市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第26回はUESHIMA MUSEUMで開催中の「UESHIMA MUSEUM オープニング展」を訪問しました。
今月の展覧会は…「UESHIMA MUSEUM オープニング展」
“渋谷の街に生まれた、現代アートにアクセスしやすい最新の美術館!”
渋谷に、新たな現代アートの美術館が誕生しました!2024年6月に開館したばかりのUESHIMA MUSEUM 。NYやパリなどの大都市には、ふらりと立ち寄れる現代アートのギャラリーや美術館があります。国内外の多くの人が行き来する渋谷にも、アクセスのいいアートスポットがあればいいのに、と思っていたところ。まさにこんな場所を待っていたのです。
設立者であり、館長を務める植島幹九郎氏は1979年生まれの事業家・投資家で、現代アートのコレクター。UESHIMA MUSEUMは渋谷駅からほど近い、ブリティッシュ・スクール・イン・東京の跡地に建てられました。地下1階、地上6階のビルに6フロアの展示空間(限定公開フロアもあり)を有し、同時代のアーティストを中心にした650点以上のコレクションから厳選された作品が並びます。元・学校らしさを利用したスペースのつくり方も面白い!メディアで話題になっていたり、金沢21世紀美術館や大阪中之島美術館などで見られるものの、東京ではなかなか出会えなかったアーティストの作品も多数。QRコードを使って入場し、作品とかなり近い距離感で鑑賞できることも特徴です。私は作家と作品についてのキャプションが充実していることにも注目。「名前は知ってるけどこのアーティストってどんな人?」「現代アートって何が言いたいの?」という気持ちにきちんとこたえてくれます。個人的には、詳しく知らなかった松本陽子、岡﨑乾二郎ら存命のアーティストとの出会いが収穫でした!
わざわざ遠方に行かずとも、すきま時間に「何を展示しているかな?」「お気に入りの作品に会いに行こう」と立ち寄れて、気分転換できる。日常と最新アートがつながり、動き続ける今を教えてくれる、お気に入りの場所になっていくと思います。
同時代の、話題のアーティストの作品がぎっしり。距離感が近く、集中して鑑賞できるのも魅力!
展示室2Fは「同時代の表現、個の表現世界」をテーマにしたパーマネントコレクションの趣き。廊下のような細長い空間の奥にはトーマス・ルフの『Substrat 7 Ⅲ』の鮮やかな色彩が
池田亮司『data.scan [n°1b-9b]』。学校として使われていた当時、渡り廊下だった部分がデジタルアートの展示室に。暗室の中で、変化する映像に囲まれて、どこか心地よさを感じるトリップ体験をしました
名和晃平の子鹿のオブジェ『PixCell-Sharpe's grysbok』。2023年制作の最新作を間近で見られる贅沢!
ミカ・タジマ『Anima 47』。照明が暗くなるにつれ変化してゆくガラス作品は、小さな展示室に設置され、集中して対峙できる
展示室をつなぐ階段のそれぞれの踊り場には、杉本博司の作品がさりげなく
以前はバスケットゴールが設置されていたという広々としたスペースがあるB1F。「絵画における抽象-その開拓精神」をテーマに、大型の抽象作品を展示。 ベルナール・フリズの絵画の手前には、アニー・モリスのカラフルな彫刻作品『Stack7』
オラファー・エリアソンの『Eye see you』。作品の発する特殊な光の下ですべての可視光が同質になる。2003年のテート・モダンでのインスタレーションを見たことがあり、ここで再会することができました。両横が鏡張りの展示室で、作品と自分自身が無限に映し出される不思議な効果を楽しむ
トビラの奥で聞いてみた
展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… UESHIMA MUSEUM 館長 植島幹九郎さん
市川 植島館長がコレクションしている作品にはどんな共通点がありますか?
植島 作品自体からエネルギーを感じられるもの、表現や手法に個性があり自分にとって新しいインパクトをくれるものが多いのではないかと思います。
市川 最初から展示を目的としてコレクションを始められたのでしょうか?
植島 当初からコレクションを公開したいという想いは持っており、ウェブやSNSを通じて、日本語・英語・中国語の3カ国語で世界の人々と共有していました。作品をリアルで公開する場について考えるようになったタイミングで、自分の母校である学校法人が所有するこの建物を利用させていただけることになり、美術館という文化教育施設としてリノベーションをする計画が具体性を帯びました。約1年前から準備が始まり、プレオープンの直前に購入した展示作品もあります。
市川 2023年制作の生まれたての作品もありますね。なんてスピーディ!
植島 はい、そうした意味で同時代性があり、動き続ける美術館というテーマが明確になりました。来場者の方々の反応をダイレクトに目にして、私自身、これからコレクションしたい作品のアイディアが生まれるなど発見も多いです。感想を聞いたりコメントをいただくことが、今後の展示の上でも参考になると思っています。コレクションして終わりではなく、コレクションへの反響に応じて展示もアップデートしていき、変化のある美術館になっていくのでは。
市川 訪れるたび展示が動き続けるライブ感が素敵ですね、今後も楽しみです!
訪れたのは…UESHIMA MUSEUM オープニング展
2Fには村上隆、名和晃平、チームラボ、ルイーズ・ブルジョワ、シアスター・ゲイツ、ダン・フレイヴィン、塩田千春などなどなど、同時代のアーティストが勢ぞろい。写真はトレイシー・エミン『It’s what I’d like to be』。小展示室の奥からネオン管で表現した作品の光が漏れています
【展覧会DATA】 UESHIMA MUSEUM オープニング展
開催中〜12月末
UESHIMA MUSEUM
東京都渋谷区渋谷1の21の18 渋谷教育学園 植島タワー
11〜17時(最終入場16時)
休館日/月曜・祝日
入館料/一般¥1500ほか
事前予約制。会場・作品の写真撮影可能
https://ueshima-museum.com/
ファッションモデル
市川紗椰
2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。
シャツ¥31900(エヌディーエックス)・スカート¥37400・パンツ¥50600(バウム・ウンド・ヘルガーテン)・バッグ¥13200(ヴィスク)/エスアンドティ カットソー¥11000/ザ ショップ スローン 神戸(スローン) ピアス¥6500/805ショールーム 靴¥12100/クロ シェ(ファルファーレ)
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2024年11月号掲載