先輩たちは自己肯定感とどんなふうに向き合っているの? 悩めるバイラ読者に壇蜜さんがアドバイス! 「冷え性を直して基礎体温を上げる方が生きる力になる」など、ユニークな考え方を伝授してくれました。
「またスキニー流行ってんな」くらいの感覚で受け流していい
自己肯定感よりも基礎体温を上げたほうが生きる力につながる
こういうブームって数年おきにやってきますよね。私が就職活動をしていた頃には“自己実現力”なるものが流行りました。あなたはどれだけ自分の目標を成し遂げることができるか。目標を定め、道すじを決め、努力しましょう、みたいなものが。私からすると、この自己肯定感ブームも「ああ、またそのサイクルが回ってきたんだなぁ」。言うなれば「なんかまた、スキニー流行っているんだ」くらいの感覚です。
だいたい、景気が悪いと腹もちのいいスイーツと自己啓発系の何かが流行るんですよ。カヌレとか、タピオカとか、自己肯定感とか。胃も心も手軽に満足感を味わえるものが。今の状況を自分でなんとかしなくちゃいけない、ならば手軽なもので間に合わせたいっていう流れです。でも、それは傷ついた自分に絆創膏を貼り続けているようなもの。貼っただけで傷が治るわけではない。よくなったような気がしているだけ。みんなが貼っているから安心するだけ。そもそも、心の濃度は人によって違う。すり傷なのか切り傷なのか、消毒ですむのか、縫う必要があるのか、傷も痛みも人それぞれなら治療方法だって十人十色なはずですからね。
私自身、過去には就活がうまくいかない人たちが手に取る本を読んだこともあれば、恋愛がうまくいかないときは「なんとかならないか」と恋愛指南書を開いたこともあります。人生うまくいかないときは、今の自分は仮の姿でポテンシャルを秘めていると思いたい。それを引き出すには自分一人の力では無理だからこそ、見たり、読んだり、誰かの話を聞いたり外側の情報に頼ろうとするんですよね。でも、結局のところ、自分一人で無理なものは誰かの力を借りても無理なんです。その証拠に私は何も変わりませんでした。それどころか、読めば読むほど人間向いてないなと思ったり、就職活動やめたほうがいいなと思ったり。結果、ただただ追い詰められただけでしたからね。
そんな経験から私が学んだのは、急に何かを欲しいと思ったところで簡単には手に入らない、そして、それはたいてい自分には必要なものではないということ。人生において“足るを知る”のは大切なことです。そのために、私は結婚した今も1・5人用の小さな冷蔵庫を使い続けているんです。賞味期限切れのものを整理して、必要なものだけをそこに入れる。「一応、取っておこうかな」が小さな冷蔵庫ではかなわないから、どんどんムダなものがそぎ落とされていく。その行動と思考は次第に身につき生活や人生にも反映される。冷蔵庫は自分を映し出す鏡。冷蔵庫の中が片づいていない人はたいてい人生も散らかっていますからね。
「こうなりたい」「ああなりたい」と意識高く生きる人を否定するつもりはありませんが、私自身は意識低い系のほうが幸せだと思っています。だって、意識高く生きるって、ありのままの自分より無理をしているってことじゃないですか。私たち、あと50年くらい生きるんですよ。そのままやっていけるんですかって話です。自分を高く見せるとか、大きく見せるとか、SNSで自分をよく見せるとかも、一刻も早くやめたほうがいいと思う。そこでしんどい思いをしている人はSNSよりもウーパールーパーがメダカを食べる動画とか見たほうがいい。生きているだけでよかったって、人間でよかったって、SNSで悩んでいる私はなんか違うかもってきっと思えるから。
弱っている人が多い時期に現れるブームに惑わされつらい思いをするくらいなら、冷え性を直して基礎体温を一度でも上げたほうがいい。そのほうが、流行りの自己肯定感トレーニングよりもよっぽど生きる力につながる。悩めるバイラ読者の皆さんにメッセージを届けるとしたら「よけろ、かわせ、あっためろ‼」。こういう時代だからこそ、妙なものたちから自分を守ってあげないとね。
●バイラ読者の皆さんに伝えたい「よけろ、かわせ、あっためろ!」
●意識高い系よりも低い系。そっちのほうが幸せだと思う
●今の自分の家の冷蔵庫の中を確認してみてください
壇蜜さん
1980年12月3日生まれ。秋田県出身。TBS系「サンデー・ジャポン」レギュラーなど多数のバラエティ番組、ラジオで活躍。著書『三十路女は分が悪い』(中央公論新社)が好評発売中。
撮影/イマキイレカオリ スタイリスト/野田奈菜子 取材・原文/石井美輪 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2021年4月号掲載
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