「できない」と言いにくい、言っていいのかわからない。結局、言えない…というあなたへ。そもそも「できません」って言えたほうがいいんでしょうか?という疑問に、犬山紙子さんがアンサー。家事や育児、介護など家族のことについて、なぜ「できません」が言えた方がいいのか考えます。
家族の視点から…
イラストエッセイスト
犬山紙子さん
女性の生き方やコミュニケーションなどについて発信。児童虐待防止チーム「#こどものいのちはこどものもの」を発足。
「できません」を受け止め合える関係は人生をより持続可能なものにする
家事や育児、介護などは、できなくてもやらなければいけない現実があり、家族の誰かが無理をしてしまうことも。でもそれは持続可能ではありません。「できません」を受け止め合える関係と、家族の「できません」を第三者の力を借りて解決する選択肢が必要です。
褒められたものではありませんが、私が「できません」を言えるようになったのは、20代で母の介護を経験し、無理をし続けて爆発したことがきっかけでした。精神的に追い詰められ、ある日、体が重くて起き上がれず、声を出すのもつらくなり「もう無理」とSOSを出しました。そうなるまで「私がやらないと」と自己責任論を自分にぶつけて、無理をしている自分に気づけなかった。無意識に無理をしてると、自分では無理してることに気づけないこともあるんです。心にはキャパシティがあって、それを超えると不調が出てくる。「自分さえ我慢していれば」という気持ちで乗り切れるものではありません。それ以来、追い詰められる前にどうすればよいか家族で作戦会議をするように。私は「できません」を言ったことで、それを受け止めてもらえる成功体験を積めました。相手に自分の「できません」が受け入れられたとき相手への愛情が増え、お互いに「できません」を受け止め合えると愛情が深まっていくように感じています。
犬山さんの「できません」の判断基準は?
❶睡眠時間
❷自分の時間
❸子どもと過ごせる時間
「私の場合は、一日7時間の睡眠と自分の趣味の時間1時間を確保したいです。仕事量に関しては、土日終日と平日の夕方以降は子どもと一緒に過ごしたいという基準も。忙しい週の翌週は多めに休みを取ったり、夫に『仕事が立て込んで寝る時間が取れないから、ちょっとこれ頼んでいい?』とお願いしたり。無理せず機嫌よく毎日を過ごすことが、最良のアウトプットにつながる気がします」(犬山さん)
取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2023年8・9月合併号掲載