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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都美術館「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展  ウィーンが生んだ若き天才」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第10回は東京都美術館で開催中の「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」を訪問しました。天才が生きた濃密な28年の軌跡をたどります。

今月の展覧会は…レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

天才が生きた濃密な28年間が、過去と現在を鮮やかに照らし出す

市川紗椰 天才が生きた濃密な28年間が、過去と現在を鮮やかに照らし出す

19世紀末から20世紀を迎えたばかりのウィーンを駆け抜けた夭折の画家、エゴン・シーレ。どこか過剰で、デカダンスの香りのするその作品が好きです。彼の描いた裸婦像は、今でも物議を醸すほど。保守的な権威と伝統にずっしりと覆われた当時の文化を切り裂くように、新しい価値観を生み出した芸術家たちが交わる熱い時代にも萌えます。

東京では30年ぶりという待望の大規模展に、近くで観ないとわからない彼の「色使い」を楽しみにやってきました。普通の感覚ではありえない色の用い方、重ね方に見とれます。最初に立ち止まったのは、シーレが18歳の頃に描いた『装飾的な背景の前に置かれた様式化された花』。正方形の画角も斬新で、狩野派など日本画の影響もありそう。背景の質感に惹かれ、顔を近づけて驚きました。金箔や銀箔を貼ったように見える背景は、絵筆の跡。工芸的なテクスチャーを細かに再現しようとしているんですね。「まじめ……」と思わずつぶやいてしまいました。新しい技法や美しい表現を、柔軟に取り入れ、自分の内面も惜しみなく出し、描き続けた人。展示は、彼の人生と時代を重ね、多彩に変化する彼の画風をたどります。シーレは第1次大戦の終わり頃、当時大流行したスペイン風邪で死去。28年間、天才であり続けて、絶頂期に燃え尽きたように思える人生ですが、まだまだ変わりゆく途中だったのではないか、そんな余韻が残ります。

戦争と疫病という現代とのリンク、100年たっても、“炎上”するほど力強い彼の絵を前にすると、「美術史上の人」という感じがまったくしません。鮮やかに迫ってくるアートと人物像から、血が通った生の空気に触れたような気がしました

100年以上も昔の表現なのに、古びるどころか、ドキドキするほど新しい。まだ息をしているような、独自の色と構図

市川紗椰 (左)エゴン・シーレ 『装飾的な背景の前に置かれた様式化された花』1908年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum,Vienna(右)エゴン・シーレ 『菊』1910年 レオポルド美術館蔵 

(左)エゴン・シーレ 『装飾的な背景の前に置かれた様式化された花』1908年 レオポルド美術館蔵
(右)エゴン・シーレ 『菊』1910年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum,Vienna
みずみずしい感性でとらえた花のドローイング。金や銀を用いた色使いや平面的な構図、のぞき込むほどに発見がありました。

市川紗椰 エゴン・シーレ『自分を見つめる人I(I 死と男)』 1911年 レオポルド美術館蔵

エゴン・シーレ『自分を見つめる人I(I 死と男)』 1911年 レオポルド美術館蔵
内面をえぐり出すような自画像と言葉の前で、シーレって、どんな人だったのだろう?と思いをめぐらす

市川紗椰 (左から)不染 鉄『山海図絵(伊豆の追憶)』1925年 木下美術館、南 薫造『鉄道開業式:明治天皇鹵簿新橋着の図』『同:横浜式場の図』ともに1921年、日本交通協会

グスタフ・クリムト『シェーンブルン庭園風景』 1916年 レオポルド美術館に寄託(個人蔵)
クリムトによる風景画も、印象派やロマン主義とはひと味違う、あの時代のウィーン独自の濃密さがあって好き

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…東京都美術館学芸員 小林明子さん。

市川 シーレの短い人生をたどる濃密な展示は、子ども時代の絵から始まりますが、デッサンの技術がすごいですね!

小林 そうなんです。シーレは作品の斬新さが注目されがちなのですが、絵がうまいということが大前提としてあります。

市川 年上の画家クリムトに影響を受けたり、仲間たちと新しい芸術を求めて学校に反抗したり、青春!という印象も。さらけ出すような自画像が有名ですが、風景画や母子の絵にはぬくもりがあって、可愛い人だったのかも?

小林 正直に自分を見つめた素直さは確かにありますね。

市川 新しいものを取り入れる柔軟さも感じます。たった10年の活動期間で、作風が変わっていきますよね。

小林 緊張感のある色と構図の、いわゆる﹁シーレらしい﹂作品は21〜22歳に描かれたものが多いのですが、亡くなるまでにまた変化していきます。最後に展示した彼の絶筆は、激しさが抑えられ、古典への回帰を見る作品でした。まだまだこれから、という“続き”を感じさせるような……。

市川 変化するその続きを、ぜひ見てみたかったですね。

訪れたのは…東京都美術館

東京都美術館の市川紗椰

1926年開館、日本初の公立美術館。エゴン・シーレ展の終了後、4月27日からはアンリ・マティスの大回顧展が開催! 上野通いが続きそうです

市川紗椰

【展覧会DATA】
レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才
~4/9 東京都美術館 東京都台東区上野公園8の36
9時30分〜17時30分(金曜〜20時入室は閉室の30分前まで)
休室日/月曜
観覧料/一般¥2200ほか。日時指定予約制
https://www.egonschiele2023.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

ジャケット¥64900・中に着たトップス¥22000(ともにビロット)・バッグ¥28600(リエンピーレ)・ピアス¥12100・ブレスレット¥18700(ともにニナ・エ・ジュール)/ショールーム ロイト ネックレス¥20900/エンケル(エスロー) スカート¥121000/08ブック(08サーカス) ブーツ¥40700/ファビオ ルスコーニ ジェイアール名古屋タカシマヤ店(ファビオ ルスコーニ)

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/猪股真衣子〈TRON〉 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2023年4月号掲載

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