平和に穏やかに過ごしたいのに、なんだかすり減る…。“争いたくない”けど、ときどきもやもやする人へ、カウンセラーの大野萌子さんとイラストレーターの描き子さんがうまく立ち回る方法&心の持ちようをアドバイス! 今回は、聞く耳を持たない上司の攻略法をご紹介します。
聞く耳をもたず、一方的に怒る上司。言っても無駄とは思いつつ…
「今年の4月に転職しました。入ったチームのリーダーが自分の思いどおりにいかないとすぐにすごく怒るタイプで、面倒くさいんです。争いたくない自分は、リーダーに対して“はい”しか言わなくなりました。周りも私と同様で、間違いを誰も指摘しないよくないチームになっている気がします。どうすれば争わずに上司に意見を言えるでしょうか」(31歳・SE)対策求ムの声が!
“はい”に加えて要件を復唱してあげるだけでもOK
(大野さん)
「この上司はみんなから厄介だと思われているせいで、承認欲求が満たされてないんでしょう。『はい』に加えて『○○の件、△△というご指示承知しました、ありがとうございます』のように、復唱というサービス精神を添えると、受け止め感が伝わり怒りを予防できます。こういう上司の攻略法は、早めの相談。このタイプは、知らされないことを嫌います。決定前でも先にちょっとだけ話しておくことで、怒りを未然に防止することができますよ」
いつも怒っている人は優しい言葉をかけてあげると態度が変わる
(描き子さん)
「このタイプの上司がめんどくさいの、わかります(笑)。“はいしか言わない”ってある意味正解です。いつもぷんぷんしてる人って、同時に傷ついて困っている人であることも多い。おそらく、上司も周りが萎縮していることをわかってるんじゃないでしょうか。理解者がいないから余計ぷんぷんしていく。なので“よく気がつかれるから厳しく指摘してくださるんですよね”などと優しい言葉をかけてみると、態度が和らぐこともありますよ」
自分以外への叱責でも、ストレスを感じてしまう
「職場で上司が後輩を叱っているところを見ると、自分のことのようにドキドキ。また、他人への愚痴を聞くのも苦手。“それを私にぶつけても何も解決しないし、もう少し建設的な解決方法はないのか”と思ってしまうが、嫌われたくないので最後まで聞いてしまう」(38歳・薬剤師)ほか多数。
愚痴に疲弊しないためには、同感をせずに共感すること
(大野さん)
「後輩が叱られているとき、つらいならトイレに立ちましょう。耳に入らないようにし、自分を守ってください。愚痴を“嫌われたくないので聞いてしまう”こと自体は変えづらいので、愚痴を流せる方法をお教えします。それは、同感せず共感すること。同感は“私もそう思う”と自分の感情を動かすので疲弊します。共感は“あなたはそう思うのね”と相手を肯定すること。自分の感情は動かさなくていい。相手も満足し、自分も疲れないのは共感です」
悪い言葉を聞きたくないという健全な自分をまず褒めてあげて
(描き子さん)
「“他人に対するものでも悪い言葉を聞きたくない”というのは、健全なこと。認めて褒めてあげるべきものだと思います。ただ“嫌われたくないので聞いている”、という部分は少し気になりますね。愚痴を聞くにしても聞かないにしても、“自分がどうしたいのか”を軸にして考えてみてほしいです。“嫌われたくないから聞く!”でも“愚痴は苦手だから聞かない!”でもどちらでもいいと思いますが、“自分がどうしたいか”で決めるとラクになるかも」
カウンセラー
大野萌子さん
日本メンタルアップ支援機構代表理事。人間関係改善コミュニケーション、ストレスマネジメントなどが得意分野。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版 1540円)など。
イラストレーター。エッセイスト。『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円)など、エッセイ本も出版。生きづらさ解消に関する情報を主にTwitter(@kaqico)で発信している。
撮影/花盛友里 イラスト/いいあい 取材・原文/東 美希 ※BAILA2021年12月号掲載