バイラ世代ならではの、時代とともに移り変わる価値観の“中間”で働く生きづらさについて考えてみました。詳細が気になる人は本誌をチェックして!

昭和についていけません…

昭和についていけません…

バブル時代を経験している上司たちは、基本、体育会系。残業、休日出勤は美、性善説で成り立っているような勤務体制
(37歳・コールセンター事務)

飲みにケーション重視。そしてお酒が入ると「感情もって仕事してるやつはおらんのか? 今の若いやつらはハートがない、ハートが」とのお言葉
(30歳・百貨店)

愛社精神がかなり強く、会社にすべてを捧げている感じ
(31歳・飲料メーカー企画)

出社してこそ、という考えを持つ人ばかり。どんなに在宅勤務での効率向上を訴えても考えを改める気がない
(34歳・商社)

気合と感情でこの世の中の大半はうまくいくと思っている。工夫や新しいやり方を考えることなく、とりあえずたくさんやれば成果が出せると思っていて、現場が振り回される
(40歳・代理店)

令和についていけません…

令和についていけません…

20代の後輩は皆、出勤時間ギリギリに席に着き、定時のチャイムとともに即行で退社していく
(36歳・製造事務)

仕事とプライベートを完全に切り離して考えていると思う。笑顔で挨拶しあっていても、どこまでもドライな関係
(35歳・小売業)

やり方が決まっている仕事も柔軟に自分なりに新しい手法を取り入れたりしていて、自由
(35歳・事務)

TikTokとユーチューバーのノリがわからない。正直、楽しさが理解できません
(31歳・電子機器メーカー海外営業)

仕事に対しての考え方がいい意味でも悪い意味でもかなり軽い
(33歳・外資系美容メーカー)

チルって何ですか?
(36歳・サービス)

はざまでもやもやしています

はざまでもやもやしています

後輩は上司に直接思ったことをストレートに発言するので、隣で冷や汗をかくことがしばしばある
(31歳・旅行代理店)

飲み会をしたがる上司と行きたくない後輩たち。お互いもう少し相手に気をつかえばいいのに…
(41歳・損保事務)

昭和な上司と令和な後輩は、平成の私たちなら自分たちのことをわかってくれると思っている。どちらからも悩みを相談され、板挟みになることが多い
(37歳・金融)

上司は後輩に仕事を振ろうとするが、後輩は「なんで自分がその仕事をしなければならないんですか」と私に訴えてくる
(38歳・人材)

身を粉にして働く上司と、自分本意な後輩の間に挟まれる。私はただ、皆が温和に過ごせるよう配慮するのみ…
(38歳・薬剤師)

残業を減らしたい上司と、早く帰りたい後輩と、帰れるなら早く帰りたい中堅の私。それでも急な仕事に対応するのはいつも中堅•管理職であるわれわれ世代
(34歳・製薬メーカー営業)

2. 実は平成こそ、激動の時代。 まさに“価値観の変換期”に育った世代

個人の幸せを考え、実践する転換期が平成の30年だった!

お話を伺ったのは…

博報堂生活総合研究所

吉田裕美さん


上席研究員。アートディレクター。’04年に博報堂へ入社。マス媒体のディレクションを経て、現職へ。バイラ世代の40代。

字面だけを見ると穏やかなイメージの平成ですが、この間に社会も、経済も、自然環境も激動し、個人のライフスタイルや生き方への考え方も大きく揺れ動きました。この時代に成長し、社会に出たバイラ世代は、まさに新旧の価値観の間にいると言えます」と吉田さん。最初の転換期は平成9~10(1997~1998)年頃。

平成に入るとすぐに、バブル経済の崩壊、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件などが起こり、それまであった国や社会への信頼が徐々に失われていきました。そして平成9(1997)年には消費税が5%に増税。世帯収入はこの年をピークに下降します。さらに翌年、大手金融機関の再編がありました。この頃にはすでに世帯数で共働きが専業主婦を上回っており、女性が働くのも当たり前に

平成半ば~後期の2000年代に入ると、家族構成や総人口の面でも日本は大きな曲がり角に突入。そして、世界の動きと私たちの生き方も如実に連動するように。     

「平成初期には総世帯の中で多くの割合を占めていた『夫婦二人と子ども二人』からなる標準世帯。ところが平成17(2005)年には一人暮らし世帯が標準世帯に迫るまで増え、その後逆転平成20(2008)年をピークに日本の総人口は激減し、少子高齢化社会も進行。同年に起きたリーマンショックは日本も影響を受けました。さらにはiPhoneの日本版が発売になり、この頃から個人が情報を収集・活用するようになりました。人々が不安定な経済環境の中で安定をつかもうと模索していた時代です」       

そして平成後期になると、終身雇用などの従来の価値観は崩壊。

「2010年代は、東日本大震災などの自然災害が勃発しました。経済が伸び悩む状況にも慣れ、人々の考え方も国へ頼るよりも個人がどう生きるかへと完全にシフト。そして“クリスマスといえば高級ホテルでディナー”というような、非日常的な幸せを追求する昭和の後期的な暮らし方は消えうせ、身のまわりの小さな幸せを大事にする“自足”の時代となりました

様々なことが起こり、平成は価値観の大きな変換期だったからこそわれわれは“どっちもわかる”状態に。

激変した平成の間に、現実の厳しさを痛感して育ったのがバイラ世代。かつて昭和世代が刷り込まれていた滅私奉公的な働き方や、結婚をして出産しなければいけないなどの慣習があったことを理解はしているものの、今の令和につながるような、“幸せのかたちは人それぞれ”と考えられる側面も持ち合わせている世代と言えます」

『生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化』

『生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化』
博報堂生活総合研究所(著)
日本経済新聞出版社 2200円

2022年の「生活定点」から興味深いデータをピックアップ!

博報堂生活総合研究所が、1992年から2年に一度、調査を行っている「生活定点」。2022年に30周年を迎えました。調査結果を分析すると、女性たちの年代別の考えの違いがわかります。では、バイラ世代はどう見えるのでしょう?

「仕事を基本的に好きで続けている50代と、そうでもない20代との間でどちらとも言えない印象が。オンラインショッピングなど生活密着型のITツールは、働き盛りのバイラ世代が使いこなしていますね。そして恋愛や結婚に関しては、とても寛容です。これは旧来の価値観を理解している分、“必ずしもそれが正解とは限らない”と実感しているとも読み取れます。夫婦の役割分担の理想と現実のギャップの激しさからも、この世代は様々な“はざま”にいながら、より快適な生き方を模索していると思います」(吉田さん)

Q.基本的に仕事が好きなほうである【有職者の回答】

20代:34.7% 30代:46.9% 40代:53.5% 50代:56.2%

【仕事観】仕事が「大好き」と「そうでもない」のはざまに

Q.オンラインショッピングを利用している

20代:80.3% 30代:82.4% 40代:80.1% 50代:68.8%

Q.料理レシピサイトやブログが私の「料理の先生」である

20代:39.0% 30代:46.4% 40代:48.0% 50代:36.7%

【ITツールとの距離】オンラインを生活に上手に取り入れている

Q.未婚で子どもがいてもかまわないと思う

20代:32.3% 30代:53.9% 40代:44.1% 50代:37.3%

Q.同性同士が結婚しても かまわないと思う

20代:66.2% 30代:70.5% 40代:63.2% 50代:51.7%

【恋愛・結婚観】新しくて自由な価値観を尊重する

Q.妻は家庭内、夫は家庭外の役割を担う(理想)【既婚者の回答】

20代:14.3% 30代:12.8% 40代:22.1% 50代:17.8%

Q.妻は家庭内、夫は家庭外の役割を担う(現実)【既婚者の回答】

20代:52.4% 30代:61.9% 40代:66.2% 50代:68.2%

【夫婦の役割分担】理想と現実のギャップが激しい

ほかにも面白いデータがたくさん‼

>>データ・コミック
>>生活定点2022

公式サイト「生活定点」では30年分の生活者観測データ約1400項目や、データをもとにしたコミックを無償公開中

【Z世代のファッションアイコンからのメッセージ】Z世代から見た平成世代は「柔軟な人が多いイメージ」

「令和」な20代は何を考え、私たちをどう思ってる? モデル・タレントのミチさんに「平成世代の女性」についてどう感じているか聞きました。

ミチさん

モデル、タレント

ミチさん


みち●1998年生まれ。SNSのフォロワー総数は150万人超え。弟のよしあき(22歳)とともに同世代から絶大な支持がある。
 

今、24歳ですが、30代~40代の方々にギャップを感じることはあまりないです。いちばん身近なのは私と弟のマネージャーさん(30代)。私たちの感覚を理解し、その延長線上で接してくれていると感じます。

個人的にいつも意識しているのは「自分で自分を大切にする」ということ。この気持ちはマネージャーさんをはじめ、バイラ世代の方にも大事にしてほしいなと思います。いつも頼りにしていながら生意気かもしれませんが(汗)、周りに気を配り、個人的なことは後回しにしがちな方が多いような気がするので……。もっと自分を大切にして大丈夫です!と伝えたいです。

私自身の生活をお話しすると、やっぱりSNSは身近な存在。中学生でTwitter、高校1年生くらいからインスタグラムを始めました。TikTokではダンスだけでなく海外の情報やニュースのキリヌキなども見ていて、よかった動画はそのまま友達のDMにリンクを貼りつけてシェア。最近は「映えないSNS」で話題のBeReal.にもハマリ中。

友達との時間が何よりも大事で、会うと家族や恋バナなどいろんなことを話します。恋愛&結婚は形式にはまりたくないと思っている子が多いかも。ウエディングドレスや白無垢に憧れがある私は、少数派(笑)

40代後半の母は私に「大学を出て丸の内で働いてほしい」と思っていたようですが、今は応援してくれていて世代間ギャップもあまり感じません。ただ、さらに上の世代の中には現代の社会問題に関心がなく理不尽に批判する方もいて、価値観の違いに戸惑うことも

でも30代、40代の方々がこういう上の世代と私たちを調整してくれているから、イラッとすることや大きくぶつかり合うことがそこまでないんだと思います。私もそんなバイラ世代のバランス感覚を見習いながら常に価値観をアップデートして、下の世代にも寄り添える大人になりたいです。

中間管理職はつらいよ

【平成を働いてきた同世代からのメッセージ】はざまの世代だからこそ、いいとこ取りができる!

平成を働いてきたバイラ世代のドラマプロデューサー 祖父江里奈さんは、「昭和」と「令和」の“はざま”で何を感じている?

祖父江里奈さん

テレビ東京ドラマ室プロデューサー

祖父江里奈さん


そぶえ りな●1984年生まれ。ドラマ24枠の作品を手がけている。現在は「孤独のグルメ」最新シリーズが放送中。

私が入社した2000年代後半のテレビ局は、まだまだ縦社会で。「生放送の前日はあえて徹夜で飲み、本番に臨むのが粋」みたいな風潮もありました。「寝ろよ」って話ですよね。私も頭ではそう思ってました。でも現場の体育会精神に適応せざるを得なかった部分もあり、それが社会人の基盤をつくる時期にぶつかり……。今も上司から深夜に飲みに誘われても顔を出すし、いい仕事のためなら休日返上もいとわない。“頑張るぞ!”寄りの精神は、昭和だと思います

ただし昭和では当たり前だったイジリ、パワハラ、モラハラは、完全に負の価値観だから、引き継ぎたくありません。今、私がやっているドラマプロデューサーという仕事は、それ自体が中間管理職みたいなもので、縦横斜めと、あらゆる人と人とを“つなぐ”のが役割。仕事を進めるなかで上司に違和感を覚えたときは「それ今の時代では、イケてないかもしれないです~」と伝えています。強く否定はしないように(笑)。

一方で若い世代は損得勘定に敏感で、自分にメリットがないと動かないことが多いなあと感じることがあります。「意味あるんですか?」と聞かれたときには「キャリアアップになるかもよ」と背中を後押し! 一見無駄そうなことにも意味はあるし、もし違うとわかっただけでも、そのことがメリットじゃないですか。さらに予想外の展開から楽しいモノが生まれる経験も味わっているので、若い世代にも計算抜きで挑戦してほしいんです。

……と、昭和上司と令和の若者の間で思うところもありますが、私も含めたバイラ世代ってお得かもしれません。根性論で誰かを動かさないし、損得勘定だけで人づきあいもしない両方のNG部分がわかるからこそ、バランスよく。“いいとこ取り”で人や社会と関われてよかったなと思っています。

3. マンガから見る働く女性の変化

昭和から令和にかけて、私たちの仕事観はどう変わった? 名作マンガからその変遷をひもとく! 

お話を伺ったのは
トミヤマユキコさん

漫画研究者、ライター

トミヤマユキコさん


とみやま ゆきこ●1979年生まれ。早稲田大学法学部卒業。同大学院を経て、東北芸術工科大学芸術学部文芸学科准教授。漫画や小説から現代を考察する著書多数。

「女も働けばいいことがある!」そう思わせてくれた『悪女(わる)』

まずはバイラ世代の上司たちにあたる世代が、新入社員だった頃の作品から。

「『悪女(わる)』は男女雇用機会均等法が施行されたばかりの時代を背景に、女性が働くことでレベルアップする姿を描いた作品です。この世代は恋にも仕事にもまっしぐらで、そのけなげに努力する姿は、今、私が教えている令和の大学生に読んでもらっても受けがいいんです。

彼女たちは、昭和の上司やバイラ世代に比べると仕事で自己実現したいという欲がさほど強くないですし、むしろ失敗しないことがなによりも大事だと考えています。でもこの作品に通底する“頑張れば報われる”感覚は好きみたいですね。ヒロインのミスも、成長につながるとわかっているから、安心して読めるようです。

今あらためて読み返してみると、当時は女性も働くことで男性のように出世できるかもしれないという期待感があり、仕事に対して前向きに頑張るロールモデルが求められていたとわかります」

『悪女(わる)』

『悪女(わる)』
深見じゅん著 講談社
全37巻 電子版 各528円
おちこぼれ新入社員の麻理鈴が、ひと目ぼれの恋の成就のために社内出世を目指す物語

1988〜 働いて出世すれば自由が得られると思われていた頃

『悪女(わる)』深見じゅん

『悪女(わる)』深見じゅん
男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。女性の仕事には夢と可能性があった!

『美少女戦士セーラームーン』は仕事観もジェンダー観も先取り

1991年に『なかよし』で連載が始まったこの作品は、戦う=働く女性の姿はもちろん、理想の男性像の描き方が変化するひとつのターニングポイントにもなっているとか。

「セーラームーンたちは言ってみれば女子が多い職場で働いているわけですが、“女の敵は女である”というような描かれ方はしていないんですよ。“女が多くて風通しのいい職場だってある”という描き方をしているところに価値観のアップデートを感じます。

それから注目したいのは、王子様キャラクターとして描かれるタキシード仮面。彼は女性の手柄を横取りすることなく、サポートに徹しています。とはいえタキシード仮面は弱々しいわけではなく、彼女たちの戦いを支え、勝つ術も教えられる。今のジェンダー観にも通ずるような、新しい男性像ですよね。

理想のパートナー像や職場、そして働くこと自体に、今でも夢を持てる作品だと思います」

『美少女戦士 セーラームーン』

『美少女戦士 セーラームーン』
武内直子著 講談社
完全版 全10巻 各1650円
セーラー戦士に選ばれ、変身する中学生・月野うさぎ。仲間とともに戦い、成長していく

1991〜 女性同士が助け合いながら働く世界が登場

『美少女戦士セーラームーン』 武内直子

『美少女戦士セーラームーン』 武内直子
うさぎをはじめ、セーラー戦士を助けるタキシード仮面。女性の邪魔をせず働く姿は、新たなロールモデルを提示

1巻p.31 ©Naoko Takeuchi

『ハッピー・マニア』と『働きマン』は氷河期世代の二極化を描く

バブル崩壊後の1990年代半ばから2000年代の女性たちのリアルをすくい取ったのが『ハッピー・マニア』と『働きマン』。 

「前者が1995年、後者が2004年と発表時期はずれていますが、どちらもヒロインは同じ就職氷河期世代であると読み解けます。

『ハッピー・マニア』のヒロインは定職につかないまま恋愛に夢中になり、刹那的に生きている。

一方で『働きマン』の主人公は、記者の仕事が自己実現に直結。就活をくぐり抜けたのはいいけれども、少数精鋭で仕事がキツい上に、上司からは“自分たちの感覚がわかる最後の世代”としてタスクを投げられる。後輩は、仕事よりもプライベート優先でノリが違う――と、このあたりは、今のバイラ世代と重なる感覚かもしれません。

ちなみにどちらの作品も令和の学生には衝撃的なようで。『ハッピー・マニア』は、計画性のないヒロインの生き方が怖いという声も(笑)。規定路線から外れたからこその自由な生き方を面白おかしく楽しめたのも、この時代ならではなのかもしれないですね。

そして『働きマン』のヒロインに描かれるような、職場の男性たちに負けじとバリバリ働く姿には、スポ根的に仕事をする感覚が支持されていた時代の空気感が。やっぱりこういう働き方に憧れる学生は、減少傾向にあると感じます。

ともあれこの2作は、同じ時代を生きる女性の労働観がコインの裏表のように描き分けられているのがすごく面白いんですよね」

1995〜 従来の仕事観が崩壊し始めた頃。自由を選ぶ人も

『ハッピー・マニア』

『ハッピー・マニア』
安野モヨコ著 祥伝社
新装版 全8巻 各792円
最高の幸せを求めて、恋愛に全力疾走する20代女性・重田カヨコの暴走ぶりを描く!

2巻p.50 ©安野モヨコ/Cork

『ハッピー・マニア』 安野モヨコ
日本経済の凋落が一気に進んだ1990年代半ば以降が主な時代背景。カヨコは仕事への意欲は低く、己の幸せ=恋愛を追求していく

2004〜 男スイッチを入れて働いていた頃…!?

『働きマン』

『働きマン』
安野モヨコ著 講談社
全4巻 電子版 各660円
30歳までに週刊誌の編集長になるのが目標の松方弘子。奮闘ぶりがリアルなお仕事漫画

1巻p.27 © Anno Moyoco / Cork

『働きマン』安野モヨコ
就職難をくぐり抜けた人は、少数精鋭の激務が。“女性だから”と優遇されていた職場のローカルルールなども崩壊した頃。だからこそのスイッチに、当時の時代の空気が伝わる!

身の丈の幸せを前面に出した『プリンセスメゾン』

いわゆるバリキャリっぽい生き方が人気だった風潮から少しずつ風向きが変わり、2010年代以降の働く女性の新たな生き方を提示したのが『プリンセスメゾン』。平成の間に成長し、社会に出たバイラ世代にとっても、共感できるポイントは少なくないはず。

「主人公はチェーン系の居酒屋でコツコツと働く女性。彼女が掲げる“自分のためにマンションを買う”という目標は、働くことを大事にしつつ、身の丈に合った幸せに喜びを感じたいという意識の表れだと感じます。

ヒロインの生き方は、経済の低成長がデフォルトになってきた時代に、工夫をしながらいい意味で“そこそこ、ほどほど”に生きている、働く女性のロールモデルを描いていると思います。

それから男女の関係に、恋愛が重大事件として介在しないのも今っぽい。男性キャラクターも登場しますが、恋人とは違う、バディ的な立ち位置になっています」

『プリンセスメゾン』

『プリンセスメゾン』
池辺葵著 小学館
全6巻 各607円
年収250万ちょっとの独身女性・沼越幸が「自分だけの持ち家」を探し、自立していく

2014〜 自分が信じる等身大の幸せを追求する時代に

1巻p.61 ©池辺葵/小学館

『プリンセスメゾン』 池辺葵
確実な夢を目指し、外野からの声にも心折れずに淡々と働き続ける沼ちゃんは平成を生きてきた女性の等身大な姿といえそう

1巻p.90 ©池辺葵/小学館

ゆるキャリの心地よさ『しあわせは食べて寝て待て』

そして2020年代。女性の仕事観はさらに柔軟なものへとシフトチェンジ。

「『しあわせは食べて寝て待て』は、正社員を続けられなくなった30代独身の主人公が、そのことを転機に新たな豊かさを見つける話。

週4日パート、お金はない、住まいは古い団地。でも地元のコミュニティはある......と、まるで老後を先取りしたかのような生活を送りますが、これがとても心地いいんですね。

もちろんまだ、キャリアや仕事をとことん突き詰めたい人もいると思うので、そういった層が夢を持てるお仕事マンガがあってもいいとは思いますが、“明るく元気に働くことこそが幸せ!”と、ひとくくりに言えないのが今の時代。この作品は、現代の仕事への向き合い方をリアルに表現していると思います」

『しあわせは 食べて寝て待て』

『しあわせは食べて寝て待て』
水凪トリ 秋田書店
1~3巻(以下続巻)各748円
正社員を辞めてパート暮らしとなった、38歳の麦巻さと子の新しい生活と幸せを描く

2021〜 こんな働き方もアリ! 女性の仕事観は多様化へ

1巻p.5 ©水凪トリ(秋田書店)2021

『しあわせは食べて寝て待て』水凪トリ
さと子のように働き方が変わることもあり得る時代。だからこそ、どう生きるかが問われる時代に。彼女の団地スローライフは、令和の働く女性の新たなモデルとなり得る!

イラスト/サレンダー橋本 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2023年1月号掲載

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