仕事に追われて夕食が遅い時間になったとき、消化に時間がかかるものをとると胃に負担が。夜遅く食べても胃にやさしい食事のレシピから、消化のよい食材、コンビニで買える胃にやさしいものなどを総まとめ。
1.「胃を休める」とは?
総合内科専門医、循環器専門医
池谷敏郎先生
池谷医院理事長兼院長。医学博士。臨床の現場に立つかたわら、テレビや雑誌での医学解説や、講演など多方面で活躍。著書は『人生は「胃」で決まる!胃弱のトリセツ』(毎日新聞出版)など。
【胃】
食べすぎや睡眠不足、ストレスなど、生活習慣や心の状態などによってすぐにトラブルが起きるのが胃。常にお疲れモードな臓器だから、意識していたわってあげることが大事。
胃は「もの言う臓器」。ストレスや生活習慣を見直すきっかけに
ストレスがあると胃が痛くなったり、食べすぎると胃もたれしたり。バイラ世代に多いのがこんな胃の不調。「胃はストレスや食事の内容などがすぐに不調として現れる“ものを言う臓器”。胃が悲鳴を上げたら、生活習慣を見直すきっかけととらえましょう。胃の安定はメンタルやパフォーマンスの向上につながるので、働く世代は特にケアを」(池谷敏郎先生)
肩こりや腰痛には胃の疲れ・負担が隠れていることも
肩こりや腰痛は、その陰に胃の疲れや負担が隠れていることがあるとか。「胃が弱っている人はお腹を丸めることで腹筋の緊張を取ろうとし、自然と姿勢が悪くなります。お腹側の負担は楽になっても背中や腰に筋肉疲労が出てしまい、その結果、腰痛や肩・首こりを招いていることも。なかなか治らない人の根本原因は胃にあったりしますよ」(池谷敏郎先生)
その不調、機能性ディスペプシアという病気かも?
胃痛や胃もたれ、お腹の張り、食べていないのに感じる満腹感、食欲不振、胸やけなどの症状があるのに異常が見つからない場合は“機能性ディスペプシア”という病気の可能性が。「これは胃の動きが悪くなったり、胃の知覚過敏などによって起き、大きな原因はストレス。心身の疲労や睡眠不足、生活リズムの乱れなども影響するので要注意」(池谷敏郎先生)
食後や寝る前に胃酸が気になる人は「左向き」に寝る
胃の中の胃酸がのどや口に込み上げてくるような感じがしたり、胸やけを起こす人は寝方で緩和も。「こういった症状は逆流性食道炎と呼ばれ胃酸が逆流するために起こり、特に食後と夜間に起きがち。胃の入り口の“噴門”は胃の右上側にあるので、そちら側が上になるように左向きに寝ると胃酸が逆流しにくくなるので、ラクになる方が多いです」(池谷敏郎先生)
健康やダイエットにいい食品は、胃に優しいとは限らない
健康やダイエットにいいといわれている食品の中には胃に負担をかけるものも。「ダイエットにいいからとお酢を飲んでいる人がいますが、酸味が強くて胃に刺激になり、胃酸を増やしてしまいます。また緑茶にはカフェインが多いので胃に刺激になり、飲みすぎると胃酸過多に。とると胃の調子が悪くなるものを自分でリストアップして予防を」(池谷敏郎先生)
2.胃にやさしくて栄養たっぷりなレシピ4選
管理栄養士
金丸絵里加先生
料理研究家。栄養指導やダイエットアドバイスなども加えながら健康的な食生活のためのレシピを提案。『夫婦ふたりの健康を守る! シニアごはん』(エイ出版)などレシピ本も多数。
【半熟たまご粥】ふわふわの半熟卵と白だしのほっと安らぐ味
たまご粥こそ最強のリカバリー食!
お粥×半熟卵の消化しやすい上に栄養価の高い組み合わせ。簡単に作れるのも、疲れた心と体にぴったり。
POINT
卵は半熟が最も消化がいいので、最後に溶き卵を入れて半熟にすると◎。かたくなりすぎたり生のままにならないように注意!
●材料1人分
ご飯……100g
卵……1個
水……300㎖
白だし……小さじ2
(白だしの代わりに、和風だしの素3gとしょうゆ小さじ1で味つけしても)
塩……少々
●作り方
①鍋に水とご飯、白だしを入れて弱めの中火にかけ、煮立ったら弱火に。そのままご飯がやわらかくなるまで約5~7分煮る。
②塩で味をととのえ、溶き卵を回し入れて火を止める。鍋にふたをして余熱で火を通し、器に盛る。
【カリフラワーとくずし豆腐のごまみそスープ】消化がいいすりごまが味のアクセントに
POINT
消化のいいタンパク源の代表である豆腐をくずして加えたスープ。カリフラワーは小さく切って煮込むと消化がよくなる
●材料1人分
カリフラワー……60g
木綿豆腐……1/4丁(50g)
だし……250㎖
白すりごま……小さじ1
味噌……小さじ2~3
●作り方
カリフラワーは小房に分けて、さらに半分に切る。鍋にだしを入れ、カリフラワーを加えて強めの中火にかけ、煮立ったら弱火にして3~4分煮る。豆腐を手でくずして加え、さらに2~3分煮て、味噌を溶きすりごまを入れ火を止め、器に盛る。
【キャベツとツナのトマトスープ】トマトはジュースを使って消化スピードUP
POINT
胃粘膜の修復を促すキャベジンが豊富なキャベツを小さく切ってミックス。身がやわらかい水煮缶のツナも消化が早め
●材料1人分
キャベツ……1~2枚
ツナ水煮缶……小1個
トマトジュース(無塩)200㎖
コンソメスープの素……小さじ1
きび砂糖……小さじ1/2(砂糖で代用も可)
塩……少々
●作り方
①鍋にトマトジュースとコンソメ、きび砂糖を入れて火にかけ、煮立ったらツナを缶汁ごと加え、塩で味をととのえる。
②一口大よりやや小さめに切ったキャベツを加えて、やわらかくなるまで煮る。
【ブロッコリーの玉ねぎミルクスープ】胃にやさしい牛乳がベースのほっこりする味わい
POINT
ブロッコリーは小さく切って煮込むと消化によい。玉ねぎは繊維を断ち切るよう、繊維に対して垂直に切ると胃にやさしい
●材料1人分
ブロッコリー……60g
玉ねぎ……1/4個
水……100㎖
コンソメスープの素……小さじ1/2
牛乳……100㎖
塩……少々
●作り方
①ブロッコリーは小房に分けさらに半分に切る。玉ねぎは繊維を断ち切って7~8㎜幅に切る。
②鍋に玉ねぎと水、コンソメを入れて強めの中火にかけ、煮立ったらブロッコリーも加えて3~4分煮て、牛乳を加え、塩で味をととのえひと煮立ちしたら火を止める。
3.迷っときはこれ!胃にやさしい食材12選
1.トースト
血糖値が上がりにくい全粒粉パンよりも精製度の高い白い食パンのほうが消化はいい。生よりもトーストした状態のほうが消化しやすく、耳を落とせばさらに胃にやさしい
2.うどん
小麦粉に油を加えるラーメンやそうめんよりも、小麦粉だけで作るうどんは消化が早く、胃にやさしい。のみ込まず、よくかんで食べるのがポイント。そばは食物繊維が多いので消化が遅め
3.甘酒
甘酒は麹菌の酵素によってブドウ糖がすでに分解されているので、消化しやすい飲み物。“飲む点滴”と呼ばれるほど栄養も豊富で、食欲がないときに最適
4.牛乳
牛乳は胃酸を中和する作用がある、胃にやさしい食品。冷たい状態で飲むと胃を冷やすので、60℃程度に温めて飲むのがベター。乳製品では、ヨーグルトも消化がいい
5.大根
大根に含まれるジアスターゼはでんぷんを消化する酵素で、胃腸の機能を助ける働きがある。胃酸を中和する働きもあり、げっぷや胸やけの症状にもおすすめな食材
こう食べる!
ジアスターゼの作用は加熱すると失われるので、大根おろしにして生のまま食べるのが最も効果的。炭水化物をとるときに組み合わせて
6.長芋
長芋にも大根と同じ消化酵素のジアスターゼが多く、長芋の主成分のでんぷんの消化を助けてくれる。芋の中では珍しく生で食べられるのはジアスターゼが多いから
こう食べる!
ジアスターゼは加熱に弱いので、長芋はおろしてとろろにして食べるのがおすすめ。また、食べやすい大きさに刻んで生で食べても
7.キャベツ
キャベツには、胃粘膜の保護・修復を促進する働きがあり、胃薬にも用いられているキャベジン(ビタミンU)という成分が含まれる。“食べる胃薬”ともいえる野菜
こう食べる!
キャベジンは加熱に弱く、せん切りを生で食べるのが◎。食べすぎると胃を冷やすので、胃が弱っているときは無理せず煮てやわらかくして
8.ひき肉
肉の中では、肉が細かくなっているひき肉が消化が早く胃への負担が少ない。特に脂肪が少ない鶏むねひき肉が◎。牛肉や豚肉なら脂肪が少ない赤身のひき肉を選んで
こう食べる!
炒め物やハンバーグなど、油を使う料理に使うと消化に時間がかかって逆に胃に負担をかけるので、スープに加えるのがよい方法
9.白身魚
魚の中では、タラ、カレイ、タイなどの白身魚が、脂質が少なく消化がいい。サンマやサバ、ブリなどの脂質が多い青魚や、マグロのトロなどはあまり消化がよくない
10.豆腐
大豆を細かく加工した豆腐やきな粉などは、胃が弱ったときでもタンパク質がしっかりとれる優秀食品。大豆は本来かたい皮に包まれているので煮豆などは消化しにくい
11.納豆
納豆は大豆をまるごと使っているが、発酵によって消化しやすくなるので、胃弱さんにもおすすめの食品。納豆を細かく砕いたひきわり納豆ならさらに消化がいい
12.カッテージチーズ
チーズは脂肪が多いので消化に時間がかかるけれど、低脂肪のカッテージチーズなら消化が早く、胃への負担も少ない。バターの代わりにトーストに塗るのがおすすめ
4.コンビニで買える胃にやさしい食事&スイーツ10選
【鍋焼きうどん】
煮込みなら麺も具もやわらかい
もともと消化がよいうどんを煮込んである鍋焼きうどんは、消化がさらによい上、満足感も高いのでおすすめ。ただし、天ぷらなどの油が多い具がのっていないものを選ぶのがポイント。鶏肉や卵などは消化がいいのでOK
【茶碗蒸し】
液体に近くて胃にやさしい
やわらかくて油を使わずに作る茶碗蒸しは、栄養がとれて、消化が早く、胃に負担をかけにくい。具もエビや鶏肉などそれほど消化に時間がかからないものが多いので安心。物足りないなら、ご飯やお粥をプラスしても
【ワンタンスープ】
皮だけのワンタンは消化が早い
ワンタンは小麦粉で作るので消化がよい食品。市販のワンタンスープは、具なしのワンタンを使っているものが多いので胃にやさしい。ただ、肉などの具入りのワンタンだと油を使っている分、消化に時間がかかるので注意
【お鍋】
具だくさんで満足度も高い
鍋料理は具を煮込むので野菜の食物繊維もやわらかくなる上、油を使わないので胃に負担をかけにくくお腹も大満足。市販の鍋なら、脂肪の少ない鶏肉や白身魚や、豆腐など消化が早い具を使ったものを選ぶのがポイント
【おでん】
消化がいい食材を選べばOK
おでんは消化にいい具を選べばOK。消化を助ける成分が含まれる大根、白身魚から作るちくわやはんぺん、大豆製品の油揚げ、卵などは比較的消化がよくおすすめ。油の多い肉や、食物繊維が多いこんにゃくなどは避けて
【グラタン】
チーズ少なめのものを
牛乳や小麦粉をベースに作るグラタンは、意外と消化がよく胃にやさしいのに、コクがあって満足感が高め。特にマカロニグラタンは胃にやさしい。脂肪が多く、消化に時間がかかるチーズをあまり使っていないものを
【生クリーム不使用のプリン】
シンプルな牛乳&卵を
プリンは、牛乳と卵で作られたシンプルなものなら消化が早めで胃にやさしいので食べてOK。ただし、脂肪が多い生クリームが入っているプリンだと消化が遅くなって負担になるので、商品の成分表をチェックして選ぶこと
【牛乳プリン】
ゼラチンベースが◎
牛乳は消化がいいので、シンプルな牛乳プリンは胃にやさしいおやつ。ただし、食物繊維が多い寒天をベースに使ったものは消化に時間がかかって胃が疲れるので、コラーゲンからできているゼラチンベースを選ぶのが正解
【カスタードシュークリーム】
高脂肪の生クリームはNG
シュークリームはクリームの種類に注意。生クリームは脂肪が多いが、卵や牛乳、小麦粉で作るカスタードクリームはそこまで脂肪が多くなく比較的消化は早め。選ぶなら生クリーム不使用のカスタードシュークリームに
【芋ようかん】
こした芋は胃に負担が少ない
さつまいもは食物繊維が多いけれど、芋ようかんはさつまいもをこして作るので消化に時間がかからない。普通のようかんを作るときには寒天を使うが、芋ようかんは寒天を使わないものも多く、食物繊維が少なめで胃にやさしい
意外とNG!
お酒はやっぱりダメ
アルコールを飲むと胃酸が増え、胃の血流がよくなって食欲が増してしまう。胃が元気なときはいいけれど、弱っているときは胃酸によって胃粘膜が傷つくので控えるべき。調子がいいときも飲みすぎないように気をつけて
チョコレートすべて
チョコレートにはカフェインが含まれていて胃に刺激になるので、胃が弱っているときには控えたほうがいいおやつ。特にカカオ含有量が多いハイカカオのチョコレートのほうがカフェインの含有量も多いので避けるのが無難
撮影/ケビン・チャン、佐々木美果 スタイリスト/タカシバユミ、河野亜紀 レシピ・調理/金丸絵里加 取材・原文/和田美穂 ※BAILA2022年3月号掲載