職場は自分の時間の多くを割いて過ごす場所。ともに働く同僚ともお互いによきチームメンバーとして関われたら、余計なストレスを感じることなく、働きやすくなるはず。今回は、リーダーシップとチームワークの研究者 村瀬俊朗さんに「チームワーク」にまつわる4つのキーワードを教えていただきました。
村瀬俊朗さん
早稲田大学商学学術院准教授。専門はリーダーシップとチームワーク研究。University of Central Floridaで産業組織心理学の博士号を取得。博士研究員として各所で就労後、Roosevelt Universityで教鞭を執る。2017年に帰国し現職。
キーワード1【相互に頼り合う関係】Interdependency
チームのゴールに基づき、個々人のゴールがお互いに頼り合う構造
たとえばスポーツでは活躍した個人が一場面で「勝った」としても、チームは負ける場合がある。職場も同じで、個人では達成できない大きな仕事=ゴールにたどり着くために力を合わせるのが、本来のチームのあり方。「チーム全体のゴール>個人のゴールと意識してください。いい意味でお互いに依存し合い、頼りにする。個人プレーに邁進する人の寄せ集めは、一時的に成果が上がるかもしれませんが、仮にスーパースターが異動したら、結果が出せない。メンバー同士の相互依存は悪いことではなく、むしろ必要不可欠な関係性です」
キーワード2【一体感】Affect【協力行動】Behavior【共通認識】Cognition
チームの一体感・協力行動・共通認識がからみあって高まる状態
3要素はそれぞれ独立するものではなく、影響し合うもの。「たとえば、一緒に取り組むと成功すると思えたら、チームに一体感が生まれ、意識の方向づけがしやすくなる。一体感があることで、助け合いの連係プレーがうまくいき、1+1=2以上の成果につながる。チームの方向性や運営方針をメンバー全体で認識し、各メンバーが持つ情報を共有する。そうすると情報を探す必要がなく、時間と労力のコストをカットできる……3つが機能しているのがよいチームです」
キーワード3【心理的安全性】Psychological Safety
個人間の信頼でチーム全体に心理的安全性をもたらす
信頼と心理的安全性は似て非なるもの。信頼は個人間の感情的態度を指し、心理的安全性は“臆することなく率直な意見を言える集団である”と構成メンバー全員の認識が一致している状態を指す。では、今現在、心理的安全性に欠けるチームで働いている人はどうしたらいいのか? 「信頼と心理的安全性は違うといっても、もちろん個人間の信頼はチームにいい影響をもたらします。他メンバーのやっていることを見ながら、個別作戦で信頼できる人を増やし、助け合いの交換を試みて。チームが変わる一歩に、きっとなります」
キーワード4【性別と世代】Gender & Generation
チームをとりまく性別や年齢のギャップ
男性中心の縦社会になっている企業はまだまだ多い。やはり性別も世代も異なる相手だからギャップが埋まらないのは仕方ない……。と、相互に理解することをあきらめそうになったら、バックグラウンドによる無意識の前提をいったん取り払ってみて。「世代や性別が違っても、人の考え方は意外と変わらない、と気づくケースもあると思います。あまりレッテルを貼りすぎず、たとえ相手が“おじさん”であっても、チーム内の一個人としてとらえてフラットな気持ちで接してみると、溝が埋まり、わかりあえないストレスが軽減されるかもしれません」
撮影/伊藤奈穂美 取材・原文/中沢明子 協力/すみっコぐらし ©2023 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ※BAILA2023年6月号掲載