チームリーダーとして活躍中の先輩をクローズアップする人気連載。今回は、人を信じて挑戦することで、可能性を広げていった東宝株式会社の田畑あすかさんのキャリアパス。
マネジメントを体系的に学んだことでひよっこリーダーから成長できた

東宝株式会社 ライツ事業部 キャラクターMD事業室 室長
田畑あすかさん

私が初めてチームリーダーになったのは、コロナ禍の2020年。
自分の担当業務と並行していたため、頑張っている姿を見せることしかできないまだひよっこのリーダーでした。本当の意味でマネジメントを学んだのは、2025年に室長に昇格してから。それまでは経験と人間力だけで勝負していたところがありましたが、管轄する人数が増えたことで言葉だけで伝えることの限界を感じ、会社の研修制度やビジネス本からマネジメントスキルを習得し始めました。とはいえ、私がずっと変わらずに大切にしているのは聴く力。
どんなに忙しくても、部下から「ちょっと時間いいですか?」と言われたら絶対に後回しにしません。この姿勢は、長年自営業をしている尊敬する母から学んだこと。立場や役割が変わっても、耳を傾ける姿勢は持ち続けていたいです。
田畑さんのHISTORY
| 22歳【2007年】 | 東宝株式会社に入社 |
| 24歳【2009年】 チャレンジ期 | 宣伝部パブリシティ室へ異動 |
| 32歳【2017年】 | 映像事業部 キャラクター事業室 |
| リーダーになった 35歳【2020年】 | キャラクター事業室 |
| 38歳【2023年】 がむしゃら期 | ライツ事業部キャラクターMD事業室 |
| 40歳【2025年】 整え期 | ライツ事業部 |
Q 今の会社に入社したきっかけは?
映画とゴジラと演劇が好きだから
すべてを手がけている会社は東宝しかなかったので、どうしても入社したかったんです。特にやりたかった業務は宣伝や広報。面白いと思った作品を「知らないのは損だから観て!」といろんな人におすすめすることは、子どもの頃から自然にやっていました(笑)。
Q ズバリ、体力はある? ない?
もともとはあったと思います
30代まではどんなに忙しくても気合で乗り越えることができましたが、40歳になった瞬間、体力がガクッと落ちたことを実感しました。生き生きと仕事をされている先輩たちは、体力がある方が多くて。仕事をする上で体力はかなり大事だと感じます。
Q 30代までにしてよかったことは?
やっぱり体力づくり!
30代の頃は運動を何もしていませんでしたが、今は毎日、スクワットなど家でできるトレーニングを15〜30分しています。記憶力の低下を痛感しているので、GeminiなどのAIを使って仕事の簡略化をしたり、脳の使用量をなるべく減らすように工夫しています。
ある一日のスケジュール
| 10:00 | 始業 |
| 11:00 | 営業管理チームのMTG |
| 12:00 | 取引先との商談 |
| 13:00 | 昼食 |
| 14:00 | 作品の定例MTG |
| 15:50 | チームメンバーと1ON1(30分ずつ) |
| 18:30 | デスクワーク(決裁の承認作業など) |
| 19:00 | グループ会社のメンバーと懇親会 |
| 22:30 | リラックスタイム |
| 24:00 | アニメや映画などの作品を鑑賞 |
| 26:00 | 就寝 |
社内・社外問わず、一日を通して多くのミーティングが。チームのマネジメントだけでなく、昨年末からは取締役を務めるグループ会社との連携も重要な業務。円滑なコミュニケーションを図れるように懇親会を企画することも。今年から、会食がない日はなるべく自炊をするようにしていて、韓国やメキシコなどの大好きな辛い料理を作ることが多い。毎日何を食べたのかをChatGPTに報告することで、なんとか自炊を習慣化できている。
仕事のマストアイテム

1 タンブラーにほうじ茶を入れて出社。飲み終えたら紅茶に切り替えて気分転換。
2 海外出張にも必ず連れていくぬいぐるみ。妹から10年前に預かり「けぷ」と名付けている。
3 お気に入りの巾着には名刺、パソコンの充電コード、ハンコなどのお仕事アイテムが。
オフの日の過ごし方

人形浄瑠璃の「文楽」を観に行くのが趣味。年に4〜5回、地方にも足を運ぶ。“演目”推しで、肝の据わった女性が登場する作品が好き。いちばん好きなキャラクターは『摂州合邦辻』の玉手御前(左の手ぬぐいのキャラ)。右は昨年末に見た『国姓爺合戦』のパンフレット。
人の期待にこたえたことでキャリアが広がっていった

『僕のヒーローアカデミア』『ハイキュー!!』『呪術廻戦』など、TOHO animationのIP(知的財産)を活用し、自社MD(グッズの企画・制作・販売)を統括している田畑さん。商品開発強化のために設立したグループ会社To-Smileの取締役も務めるなど、責任のある立場を兼任している。宣伝部で映画のパブリシティを担当していた彼女がライセンスビジネスに従事することになったのは、32歳のとき。予想外の人事だった。
「会社としてライセンス事業をさらに大きくしていく時期の異動でしたが、当時の私はライセンスのラの字も知りませんでした。アニメ好きだということを誰かが覚えていてくれて、適性があると判断してくれたのかもしれません。結果的に、人とコミュニケーションをとることが好きな自分の性にすごく合っていました」
38歳で自社MD事業に携わることになったのも、上司からの推薦。初めこそ「なぜ私が?」と戸惑ったものの、結果的に「より自分に向いていた」と振り返る。
「今の時代は自分でキャリアデザインをするのが主流だと思います。一方で、私のように人が適性を判断してくれたことで、可能性が開けるケースもある。自分だけではこのキャリアパスは描けませんでした。期待してくれた人を信じて挑戦してみることも大切だと感じます」
MD事業室でグループリーダーを務めた際は、事業の仕分けからスキーム化、人材採用まで担当し、わずか1年で売り上げを約3倍にするなど事業を拡大。その後、室長へと昇格した。
「アニメをシリーズ化するためには、ビジネスとしてお金を循環させることが重要です。私は作家ではないですし、絵を描くこともできません。直接作品を作るクリエイターにはなれませんが、グッズの売り上げを通して収益を上げ、次の作品作りに還元させることはできる。作品を作る人と作品を愛してくれる人をつなぐことがマーチャンダイジングの役割であり、私の仕事の喜びにもなっています」
「悩むのは当然」。元上司のひと言で楽になった
携わる業務内容が変わっても、前向きに、楽しみながら全力で取り組んできた田畑さん。ところが「リーダーは向いていました?」との質問には、「なかなか難しかったですね」と笑う。
「向いていなくはなかったと思うんです。大局的な事業目標を自分たちの業務に落とし込むための言語化や、タスク化、スキーム化は得意でした。中学・高校の国語の教員免許を持っていることもあり、もともと言葉で伝えることも好き。ただ、組織が拡大して直轄する人数が20人を超える規模になったことで、言葉だけに頼りすぎていた自分のやり方を反省しました。言葉のとらえ方や仕事へのモチベーションは、世代によっても人によっても違う。何年も研究されてきたマネジメントのスキルを体系的に学ぶことが必要だと感じました。がむしゃらに仕事をする姿をメンバーに見せていた時期から、今は管理職としてのビジネススキルを学んで生かす、整え期だと感じています」
マネジメントに悩んでいた田畑さんを助けてくれたのはかつての上司。
「すごく体育会系で、なんでも運動や部活にたとえる方なのですが、私が『たくさんの部下のマネジメントに悩んでいる!』と相談すると、『あなたは部活とかやってないんだから、人を束ねることに悩むのは当然! 慣れとできることをやればいい!』と言ってくれたんです。『そっか、悩んで当然なんだよな!』と思うとスッと楽になりました。若い頃から私の個性を知ってくれている尊敬する上司や、先輩たちに今も助けられています。そもそもマネジメントに関する本が世の中にたくさん存在しているのは、世の管理職がみんな悩んでいるということ(笑)。悩むのは当然だと思うだけで、心が軽くなると思います」
撮影/田中 瞳 ヘア&メイク/浅井千緩 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2026年5月号掲載

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。













































