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19世紀末の美食家と料理人のドラマ『ポトフ 美⾷家と料理⼈』をレビュー【シネマナビ】

海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルが主演する、19世紀末の美食家と料理人のドラマ『ポトフ 美⾷家と料理⼈』をご紹介します。

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今 祥枝

今 祥枝


一年365日、映画&ドラマざんまいのライター、編集者。編集協力に『幻に終わった傑作映画たち』(竹書房)。

『ポトフ 美⾷家と料理⼈』

食への飽くなき探究心。美食家と料理人の人生と愛の物語

『ポトフ美⾷家と料理⼈』公開/12⽉15⽇(⾦)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

©2023CURIOSA FILMS-GAUMONT-FRANCE 2 CINÉMA


やわらかな日の光が差し込む厨房で、女性たちが料理を作っている。言葉は少なく、葉物を洗う音や肉や魚をさばく音、ソースをことこと煮込む音が響く。やがて皿に盛りつけるときの緊迫した瞬間を経て、ふっと空気がゆるむ。コース料理を提供する料理人たちは、この過程を繰り返す。一連の流れるような動作と料理の見事な出来栄えに、ただただ見入ってしまう。

『ポトフ 美食家と料理人』の舞台は、19世紀末のフランスの片田舎にある、森の中の瀟洒なシャトー。希代の美食家ドダンと、彼がひらめいたメニューを完璧に再現する料理人ウージェニーの物語は、冒頭から幸せな“美味しさ”がスクリーンからあふれている。

食を追求し、芸術にまで高めたドダンとウージェニーは、20年も一緒に働いている。設定から立ち場を考えると、ドダンのほうが主人のように感じられるかもしれない。しかし、ウージェニーの自由で独立した精神にこそ、この映画が真に心を動かす瞬間がある。

ドダンはウージェニーに何度も求婚してきたが、自立したプロフェッショナルで、自由を尊ぶウージェニーに結婚の意思はない。そんな彼女の考え方を尊重し、そばに寄り添うドダン。この二人の関係性が、ウージェニーの体調不良によって変化していくさまも、本作の大きな見どころとなっている。

ウージェニーを演じるオスカー俳優のジュリエット・ビノシュは、至福の輝き。しなやかで、芯が強く、大らか、そしてそこはかとなく漂うエロスの香りも。対するドダン役は、同じくフランスを代表する演技派俳優のブノワ・マジメル。ウージェニーがいとおしくてたまらないという愛情の深さを、切実に伝えていてぐっとくる。

『青いパパイヤの香り』や『シクロ』などで知られるベトナム出身の名匠、トラン・アン・ユンは、第76回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。一瞬一瞬が絵画のように美しく、詩情にあふれた映像世界は、せわしない日々の生活の中で、ほっと和むひとときを与えてくれる。

監督/トラン・アン・ユン
出演/ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメルほか
配給/ギャガ
公開/12⽉15⽇(⾦)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

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『PERFECT DAYS』公開/12月22日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか全国公開

©2023 MASTER MIND Ltd.

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配給/ビターズ・エンド
公開/12月22日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか全国公開

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配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 
公開/12月1日(金)より、全国の映画館で公開

イラスト/chii yasui ※BAILA2024年1月号掲載

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