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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都美術館「マティス展」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第14回は東京都美術館で開催中の「マティス展」を訪問しました。

今月の展覧会は…マティス展

巨匠の作品、生き方、時代が、まるごと迫る。鮮やかで多彩な大回顧展

市川紗椰  巨匠の作品、生き方、時代が、まるごと迫る。鮮やかで多彩な大回顧展

アンリ・マティス本人に会ったような気分。そんなわくわくを、東京都美術館『マティス展』で味わいました。

実は私、彼の描く鮮やかな色彩や柄が大好きで、いつかこんなド派手で可愛い服を着たおばあさんになってやろう、という野望があります。たとえば展覧会のキービジュアルにもなった『赤の大きな室内』は、そんな“THE マティス!”な代表作。画集などで何度も眺めたものですが、本物を前にすると、今までは“見たつもり”になっていただけかもしれない、と思うほど、シンプルに、すごい! 微妙に変化するこっくりとした赤、平面上で調和しているように見える椅子や敷物などモチーフの不思議さに吸い込まれ、生身のマティスの貫禄すら伝わってくるようです。一作品一作品に、決して素通りできない深さと面白さがあって、これぞ生で見る喜び。

この大回顧展では絵画だけでなく、彫刻やデッサン、切り紙絵など、様々な手法で自分の色と造形を追い求めたマティス84年の生涯を、作品とともにたどります。美しいと思うものの本質をとらえるべく彼が吸収してきたのは、19世紀から20世紀のアート史そのもの。セザンヌ、ロダン、ピカソ、アフリカ、東洋、ジャズ……常に自分にはないものを取り入れ、時代ごとに作風を変化させるマティスって、究極のミーハーといえるのでは? その柔軟さと自在なアウトプットに驚きます。最後の作品『ヴァンス礼拝堂』は空間の総合芸術で、現代のインスタレーションに通じる気も。生きていたらきっと、AIに挑戦し、YouTuberにもなっていたかもしれません

見終えれば、マティスとともに長い旅をしたような心地よい疲労感。オリジナルグッズも大充実なので、お見逃しなく!

どこかで見たことのある有名作品こそ、本物に出会う体験は格別。マティス自身がその場にいるようなライブ感にしびれる!

市川紗椰 (手前)『赤の大きな室内』1948年 (奥)『黄色と青の室内』1946年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館940年代、南仏のアトリエを独特の色と造形で描いた代表的な連作。色使いに吸い込まれ、いつまでも絵の前から離れられなくなる

(手前)『赤の大きな室内』1948年 (奥)『黄色と青の室内』1946年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
1940年代、南仏のアトリエを独特の色と造形で描いた代表的な連作。色使いに吸い込まれ、いつまでも絵の前から離れられなくなる

『赤いキュロットのオダリスク』1921年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

『赤いキュロットのオダリスク』1921年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

パンツの柄や背景のテキスタイル、実際着てみたくなるほど好き! マティス自身が旅先で購入したものなどを舞台のようにセッティングしてつくった世界観だそう

『ヴァンス礼拝堂、ファサード円形装飾 〈聖母子〉(デッサン)』 1951年 カトー=カンブレジ・マティス美術館

『ヴァンス礼拝堂、ファサード円形装飾〈聖母子〉(デッサン)』1951年 カトー=カンブレジ・マティス美術館

人生の最後、集大成としてつくり上げた『ヴァンス礼拝堂』。ステンドグラスなど建物の装飾、司祭の衣装までをデザイン。実際に訪れたい!

(左)『アンフォラを持つ女性』 1953年 ニース・マティス美術館(中)『オレンジのあるヌード』 1953年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館(右)『軽業師』 1952年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館 

(左)『アンフォラを持つ女性』1953年 ニース・マティス美術館
(中)『オレンジのあるヌード』1953年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
(右)『軽業師』1952年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

大病を患ったマティスが、78歳で新たに挑戦したのが切り紙絵の手法。当時最新の音楽だったジャズの即興性にちなんでタイトルをつけられた連作『ジャズ』に、切り紙絵とともに車椅子から長い筆を使って描いたという80代での3作品。美しくて可愛くて、挑戦し続ける姿勢にも心を打たれました

市川紗椰 『版画シリーズ〈ジャズ〉より』1947年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

『版画シリーズ〈ジャズ〉より』1947年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

トビラの奥で聞いてみた

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…東京都美術館学芸員 藪前知子さん。

藪前 マティスは人生であまり面白いことが起きない人で……。

市川 そんな!(笑)けれど確かに、アーティストっぽい破天荒なエピソードは聞いたことがないですね。

藪前 ふふふ。ですがその代わりに生涯を通して作品をつくり続けた、ある意味めちゃくちゃうらやましい人生なんです。

市川 展覧会では、様々なジャンルを模索し、挑戦してきた、そんな彼の人生の変遷がよくわかりました。

藪前 若いときからロダンやルノアールに教えを乞いに行くなど、積極的でコミュニケーション能力も高いんですよね。

市川 かなりイケイケ。今ならSNSを駆使していそう

藪前 ええ。いわゆる“陽キャ”なのですが(笑)、自己表現というより、時代を体現するために自分は選ばれ、導かれて描いているという意識で、芸術を見据え続けてきたようです。

市川 なるほど、そのまじめさが、晩年の集大成『ヴァンス礼拝堂』のトータルデザインに結ばれるのですね。

藪前 はい。彼の選び取った色と形を突き詰めてゆくと、人生の最後にマティスがやりたかったことの到達点が見えてきます。それはけっこう、感動的だと私は思うのです。

訪れたのは…東京都美術館

市川紗椰 今年1月〜4月の『エゴン・シーレ展』でも訪れた東京都美術館。今回は白を基調に、マティスの作品に含まれた色が際立つ空間を意識しているそう

今年1月〜4月の『エゴン・シーレ展』でも訪れた東京都美術館。今回は白を基調に、マティスの作品に含まれた色が際立つ空間を意識しているそう

市川紗椰 『背中I–IV』1909–1930年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

『背中I–IV』1909–1930年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館

彼は絵画の実験期を迎えるたび、この彫刻に立ち戻り、背中の造形の抽象化に取り組んだそう。約20年間をかけそぎ落とされてきた4作品に芸術に対する姿勢が表れている

【展覧会DATA】
マティス展
~8/20 東京都美術館
東京都台東区上野公園8の36
9時30分〜17時30分(金曜〜20時・入室は閉室の30分前まで) 
休室日/月曜(ただし7/17、8/14を除く)、7/18
観覧料/(日時指定予約制)一般¥2200ほか
https://matisse2023.exhibit.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


SAYA ICHIKAWA●1987年2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

ニット¥38500/ボウルズ(ハイク) スカート¥42900/フィルム(ダブルスタンダードクロージング) バッグ¥24200/エスアンドティ(ヴィスク) ネックレス¥24090(ソコ)・パールネックレス¥17710(メルセデス・サラザール)・ピアス¥10340(チビ・ジュエルズ)・リング(人さし指)¥4620・バングル¥9460(ともにフル・オブ・グレイス)・リング(中指)¥24530(マルシア・モラン)/ZUTTOHOLIC

撮影/今城 純 ヘア&メイク/猪股真衣子〈TRON〉 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2023年8・9月合併号掲載

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