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【市川紗椰の週末アートのトビラ】国立西洋美術館「キュビスム展—美の革命」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第18回は国立西洋美術館で開催中の「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」を訪問しました。

今月の展覧会は…「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」

“歴史と人物を知れば知るほど面白いキャラ立ち充分の群像劇のような展覧会”

市川紗椰さん “歴史と人物を知れば知るほど面白いキャラ立ち充分の群像劇のような展覧会”

「抽象画?難しそう……」という人も多いでしょう。現代美術の一大運動として教科書に載っていたキュビスム。確かに、一枚一枚の絵を見ても何を描いて何を伝えたいのかわかりにくいですよね。ところがこの展覧会。まるで大長編の漫画や小説を一気読みしたような気分になる、予想を裏切る面白さ!

1907年、20代のピカソとブラックが、セザンヌの回顧展の衝撃やアフリカ、オセアニア美術への関心を共有して意気投合、一心不乱に新しい絵を描き始める。それがキュビスムの始まり。彼らの作品は同一人物が描いたようにそっくりで……。そんな熱い青春ストーリーが、展示から立ち上がってきます。その“革命”はヨーロッパ中に伝染し、爆発的に広まります。競うように大作を発表したドローネーやレジェ、キュビスムを彫刻や家の装飾にも発展させたデュシャン兄弟、ロシアなど各国からパリに渡り、おんぼろアトリエ「ラ・リュッシュ(蜂の巣)」に集ったシャガールやモディリアーニ。どの芸術家もキャラが立っていて、作品から情熱があふれ出るよう。けれど、この盛り上がりはたった10年足らずの出来事。第一次世界大戦によって歴史の渦に巻き込まれたキュビスム運動はやがて……と、14章構成の展示は波瀾万丈。美意識や価値観が激動した時代、芸術家たちがたどる足跡がドラマチック。最後は、会場である国立西洋美術館の設計者、ル・コルビュジエにつながる展開にもうなります。

「何も知らなくても見るだけできれい、楽しい」とおすすめする展覧会もありますが、今回に限っては、知識をつけたり、解説をじっくり読むともっと深く味わえる、知る喜びを堪能できる展覧会。見ごたえたっぷりの群像劇を味わって、終わったあとは誰かと語りたくなる。歴史や物語が好きな人にも響くはず!

たっぷり時間をかけて、ストーリーを味わう楽しみにふけりたい!

市川紗椰

(右から)フェルナン・レジェ『婚礼』1911〜1912年・ロベール・ドローネー『パリ市』1910〜1912年ともにポンピドゥーセンター蔵・アルベール・グレーズ『収穫物の脱穀』1912年 国立西洋美術館蔵

ピカソとブラックの始めたキュビスムに共感し、パリの美術界で注目を浴びた「サロン・キュビスト」たちの作品。ドローネーによる幅4mの大作には、エッフェル塔など当時のパリの最新と、古典的なミューズのモチーフが。広々とした展示室に飾られた大型絵画は迫力満点!

市川紗椰 2

上の『パリ市』の作者ロベール・ドローネーの妻で、ともに創作活動を行ったソニア・ドローネーの作品『バル・ビュリエ』など。パリの夜のダンスホールを美しい色彩で描いている

市川紗椰 第13章「キュビスムと第一次世界大戦」の展示室。戦争が芸術にどんな影響を及ぼしたかが伝わり、今の世界とのつながりを考えるきっかけに

第13章「キュビスムと第一次世界大戦」の展示室。戦争が芸術にどんな影響を及ぼしたかが伝わり、今の世界とのつながりを考えるきっかけに

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…国立西洋美術館特定研究員 久保田有寿さん。

市川 今パリのポンピドゥーセンターに行っても、日本へ貸出中の作品ばかりじゃない?と心配になるほどの充実ぶり。作品数が多いので、キュビスムの芸術家たちの歩みを通じて、第一次世界大戦やロシア革命などの歴史が生き生きと伝わってきます。作品と作者と時代背景がつながって、なるほど!と思いました。

久保田  ボリュームがすごすぎて、14章の展示構成ができ上がるまで苦労の連続でした。けれどたとえば「これがキュビスム時代のピカソです」と作品一点だけポンと見せるより、キュビスムがどうやって展開していったかというストーリーにのせることが面白いと考えたので、そう感じてもらえると嬉しいです。

市川 「この人にもキュビスト時代があったんだ」「これもキュビスムに関係しているんだ」という作品もありました。まったく知らなかった作者も多かったです。

久保田 最新の研究で、ロシアや東欧からパリに渡った人々、戦争中もキュビスムの絵を描いた作家、また女性たちの存在も重要であるとわかってきたんです。

市川 女性作家では特に、パトロンであり、絵のモデルにもなったエレーヌ・エッティンゲン男爵夫人。作品もちょっとシュールで可愛くて、すごく興味深かったです。

久保田 彼女は面白いですよ、多才な芸術家で恋多き女性でもあったようです。そうやって、訪れる方々にはぜひ、自分だけの“推しキュビスト”を見つけていただきたいですね(笑)。

訪れたのは…国立西洋美術館

市川紗椰

【展覧会DATA】
パリ ポンピドゥーセンター
『キュビスム展―美の革命』
ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ

〜2024/1/28
東京都台東区上野公園7の7
9時30分~17時30分(金・土曜~20時 入館は閉館の30分前まで)
休館日/月曜(1/8は開館)、12/28〜1/1、1/9
観覧料/一般¥2200ほか

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

カーディガン¥19000・シャツ¥25000・スカート¥15000/コス 青山店 カチューシャ¥6600/シャポードオー 東急プラザ銀座店(シャポードオー) ピアス¥25300(マッソーズアンドマッソーズ)・リング¥13200(ニナ・エ・ジュール)・バッグ¥28600(リエンピーレ)・靴¥71500(フラッタード)/ショールーム ロイト

撮影/今城 純 ヘア&メイク/猪股真衣子〈TRON〉 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2024年1月号掲載

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