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【市川紗椰の週末アートのトビラ】金沢21世紀美術館で開催中の展覧会「時を超えるイヴ・クラインの想像力」をご案内【前編】

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第9回は金沢21世紀美術館で開催中の「時を超えるイヴ・クラインの想像力」を訪問しました。前後編の前編となる今回は、イヴ・クラインとの出会いやその魅力を語ってもらいました。

今月の展覧会は…時を超えるイヴ・クラインの想像力 ― 不確かさと非物質的なるもの

私にとって、現代アートを楽しむ「扉」となった作品に会いに行きました!

市川紗椰 私にとって、現代アートを楽しむ「扉」となった作品に会いに行きました!

イヴ・クラインの生み出したブルーは、吸い込まれるような特別な青。目の前に立つと光を放っているようです。初めての出会いは高校時代、グッゲンハイム美術館にて。それまでなんとなく好きだった抽象表現の魅力にはまり、アートを学びたいと思ったきっかけのひとつ。1950〜60年代、たった7年ほどの活動で、誰よりも早く表現の最先端を駆け抜けたアーティストであるイヴ・クライン。彼の全貌に触れる展覧会は、日本ではなんと37年ぶり。金沢21世紀美術館まで足を運ばないわけにはいきません!(おでんも美味しい季節だし)

タイトルとなった「非物質的なるもの」とは、色彩、音、火、そして空虚。それらをテーマに9つの展示室をたどります。同時代や現代に響き合うアーティストの作品、そして、彼自身の人生が浮かび上がる構成。柔道4段の腕前だったり、宇宙飛行に憧れたりというどこかチャーミングな一面が、作品に結びつくのも発見でした。金沢らしく、金を用いた彼の作品と、伝統工芸である金箔屏風を並べているのも面白い。

市川紗椰 イヴ・クライン『空気の建築(ANT-102)』1961年 東京都現代美術館蔵

イヴ・クライン『空気の建築(ANT-102)』1961年 東京都現代美術館蔵
クラインが生み出した理想の青「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」をモデルの体の上から塗布し、痕跡を浮き上がらせた作品。非物質化した人々が「空気の建築」に住むという構想を自作の詩とともに描いた。手前に展示された写真はパフォーマンス、1962年2月4日、クロード・パスカルに対する『非物質的絵画的感性領域の譲渡』の様子

色そのものが空間に溶け出し、見ている自分も溶けてゆく、不思議で広々とした感覚を味わって

市川紗椰 『ピュア・ブルー・ピグメント』 1957年/2022年

以下すべてイヴ・クライン

『ピュア・ブルー・ピグメント』 1957年/2022年
『青い雨』 1957年/2018年 個人蔵

儀礼的パフォーマンス『非物質的絵画的感性領域の譲渡』のように、消えて形に残らない作品も魅力のひとつ。この感覚は、はかなさとは違うんですよね。見えない領域にあっても、むしろ強烈に残っていく。音楽の無音や休符と同じように“ない”ではなく“ない”が“ある”のだと感じられたのは、やはり二次的な記録ではなく実物を前にしてこそ。『ピュア・ブルー・ピグメント』や『青のモノクローム』の青も、写真では伝わらない深さとエネルギーがあります。みんなが自分の外へ外へと向かい、意味や形を追い求めるなかで、自分の内面を広々とさせるような貴重な体験。心と体を自由にする旅になるはずです。

『ピュア・ブルー・ピグメント』 1957年/2022年(部分)

『ピュア・ブルー・ピグメント』 1957年/2022年(部分)

クラインを象徴する青、IKBを12本の棒に塗った「青い雨」と、IKBの粉末の顔料そのものを敷き詰めた「ピュア・ブルー・ピグメント」

市川紗椰 

(右)『人体レリーフ(クロード・パスカル)ーPR3』1962年 彫刻の森美術館(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団)蔵
(中)『アルマン(肖像レリーフ)』 1962年(原型)愛知県美術館蔵
(左)『人体レリーフ(マルシアル・レイス)ーPR2』1962年 彫刻の森美術館(公益財団法人彫刻の森芸術文化財団)蔵

金は、青と同様に特別な色。友人の肉体を型取りし青く彩色、金色の板にとりつけた3つのレリーフ。隣に、金沢市立安江金箔工芸館が所蔵する金箔の屏風を展示している

【市川紗椰の週末アートのトビラ】金沢21世紀美術館で開催中の展覧会「時を超えるイヴ・クラインの想像力」をご案内【前編】_7

『ディマンシュ(日曜):一日限りの新聞』(部分)1960.11.27 個人蔵

パリの街に配布した1日限りの偽新聞には、空中へ飛び出すパフォーマンス「空虚への飛翔」を掲載

【展覧会DATA】
時を超えるイヴ・クラインの想像力—不確かさと非物質的なるもの
~2023/3/5 金沢21世紀美術館
石川県金沢市広坂1の2の1
10時〜18時(金・土〜20時)
休館日12/29〜1/1、1/4、1/10
観覧料/一般・当日¥1400ほか
https://www.kanazawa21.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

ニット¥28600・ワンピース¥41800・ピアス¥31900/ボウルズ(ハイク) ネックレス¥34100/エトワライト バッグ¥24200/エスアンドティ(ヴィスク) 靴¥15950/ムゥムゥヌゥ

撮影/今城 純 ヘア&メイク/千葉万里子 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2023年2・3月合併号掲載

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