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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都現代美術館「デイヴィッド・ホックニー展」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第16回は東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」を訪問しました。

今月の展覧会は…「デイヴィッド・ホックニー展」

色と光にあふれた二次元の絵画が誘う、本物よりも本物⁉な臨場感

色と光にあふれた二次元の絵画が誘う、 本物よりも本物⁉な臨場感

目が気持ちいい!豊かな色彩が養分になってしみ込んでくるような、そんな絵画の世界に入り込んできました。現代で最も革新的で、世界的な人気を集める現役画家の一人、デイヴィッド・ホックニー。その60年以上にわたる活動を網羅した、日本では27年ぶりとなる個展です。

油彩、水彩、アクリル、版画、写真を使ったコラージュなど、多彩な技法を使ってきた彼が、PCやiPadを用いた制作を始めたのは60代にさしかかってから。最新ガジェットを取り入れながら、ホックニーは描き続けます。親しい人を、身近な日常を、四季の風景を。86歳になる今も、毎日10時間以上を制作に費やすというから驚き! 日課のように戸外に出て、季節の変化を写生するには、油絵では大変すぎる。だから彼は上着のポケットに入れたiPadを使うのだそう。テクノロジーはあくまで手段であり技法。彼は新しいことをしたいのではなく、頑固に具象絵画の伝統を守り続けているわけですね。

自分の目に見えるものを、自分の手で二次元の絵にうつしとる。そこにこだわり、ずっと追求してきたからこそ、彼の描く森や庭の自然は、本物よりも本物らしくて、不思議な生っぽさを感じます。大きな平面作品を歩きながら眺めると、視界が動き出すような、文字どおりの“ヴァーチャルなリアリティ”があり、のぞき込むほどに新しい発見も。今、VRや3Dプロジェクションなど最先端の没入系アート展示があふれているけれど、それを超える没入体験がここにあるように思います。ホックニーの見た景色は、美しい色と形に満ちていて、易しく、優しく手招きしているよう。コンテンポラリーアートって難しそうで苦手、と思っている人にこそ、おすすめです。

86歳を迎え、今も旺盛に描き続ける画家。巨大な作品を前にすると、彼が目にした「ありのままの風景」に招き入れられる気分。

市川紗椰

展示風景
(右2点)『春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年』 シリーズ(部分) デイヴィッド・ホックニー財団 ⒸDavid Hockney
(左)『春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年』(部分) 2011年 ポンピドゥー・センター蔵 ©David Hockney

右は、iPadによる戸外制作。冬の終わりから夏の始まりまで、生まれ故郷に近いイギリス、ウォルドゲートの小径に赴いて描いた、90 点のスケッチから12点を選んで展示している。左は、その「春」の風景の心の蓄積をもとに、スタジオで描いた大型の油彩画。

市川紗椰 展示風景『ノルマンディーの12か月』(部分)

展示風景『ノルマンディーの12か月』(部分)
2020-21年 作家蔵 ⒸDavid Hockney

コロナ禍の12カ月間、ノルマンディーの自然の移り変わりをiPadで描いた全長90mの絵巻。絵をたどっていると庭に招かれ散歩しているような気持ちに

『春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年(5月31日No.1)』

『春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年(5月31日No.1)』
2011年 デイヴィッド・ホックニー財団 ⒸDavid Hockney

2010年、iPad発表の直後から制作に取り入れてきたホックニー。一日に数点、戸外で描けるというスピード感がiPadを使う理由

市川紗椰 展示風景『ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作』 2007年 テート蔵 ⒸDavid Hockney

展示風景『ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作』
2007年 テート蔵 ⒸDavid Hockney

描かれたイギリスの風景に吸い込まれそうな大型の油彩作品。キャンバスを分割し、毎日一部分ずつを戸外に持ち出して描いた

『2022年6月25日、(額に入った)花を見る』2022年 作家蔵 ⒸDavid Hockney assisted by Jonathan Wilkinson

『2022年6月25日、(額に入った)花を見る』
2022年 作家蔵 ⒸDavid Hockney assisted by Jonathan Wilkinson

ホックニー自身が登場する「フォト・ドローイング」。1000枚以上の写真を合成、額の中にはiPadで描いた静物画をはめ込んでいる。リアルを超えた生々しさがある不思議な世界

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…東京都現代美術館学芸員 楠本 愛さん。

市川 前回1996年も、会場は同じ現代美術館なんですね。

楠本 はい。私を含め、年齢20〜40代の多くは、当時のホックニーのブームを知りません。これから60年を生きようとしている同世代や若い世代は、彼の60年の軌跡をどうとらえるだろう、と展示を考えました。

市川 繊細なドローイングの筆跡から、制作過程をたどれるiPadの作品にも見入りました。技法は変わっても、彼はずっと彼の絵を描き続けているんですね。

楠本 そうなんです。ホックニーの一貫性を示すため「何を」より「どのように」描いてきたか、という部分を大切に、時代の違う作品を見比べられるような展示も行っています。

市川 最新作からは、今、同じ時代を生きているんだなあ、という感慨がありました。ご本人に対面した印象は?

楠本 コロナの前後にお会いしましたが、愛にあふれた方です。来日は残念ながらかなわなかったのですが、今回のための映像メッセージをいただきました。会場でご覧ください!

訪れたのは…東京都現代美術館

市川紗椰 (右)L.A.で描いた代表作のひとつ『スプリンクラー』1967年 東京都現代 美術館蔵 ©David Hockney (左)どこか不穏なダブル・ポートレート 『クラーク夫妻とパーシー』 1970-71年 テート蔵 ©David Hockney

(右)L.A.で描いた代表作のひとつ『スプリンクラー』1967年 東京都現代 美術館蔵 ©David Hockney
(左)どこか不穏なダブル・ポートレート 『クラーク夫妻とパーシー』 1970-71年 テート蔵 ©David Hockney

市川紗椰 iPhoneとiPadで描いた窓辺。ホックニーの筆跡を再現するアニメーションとして展示!『窓からの眺め』より 2010-11年 作家蔵 ©David Hockney

iPhoneとiPadで描いた窓辺。ホックニーの筆跡を再現するアニメーションとして展示!『窓からの眺め』より 2010-11年 作家蔵 ©David Hockney

【展覧会DATA】
デイヴィッド・ホックニー展
~11/5 東京都現代美術館 展示室1F/3F
東京都江東区三好4の1の1
10時~18時(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日/月曜(10/9は開館)、10/10
観覧料/一般¥2300ほか

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

シャツ¥52800・パンツ¥66000/TELMA バッグ¥33000(zilla)・靴¥17600(アダムエ ロペ)/アダム エ ロペ ピアス¥22000/エトワライト ネックレス¥60500/リューク リング¥19800/アグ

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2023年11月号掲載

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