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【市川紗椰の週末アートのトビラ】DIC川村記念美術館、休館前最後の企画展「西川勝人 静寂の響き」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第28回はDIC川村記念美術館で開催中の「西川勝人 静寂の響き」を訪問しました。

今月の展覧会は…「西川勝人 静寂の響き」

“愛する美術館の、休館前最後の企画展。新たな作品との出会いに思いが募る”

市川紗椰さん “愛する美術館の、休館前最後の企画展。新たな作品との出会いに思いが募る”

2024年8月の「DIC川村記念美術館、休館へ」というニュースは衝撃でした。千葉県佐倉市の広大な敷地にたたずむこの美術館は、私が学生時代から愛し、連載でも訪れた大好きな場所。運営企業の資産運用についての見直しが行われた結果、’25年での休館が決定(当初の1月が3月末に延長)。以降は縮小・移転を検討することが報じられています。

レンブラントからモネ、ピカソ、ポロックやステラまで、日本有数の収蔵品の価値の高さを誇る稀有な存在。とはいえ、公立ではなく一企業が運営する施設と考えれば、現実的な経営改善策なのかもしれません……けれど寂しい、寂しすぎる。

作品も空間も、ここでしか味わえないお気に入りがたくさん。特に、マーク・ロスコの大型作品を堪能できる常設の「ロスコ・ルーム」。薄闇の中から浮かび上がる色彩には訪れるたびどきどきします。ほかにも「ここに行けば会える」名作が数多くあり、遠出する楽しみがあり、本当に豊かな時間が流れていました。

移転や閉館してこの場所がなくなってしまうのも残念ですが、収蔵品が売却されて、私たちが見る機会が永遠に失われてしまう可能性があることが何よりも悲しい

館の行方を気にしながら訪れた、休館前最後の企画展。ドイツを拠点に活動する作家、西川勝人の初の回顧展には、休館を惜しみ多くの人々が訪れています。印象に残ったのは、アクリルを重ね奥深い色彩を表現した作品や、自然光の下で様々な表情を見せる白。

展示の仕方が考え抜かれているのは、やはり川村記念美術館ならでは。名作のみならず、初めての作品や新しい世界にも最良の環境で触れられることも魅力なんですよね。わざわざここに見に行くことで得られる豊かさを噛み締め、絶対また来る!と、思いを新たにしました。

自然光とランドスケープを取り込んだ空間で、彫刻が受ける光の変化のライブ感を楽しむ

市川紗椰 『静物』(2005年)。ドイツのレーム社が販売する18種のカラーアクリルガラスを組み合わせ重ねて、独自の色を生み出す。正面からとサイドからで変化する色彩に吸い込まれる。手前の立体彫刻は『フィザリス』(199 6年)、ほおずきのモチーフをクリスタルガラスで表現。

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

壁に展示されているのは、『静物』(2005年)。ドイツのレーム社が販売する18種のカラーアクリルガラスを組み合わせ重ねて、独自の色を生み出す。正面からとサイドからで変化する色彩に吸い込まれる。手前の立体彫刻は『フィザリス』(1996年)、ほおずきのモチーフをクリスタルガラスで表現。美術館の庭園の植物が窓から見える展示室と作品がマッチしている。

市川紗椰

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

西川勝人は1949年生まれ、23歳でドイツに渡り、現在はノイス市に在住。広々とした展示室に迷路のような腰壁を設けた空間構成は、建築にも携わる作家自身によるもの。自然光のもとに彫刻、インスタレーション、写真作品が点在して、雲の流れや時間によって変化する

市川紗椰2 『キオッジャ』(2023年)

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

腰壁の上に展示された彫刻『キオッジャ』(2023年)。展示をぐるぐる回って、様々な角度から眺めるのが楽しい

『静物』(2005年)

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

壁に設置された『静物』(2005年)をサイドから見ると、様々な色のアクリルガラスが層になっていることがわかる。視点による変化も楽しみたい

『秋』(2024-25年)

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

『秋』(2024-25年)は、会場で制作されたインスタレーション。百合など白い花々を敷き詰め、時間の経過による変容を見せる

作品をテーマにしたフィザリス(ほおずき)の形の和菓子

館内のお茶席(要予約)では、展覧会にちなんだ特別メニューが。作品をテーマにしたフィザリス(ほおずき)の形の和菓子。一日中楽しめる美術館で、休憩時間もアートにひたれる!

市川紗椰  レンブラント・ファン・レイン『広つば帽を被った男』(1635年)

常設のレンブラント・ファン・レイン『広つば帽を被った男』(1635年)は、作品にゆったりと対峙できる専用の空間に。毎回、訪れるのを楽しみにしていました

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… DIC川村記念美術館学芸員 前田希世子さん

市川 高い天井の大展示室では、周囲の音が吸収されていくような不思議な感覚を味わいました。川村記念美術館ではいつも、建物自体が作品の見せ方を考えて設計されていると感じますが、今回も作品に合わせた展示方法が秀逸ですね。

前田 この展示室は、それ自体が作品である高さ1m、幅50cmの腰壁を巡らせ、9つのセクションに区切っています。腰壁には小型彫刻が置かれていますが、入口と出口は1箇所ずつのため、見えている作品も、近くにたどり着くにはぐるりと回っていかなければなりません。これにより空間全体が作品化されています。

市川 白を基調とした彫刻も、それぞれに微妙な色の変化があったり曲がり角の先で急に新しい作品が見えたり。また、天気や時間でも見え方が変わりますね。

前田 今回の企画展では、異なる光源を用いることで作品の陰影をより体感できます。特に自然光のみの展示は、美術館にとっては冒険でもありました。

市川 作品と光といえば、常設のロスコ・ルームの間接照明が印象的です。ぎりぎりにしぼった明るさの中で、じわりと色と筆跡が動きだすような……。

前田 制作中の彼のスタジオには、小さな天窓と天井に向けた照明しかなかったそうで、その照度を再現したのがロスコ・ルーム。実は今の美術館の照明はLEDが主体なのですが、この一室だけはハロゲンライトを使っています。ロスコが重ねた色の層が、LEDではどんなに実験しても平面的に見えてしまうのです。

市川 なるほど、作品と対峙できる特別な空間の秘密は、そんなところにも!

訪れたのは…DIC川村記念美術館

西川勝人 静寂の響き

Ⓒ Katsuhito Nishikawa 2024

1990年に海老原一郎の設計で建てられた美術館の建築もお気に入り。エントランスホールを見上げると、天井の花のような装飾照明と、壁面のステンドグラスが目に飛び込んでくる

【展覧会DATA】 西川勝人 静寂の響き

〜2025/1/26 DIC川村記念美術館
千葉県佐倉市坂戸631
9時30分〜17時(入館は〜16時30分)
休館日/月曜(祝日の場合は開館し、翌平日に休館)・12/24〜1/1
入館料/一般¥1800ほか
https://kawamura-museum.dic.co.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

カーディガン¥71500(セファ)・ブラウス¥17600(シップス)/シップス インフォメーションセンター パンツ¥41800/ミュラー オブ ヨシオクボ バッグ¥52800/オルサ(オルセット) 靴¥101200/ネブローニ ピアス¥27500・リング(人さし指)¥50600/プラウ リング(薬指)¥19400/ロードス(vihod)

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/千葉万理子 スタイリスト/平田雅子 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2025年1月号掲載

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