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「トランプ関税」日本への影響は? 大江麻理子さんと一緒に深掘り!【働く30代のニュースゼミナール vol.52】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第52回目は「トランプ関税」について大江さんと一緒に深掘りします。

今月のKeyword【トランプ関税】

とらんぷかんぜい▶2025年1月20日に第47代アメリカ大統領に就任したドナルド・トランプ氏は、2017〜2021年の第一次政権に続き、第二次政権でも関税政策を重視。メキシコ・カナダには25%の関税、中国には10%の追加関税を課す大統領令に署名したが、その後一部方針転換するなどして、引き続き目が離せない状況が続いている。

「トランプ関税」について解説します大江さん

関連ニュースTopic

2024年11
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利。選挙中にすべての輸入品への一律関税導入の考えを明らかに

5日に投開票が行われトランプ氏が再選。選挙中に中国製品に60%、すべての国や地域の製品に一律10~20%、メキシコからの自動車には200%の関税をかける方針を表明

2025年1月
第二次トランプ政権発足。翌月、メキシコ、カナダ、中国への関税に関する大統領令に署名

就任まもなく関税政策を実行に移したが、その後メキシコとカナダに対しては、首脳会談などの結果1カ月発動を停止すると発表。一方、中国への追加関税は発動した

2025年2月
トランプ大統領と石破総理が初めての日米首脳会談に臨み米国の対日貿易赤字削減を表明

アメリカの貿易赤字を問題視するトランプ氏は、年間1000億ドルに上る対日貿易赤字を解消させると明言。石破総理は「対米投資額を1兆ドルに引き上げたい」と表明した

今月のKeyword【トランプ関税】大江麻理子さん

第二次トランプ政権の注目政策のひとつである関税を取り上げます

バイラ読者にアンケート

(回答数59名 2024年12月26日~2025年1月6日に実施)

Q トランプ大統領が外国からの輸入品に関税をかける政策を掲げていることを知っていますか?

Q トランプ大統領が外国からの輸入品に関税をかける政策を掲げていることを知っていますか?

具体的な発言の内容に関しての認知度は、「外国からのすべての製品に一律10~20%の関税を導入」が約4割と最多。次いで中国製品への追加関税が約3割、メキシコ・カナダ製品への関税が約2割という結果に

大江ʼs eyes

認知度が高いですね。選挙期間中のトランプ氏の発言では、どの国に何%の関税をかけるかがその都度変わっていて、就任後に実際に打ち出す政策が読めませんでした。一律関税の話がどうなるのかも不明ですし、ふたを開けるまでわからないところがトランプ政権の難しさだと感じます

Q トランプ大統領の関税政策により、為替は現時点からどのように変動すると思いますか?

Q トランプ大統領の関税政策により、為替は現時点からどのように変動すると思いますか?

約4割の「わからない」に次いで、約3分1が「円安ドル高傾向」と回答。「関税政策の全貌が見えないので始まらないと見当がつかない」「輸入品の高騰から米経済のインフレが加速し日米の金利差が開きそう」との意見が
(アンケート実施2024年12月25日時点1ドル=約157円)

大江ʼs eyes
米国内で輸入品の値段が上がれば、インフレ再燃のリスクが高まります。物価上昇により金利が高止まりすると、ドルと円の金利差から円安ドル高傾向が続くかもしれません。ただ、トランプ氏は「ドルは安く、金利は低く」という志向で、関税を含め政策が為替にどう影響するか要注目です

Q トランプ大統領の関税政策で日本経済にどのような影響があると思いますか?

Q トランプ大統領の関税政策で日本経済にどのような影響があると思いますか?

約7割が「悪い影響が大きい」と回答。理由に「日本製品が米国で売れなくなりそう」「日本企業が中国やメキシコで製造している製品も影響を受けそう」など。生活への影響はもちろん、投資への影響を不安視する声も

記事が続きます

大江ʼs eyes
実は日本が漁夫の利を得てメリットのほうが大きくなるという見方をする推計もあります。分野により異なりますが、特に半導体やハイテク産業などは中国企業への関税引き上げの影響が大きく出るなか、日本はその中国企業の代替としての受注でプラスの影響が出る可能性があるとされます

Q トランプ大統領にどのような印象を持っていますか?

Q トランプ大統領にどのような印象を持っていますか?

「悪い印象」と「どちらとも言えない」が半数弱ずつ。「アメリカ第一主義でなく世界経済が回る方向で考えてほしい」「戦争を終結させてほしい」「不確実性が高まりそう」など影響力の大きさに対する複雑な思いが寄せられた

大江ʼs eyes
一期目には連邦議会襲撃事件などもあり、警戒心を持って見ている方が一定数いらっしゃるのがわかります。一方で同じくらい「どちらとも言えない」という回答もあったのが印象深いですね。デメリットだけでなく日本に利する点もあるのではと分析されているところに冷静さを感じます

「第二次トランプ政権の関税政策はどうなる? 対象国と関税率に世界が注目している」

「いよいよ第二次トランプ政権が始まりました。トランプ氏が大統領選から強く訴えていたのが、輸入品にかける関税政策です。一律にかける話もあれば、中国、さらにはメキシコやカナダなどに対しては独自の税率で関税を課すという話もあり、就任後、どのように実行するのかが非常に注目されていましたので、キーワードに選びました」と大江さん。米国が関税政策を掲げているのはなぜですか?

トランプ大統領は、米国内に生産拠点があり、米国民が働くことによって生産されるものを米国で消費したいと強く思っています。米国民の雇用を守り、外国からの輸入品が米製品の競争力を奪うことになってはいけないと、第一次政権から輸入品に関税を課していました。昨年の大統領選中も自分のことを“タリフマン(関税男)”と称し、関税を有効に活用して米国の力を強めると訴えて、それが支持された面もあります。選挙中の発言では関税の規模や税率がそのときどきで変わっていたため、どうなるかと世界が気をもんでいました。実際には大統領就任後、中国には10%の追加関税、メキシコとカナダには25%の関税を課すという大統領令に署名しました。アメリカに流入する不法移民や薬物などを食い止めるためというのが理由です。しかしその後、メキシコとカナダが対策に乗り出すことを表明したことを受け、関税の発動を1カ月停止することになりました。一方、中国に対する追加関税はそのまま発動したため中国政府は強く反発し、報復関税を発動。アメリカをWTO(世界貿易機関)に提訴しました

「関税により米経済のインフレ再燃リスクも。日本経済は漁夫の利を得る可能性がある」大江さん

「関税により米経済のインフレ再燃リスクも。日本経済は漁夫の利を得る可能性がある」

実際に関税政策が実施されると、米経済にどんな影響が生じるのでしょうか。

「トランプ大統領は関税をかければ米国民にとっていい方向に向かうはずだという信念を持って進んでいますが、結局、関税を最終的に負担するのは米国民だという分析があります。米国に入ってくる物の値段が上がると、米国民がこれまでより高い値段で輸入品を買わなければならなくなってしまいます。そうすると物価がまた高騰し、やっと収まってきたインフレが再燃しかねないと懸念されているのです。昨年、インフレに苦しんだ世界の国々では日本を含めて与党が選挙でことごとく負けていることもあって、インフレが時の政権に大きなダメージを与えることは、すでに証明されています。トランプ政権においてもインフレ退治は最も重要な課題のひとつですが、関税政策も最も重要な政策のひとつ。どちらを優先させるのか気になりますね。トランプ大統領にとって、関税は他国との交渉で自分たちに有利なディールをするための道具という意味合いが大きく、交渉がうまく進めば関税の話を軌道修正するというのがメキシコやカナダの例でわかりました。インフレの再燃懸念も考えると、関税は交渉の場でちらつかせるだけにとどめたいのかもしれません」

選挙中に掲げていたすべての国や地域に対し一律10〜20%の関税を課す話も、交渉の際に使われる可能性が。

「一律というと、日本もその対象に含まれるわけです。2月にワシントンで行われた日米首脳会談で、トランプ大統領は『米国の対日貿易赤字を解消する必要がある』と発言しました。貿易赤字の削減は第一次政権の頃から強く主張してきたテーマです。対日の貿易赤字額は年間1000億ドルほどで、米国産の原油やガスを日本が輸入することで解決できるとしました。石破総理はエネルギー資源の調達は国益に資するとした上で、さらに『日本からの投資を1兆ドルまで引き上げたい』と表明しました。話がうまく進んだためか、この場では関税の話は特にしなかったようです」

読者からは「米国の関税政策で日本にはどんな影響がありますか」という声が多数。

「関税がかけられている中国を回避し、代わりに日本へ生産を受注する企業が増えたりすることで、日本は漁夫の利を得る可能性があります。しかし、一律関税を日本も課された場合は、その利益が相殺されてしまうかもしれません。また、米国からの輸入品が値上がりしたり、それを嫌気してほかの国からの輸入品に代替する動きが出てくることも考えられます。アメリカ第一主義であることがトランプ大統領の政策の核になっていますが、米国にとって光となるであろうと考えた政策でも、影のほうが色濃くなるリスクをはらんでいるというわかりやすい例がこの関税政策です。大統領の志向が強く反映され、大きな政策転換をいとわないこの政権では、ほかの政策でもそういうことが起こりかねないという認識を持っておくといいかもしれません」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/花村克彦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2025年4月号掲載

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