王道すぎない、一癖あるビターな少女漫画。
みなさまこんにちは、スーパーバイラーズ清水まやです。
学生の頃からずっと好きで、イラストや創作活動にも影響を受けた漫画家の先生が居ます。
池谷理香子先生です。
絵柄としてはぱっちりとした目と淡い色合いが特徴。下まつげの描写がとても好きで、アナログ画なんかを描く時はとても影響を受けました。
代表作は『シックス ハーフ』『微糖ロリポップ』『ハコイリのムスメ』など。
どれもちょっとした人間の心の揺れを上手く描かれているので好きな作品です。
現在は『テトテトテ』をCookieにて2022年9月号より連載中。今までとは打って変わった展開には目が離せません。
そんな池谷理香子先生の魅力を知ってほしい…とのことで本日は代表作。
『シックス ハーフ』
をご紹介いたします。
主人公の記憶喪失から始まる。拗れた家族と恋愛の再生ストーリー
記憶喪失から始まる家族愛×恋愛再生ストーリー
交通事故で記憶を失った高校2年生の詩織。
家に戻り兄と妹と暮らし始めるが、ギクシャク感は否めない。そして学校に復帰した詩織を待っていたのは、「ビッチ」などの悪辣な噂。
自分を溺愛する兄、それとは正反対に自分への嫌悪感を隠さない妹。交通事故で記憶を失った主人公の始める家族再生ストーリー。記憶を失う前の『自分』の痕跡を辿りながら行き着く先はーーー?
池谷理香子先生の作品の特徴なのですが、ぶっ飛んだ設定から物語が開始します。
今回は『バイク事故により記憶を失ってしまった』。
主人公、詩織には明夫という大学生の兄と、真歩という中学生の妹が居ます。
記憶のない詩織にとって明夫は「とんでもなく優しく過保護で母の代わりのような兄」。真歩は「なぜか自分のことを酷く嫌っている妹」。
一家の大黒柱である父親は一昨年に他界しているらしく、広い家はこの兄妹三人暮らし。記憶喪失で不安な詩織の心を癒し、埋めてくれたのはこの家族でした。
それまでの記憶のない詩織は、記憶喪失以前の痕跡をたどるうちに、自身の素行不良、妹との不仲、学校での悪評などいろいろな問題に直面します。
詩織にとって、記憶のない自分は他人のよう。そんな他人が起こした出来事に対して困惑しながらも、ひとつひとつかみ砕いて解決しようと奮闘します。
とにかく、全員が訳ありで本心から悪い人は居ないという印象。
例えば当初主人公を虐め、悪評を流していたチカも、本当は主人公の彼氏である開のことが好きで、その嫉妬から起こしたことであり、和解したあとは良い友達として詩織を支え続けました。
池谷先生は、本当は人のいい人たちにどこにでもある嫌な一面を描き、それを『嫌な人間』として描くことが上手いので読み進めるうちに自分にもこういった感情あったなと思うこともあります。
そして、誰も悪い人がいないのに『境遇』で拗れかえっているのが池谷先生の上手いところ。人の心理描写の落とし込みを描かせたとき、天才だと思っています。
詩織はふとした瞬間に、明夫と自分に血のつながりが無く、長い人生自分が明夫に対して片思いをしていたことを思い出します。
そして、明夫もまた『自分一人だけが母親との血のつながりが無く、心細かった家の中で一人優しく笑いかけてくれた詩織に長い間片思いをしていた』事実に気が付きます。
明夫にとって、亡くなった父の『家族としてうまくやってほしい』という願いが呪いに変わり、『父に代わり家を守るため、詩織への想いは封印する』に至ったことに気づきます。
・父としては詩織や明夫を苦しめるつもりもなく、ただ家族として当たり前のことを言った
・詩織は明夫が家族として見てくれない(本当はそんなことはない)ことを突きつけられた心因性ショックで記憶を失う
・明夫としては詩織が幸せになってくれればいいと思っている。そのためには兄に徹することが一番だと考えている
どうしてこうも拗れかえってしまっているのか。人間関係の落とし込みがリアル。作中のキャラクターが考えそうなことと行動が一致するのが池谷作品の素晴らしいところ。
これらを紐解いていくラストは必見です。
読了感もさっぱりとしているので、途中苦しいですがぜひ読んでほしい作品です。
ハッピーエンドほとんど。安心して読める池谷理香子作品。
今月ハマっているおすすめの漫画でした。
おそらく私が人生において一番影響を受けた漫画家が池谷理香子先生だと思います。
どの作品も途中苦しい展開のものが多いのですが、時折挟まれるギャグ描写などによってかなり緩和されるかなと思います。ちょっとビターな少女漫画が読んでみたい方はぜひ。
少し前の作品を集めたものになりますが、オンライン限定の読み切り集は働いている女性が出てくることも多く、短編集で読みやすいので通勤時間に如何でしょうか?
また来月おススメの漫画ご紹介させてください。
それではまたお会いしましょう~!