同じバイラ世代でも、それほど食べてないのに太りやすい人、けっこう食べているのに太りにくい人の2パターンが存在。その理由、実は腸内環境のせいかもしれません! まずは「デブ菌」「やせ菌」などのメカニズムを知ることからはじめよう。どうすれば「やせ腸」になるか、専門家がわかりやすく解説します!
1.デブ腸とやせ腸の違いを今すぐチェック!
あなたはどっち?《デブorやせ腸 CHECK》

朝食は食べないこともある
食事の時間は日によってまちまち
コンビニ・ファストフード食を週3回以上食べる
毎日アルコールを摂取している
夜遅く食べることがある
水分はあまりとらない
糖質オフダイエットをしている
一日の運動時間は30分以下
週3日以上、筋トレを頑張っている
便秘をしたらすぐ薬を飲む
旅行中は便秘する
冷え性の自覚あり
外出先では基本、便意・おならはガマンする
花粉症などのアレルギーに悩んでいる
疲れやすい
ちょっとしたことでイライラしやすい
便秘ぎみ・下痢ぎみ
肌荒れや吹き出ものに悩んでいる
野菜より肉が好き
人間関係でストレスを感じている
☑が0~3個
《やせ腸》
やせ菌が優勢のやせ腸の持ち主。運動のしすぎなど意外なデブ腸習慣もあるので注意!
☑が4〜10個
やせ腸寄りの《普通腸》
やせ菌優勢の腸。とはいえ腸内環境は加齢で悪化しやすいので、やせ腸習慣を取り入れて。
☑が11~15個
デブ腸寄りの《普通腸》
デブ菌がやや優勢。やせ菌は食生活や習慣を少し変えるだけで増えるのでぜひトライを。
☑が16個以上
《デブ腸》
腸内でデブ菌増殖中。放置=太るだけでなく病気になるおそれも。食事や習慣を見直して。
【デブ腸】【やせ腸】とは?
デブ腸、やせ腸ってどういうこと!? 腸内環境のよし悪しがダイエットに影響を与えるの? 気になるメカニズムを専門家に伺いました。
腸内環境=健康に関与するイメージですが、実は体型への影響も大。医師の工藤孝文先生に伺いました。
「腸内には善玉菌、悪玉菌、優勢なほうに味方をする日和見菌の3種類が存在します。日和見菌の中には、脂肪を燃焼してやせやすい体に導く『バクテロイデス門』というグループのやせ菌と、脂肪や糖をため込む『フィルミクテス門』というグループのデブ菌がいます。やせ菌は善玉菌、デブ菌は悪玉菌を好むため、腸内環境をよくすることでやせやすい体に近づけるのです」
デブ菌を特に注意すべき年代は?
「仕事が多忙でストレスも多く、自律神経が乱れやすい30代は要注意。自律神経は腸に影響を与えます。腸にいい習慣を行うと、2週間で腸内細菌に変化が。実践できそうなことを見つけて、ぜひ継続してみてください」
デブ・やせを決める二つの日和見菌
《やせ菌》(バクテロイデス門)

◦ 消化されない食物繊維を大腸で発酵させ「短鎖脂肪酸」をつくり、全身に運ぶ
◦ 脂肪細胞が栄養分を取り込むのを抑える
◦ 脂肪の燃焼を助ける
◦ 便秘改善
日和見菌の一種。好物の食物繊維を腸内で発酵させる際に、短鎖脂肪酸を産生。全身に運ばれた短鎖脂肪酸は、脂肪細胞が栄養分を取り込むのを抑えたり、脂肪の燃焼を助ける。
《デブ菌》(フィルミクテス門)

◦ 腸内で最も数が多い、日和見菌の一種
◦ カスからも過剰に栄養を吸収
◦ 同じ量食べても脂肪や糖をため込む
日和見菌の一種で、好物は脂肪や糖質。腸内で便になるはずの残りカスからも栄養を吸収する性質が。飢餓と闘ってきた人類を、少ない栄養でも生存させてきた功労者でもある。
やせ腸になる仕組み

やせ菌、デブ菌は食べたものの吸収に関わる臓器に存在
やせ菌、デブ菌が存在するのは腸。小腸は全身の細胞に必要な栄養素のほとんどを吸収。大腸は液体の残りものから水分を吸収し、固形の大便をつくる場所。デブ菌の「フィルミクテス門」は、残りカスからも過剰に栄養を吸収して太らせます。もう一方のやせ菌、「バクテロイデス門」は、食物繊維を発酵させる際に脂肪をため込ませない物質・短鎖脂肪酸を産生。栄養や水分の吸収に関わる臓器に、やせるか太るかが左右される腸内細菌が存在するのです。
腸内に《悪玉菌》が多いと…

腸内に脂肪や糖質が多いとデブ菌が勢力を増し、デブ腸に。食べる量は少なくても栄養を吸収するため、太りやすく。増殖すると、怖い病気に進行する恐れも。
腸内に《善玉菌》が多いと…

やせ菌が増えると、短鎖脂肪酸が増殖したやせ腸に。短鎖脂肪酸が全身に運ばれると、脂肪の燃焼を助けてくれる。やせるだけでなく健康的な体にも近づける!
2.デブ腸からやせ腸になる生活習慣
【新習慣1】家でゴロゴロするときは…
×《デブ腸》横向き寝でスマホ&テレビ観賞
○《やせ腸》うつぶせでゴロゴロしてくつろぐ

うつぶせゴロゴロが腸のマッサージになる
腸には、食べ物とともにのみ込んだガスが正常時でも200mlほどたまっています。腸内環境が悪化すると悪玉菌が出すガスが加わり、お腹が張っておならが出やすい状態に。ガス腹の解消には硬い床でのうつぶせ寝が有効。左右にゴロゴロ転がるとガスだまりを刺激できます。お腹の下に小さなボールを置いて行うと、小腸まで刺激が可能に!
【新習慣2】表情は…
×《デブ腸》クールな無表情
○《やせ腸》口角を上げた笑顔

作り笑いでも脳はリラックスする
自律神経の副交感神経が優位になり、体がリラックスすると大腸の動きがスムーズに。そのスイッチの切り替えに即効性があるのが「笑顔」。口角が上がると脳が「楽しい」と解釈し、セロトニンやβエンドルフィンなどの幸福感を高める脳内伝達物質を分泌。リラックスに導きます。同じように、ゆっくり話すこともリラックスに効果が。早口になりがちな人はゆっくりを意識して。
【新習慣.】朝の洗顔は…
×《デブ腸》ぬるま湯で優しく
○《やせ腸》冷たい水でシャキッと

冷水で自律神経が刺激され、腸が動きだす
毎朝の快便は、やせ腸への第一歩。トイレで3分頑張ってみても排便できない人におすすめなのが、冷たい水での洗顔をすること。自律神経が刺激され、腸が動きだすことが期待できます。顔に冷水をかけるのがつらい人は、冷たい水を手にかけるだけでもOK! 大切なのは、毎朝の習慣にすること。規則正しいリズムも便意を呼ぶポイントです。
【新習慣4】運動は…
×《デブ腸》毎日キツめの筋トレをしている
○《やせ腸》一日15分程度の軽いウォーキング
ハードな運動は腸の動きを悪くする
ハードな筋トレやジョギングをすると、交感神経が優位な状態に。運動時の強いストレスで腸の動きが悪くなり、便秘になりがちです。腸内環境をよくする観点から考えると、副交感神経が優位になる、リラックス状態になれる運動がベスト。おすすめはウォーキング。息切れしない程度の速足で、15〜20分歩くことを日々の習慣にしてみて。
【新習慣5】デスク仕事中は…
×《デブ腸》動かざること山のごとし
○《やせ腸》1時間に1回はちょこちょこ動く

腸への刺激がないと腸の血流が悪化
歩くことで腸は揺すられますが、座りっぱなしでは腸への刺激が皆無。血流が滞り、動きが悪くなります。さらに猫背の姿勢だとお腹が「く」の字に曲がり、腸が圧迫されて便が詰まりやすい状態に。激しい運動は不要ですが、座りっぱなしは×。上体をひねったり、左右に倒したりすればOK。1時間に1回は体を軽く動かすよう心がけましょう。
【新習慣6】週末の朝は…
×《デブ腸》たっぷり朝寝坊して日頃の睡眠不足を解消
○《やせ腸》いつもと同じ時間に起きる

寝だめすると腸が時差ボケに!
休日に寝だめするのは、デブ腸まっしぐらのNGな生活習慣。睡眠時間がバラバラだと腸は時差ボケの状態に。大腸の動きと関連している自律神経のリズムがくるってしまい、腸内環境の悪化につながるのです。休日の寝だめはプラス1時間以内にして、睡眠不足は20分以内の昼寝でカバーを。朝は日光を浴びて朝食をとり、体内時計を整えましょう。
【新習慣7】スマホを見るときは…
×《デブ腸》うつむいて操作している
○《やせ腸》スマホを目の高さに

スマホ猫背が腸の動きをつかさどる神経を圧迫
体重50kgで頭の重さは約5kg。下を向いて背中を丸めると、首や背中への負荷は3〜5倍に激増します。長時間、猫背の姿勢でスマホ操作を続けると、内臓や背骨に沿って走っている神経が圧迫されるので、腸の動きが鈍くなりがち。スマホを目の高さに上げて首を下に向けすぎないようにしたり、スマホを持つひじを手で支え、負担を減らして。
3.デブ腸からやせ腸になる食習慣
お酒を飲むなら…
×《デブ腸》体によさそうな赤ワイン
○《やせ腸》「とりあえず」から最後までビール

赤ワインで便通が悪くなるかも!?
赤ワインに含まれるポリフェノールの一種「レスベラトロール」には抗酸化作用が。ところがワインを飲んでも「レスベラトロール」は体に摂取されにくいことが判明。さらに赤ワインに含まれるタンニンやアントシアニンも便秘を悪化させやすい成分。お酒を飲むなら原材料のホップが疲労回復に効くビールがおすすめ。ただし一日に飲む量の目安は、腸管に刺激を与えない量の350mlまでと心得て。

一人で食事するときは…
×《デブ腸》スマホやテレビを見ながら
○《やせ腸》食べることに集中

ながら食べ=食べすぎのもと
人間の体は現状維持を優先するようにできています。急激にやせればもとに戻そうとリバウンドし、ベスト体重より太ると、脂肪を燃焼するようにコントロールします。ところが、ながら食べをすると意識がほかに向くためコントロール力が低下。食べても満足感が得られないため消化しきれないほど食べすぎてしまい、デブ菌が増加するのです。
3食のバランスは…
×《デブ腸》夕食がいちばんボリューミー
○《やせ腸》ガッツリ食べるのはランチ

胃が空なら腸は便づくりに集中
腸が最も働くのは寝ている間。胃を空にして眠ると、就寝中に便をつくれるため、翌朝スムーズに排便できます。寝る前に食べると、就寝中は消化に忙しく便をつくれない状態に。便秘となり、腸内はデブ菌優勢になります。昼はしっかり、夜は軽めがやせ腸への近道。仕事で夕食が遅くなる人は、主食やメインのおかずは夕方とり、帰宅後はスープなど消化しやすいものだけに。
便秘解消のために…
×《デブ腸》さつまいもなど食物繊維が多い食材をたくさん食べる
○《やせ腸》いろいろ食べられる和定食を選ぶ

食物繊維は不溶性と水溶性の両方を
食物繊維には不溶性と水溶性の2種類が。いも類やごぼう、キャベツ、玄米などに多く含まれる不溶性食物繊維は便のカサを増やす働きがありますが、繊維状のボールとなり、栓となって便秘になる危険性も。海藻類や果物に多く含まれる水溶性食物繊維もとるようにしましょう。腸内環境にベストな摂取バランスは、不溶性2対水溶性1。
糖質制限するときは…
×《デブ腸》徹底的に糖質をシャットアウト
○《やせ腸》ご飯の代わりに玄米やオートミール
糖質制限は食物繊維が不足しがち
ダイエットで人気の主食を食べない糖質制限は、実はデブ菌を増やしかねません。炭水化物を避けると腸内環境のエサとなる食物繊維の摂取量が減り、腸内環境が悪化しがちです。糖質は完全に抜くのではなく、血糖値が上がりにくい主食を選んで食べるようにしましょう。おすすめは、白米より食物繊維の含有量が多い玄米やオートミール。
ダイエット中に甘みが欲しいときは…
×《デブ腸》低カロリーの人工甘味料に頼る
○《やせ腸》砂糖からオリゴ糖に切り替える
やせ菌のエサになるオリゴ糖が最適!
オリゴ糖とは玉ねぎや豆類に含まれている糖の一種で、砂糖の代わりに使えます。消化されずに腸まで届き、やせ菌のエサになってくれるため、甘みを楽しみつつ腸内環境をよくできるのです。カロリーも上白糖が1g約4kcalに対して、オリゴ糖は約2〜3kcalと低め。ダイエット向きといえます。
食べ順は…
×《デブ腸》まずはご飯ですきっ腹をなだめる
○《やせ腸》肉から食事をスタートする

肉を食べると満腹中枢が刺激される
一気にドカ食いすると、消化しきれない食べ物が腐敗して悪玉菌が優勢の腸内に。そこでおすすめしたいのが、食事ではまず肉から食べ始めること。肉を食べると、満腹中枢に働きかけるインクレチンというホルモンが分泌され、食事量が抑えられます。野菜から食べても血糖値の上がり具合がゆるやかで健康的ですが、満腹効果は肉に軍配!

みやま市工藤内科院長
工藤孝文先生
糖尿病、ダイエット治療、漢方治療が専門。テレビに肥満治療専門家として登場するなどメディア出演も多数。

『医師が教える“デブ腸”を“やせ腸”に変える50の法則 美人体質は腸が9割』
昨年秋の発売以来、人気を博している工藤先生の「腸美活」指南本(学研プラス)も注目。
監修/工藤孝文 イラスト/山中玲奈 取材・原文/櫻木えみ 構成/斉藤壮一郎〈BAILA〉 ※BAILA2021年4月号掲載