「受けたほうがいいと思いつつ、積極的に行く気になれない」。そんな私たちの本音を産婦人科医の善方裕美先生に相談。「婦人科に行ってよかった!」というバイラ読者の体験談やもっと気軽に受診しようと思える10の回答をお届けします。
よしかた産婦人科 院長
善方裕美先生
横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士。生理にまつわる様々な悩みに、カウンセリング、ホルモン治療、漢方薬、食事、運動など多方面のアプローチで治療を行う。
『女医が教える閉経の教科書』
秀和システム 1760円
1.【婦人科検診に行こう】医師のコメント&バイラ世代の「行ってよかった」エピソード
“忙しく働く女性の人生のサポーターに”
BAILA読者162人のアンケート結果によると、婦人科の受診頻度は人それぞれながら、“あまり行きたくない”と回答している人が6割近く。そんな率直な気持ちを産婦人科医善方先生に打ち明けてみると……
「働く30代の女性は本当にお忙しいですよね。なかなか自分の体にいたわりの気持ちを向ける余裕のない方が多いように思います。でもファッションで外見を整えるのと同じ感覚で、自分の体の内側にも目を向けて整えてほしい。そのためにも婦人科を怖いところと思わずに利用していただきたいのです。夢や目標をかなえようとするときに、体の状態が手かせ足かせになったらもったいない! 女性特有の病気はもちろん、小さな心身の不調まで包括的に対応するのが婦人科医で、いわば人生を並走するサポーターです。来ていただくと、不調が楽になったり、将来の病気が予防できたりと必ずいいことがあります。一人で頑張らず、ぜひサポーターをつけて人生を輝かせてください」
Q.婦人科を受診する頻度はどのくらい ですか?
Q.あなたにとって婦人科はあまり 行きたくないところ ですか?
アンケート調査によると自主的に婦人科を受診している人は少なくないものの、積極的には行っていない人のほうが多数派。婦人科はあまり行きたくないところと答えた人も多い。
Q.婦人科を受診してよかったと思いますか?
70%が行ってよかったと回答!
婦人科を受診してよかったと回答した人は全体の70%。そこで、そんな人たちのエピソードをご紹介。不安な気持ちで受診したけれど、結果的に安心できたという声が多数。
私たちの「行ってよかった!」 エピソード
子宮がん検診で卵巣腫瘍が見つかった
コロナ禍になってから受診を控えていましたが、先日4年ぶりに子宮頸がん検診を受けたら、卵巣腫瘍(良性)が発見された。検査を受けてよかったです。(37歳・主婦)
受診して異常なしとわかったら安心して痛みが消えた
子宮に痛みがあったので受診したところ異常なしでした。お医者さんから大丈夫と言ってもらったら安心し、痛みも消えたので、心因性のものもあったのかも。(30歳・営業)
重かった生理がピルで楽になり、最強の気分
生理が年々重くなり婦人科を受診したら子宮内膜症が発覚。ピルを飲んだら生理が軽くなって楽に。生理を気にしなくていい体を手に入れて最強の気分。(34歳・IT事務)
先生が検診の時期を案内してくれるから毎年受けていて安心
PMSがあり通院中。前回の記録からそろそろがん検診の時期ですねと先生から声がけしてくれるので毎年受けているが、安心できるので高い金額ではない。(38歳・飲食業)
半年に1回、子宮の超音波検査を受けています
ピルを6年ほど飲んでいるので2カ月に1回受診。半年に1回子宮の超音波検査を受けているので、何かあっても早期発見できると思うと安心感があります。(30歳・パート)
不調があればすぐに相談でき、予防接種なども受けられて楽
生理で気分が乱高下するのでピルを常飲。不調があれば先生にすぐに相談でき、近所なので予防接種なども受けていて、わざわざ内科に行かなくてよくて楽。(36歳・編集)
母が子宮頸がん歴があるので心配で受診。異常がなくホッ
貧血がひどく、母が子宮頸がん歴があることもあって心配になって受診。検査をしたら子宮頸がんではなかった。不安を払拭できて本当にホッとした。(33歳・医療事務)
医師からの回答はどんな情報より安心できる!
不正出血があったのですぐ婦人科を受診。誰にも相談できない悩みや不安なことを相談でき、医師からの回答はどんな情報よりも安心できる。(33歳・監査法人アシスタント)
病気が見つかり手術。今後の妊娠を考えた治療をしてもらえた
生理痛がひどく、婦人科へ。卵巣嚢腫、チョコレート嚢胞が見つかり即手術に。今後の妊娠を考えた治療をしてもらえて、勇気を出して受診してよかった。(33歳・公務員)
健診の予約、してみようっと!
2.内診が恥ずかしい、痛みが怖い...できれば行きたくない気持ちに専門家がアドバイス!
内診がとにかく恥ずかしいんですが…
内診は必ずしも受けなくてもいいものです。医師にとって“秘密の花園”ではないと知っておいて
読者アンケートの中で、婦人科に行きたくない理由として最も多く挙げられたのが、とにかく、“内診が恥ずかしい”ということ。「確かに初めて婦人科を受診される人の中には、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで来られる人もいます。でも医師にとって性器は、“秘密の花園”的な性的な場所としてはまったく見ていなくて、その中や病気を診ようとしているんですよね。最近は内診台も、座ると自動で足が開くようになっていたりと恥ずかしさを軽減する工夫がされていたり、昔と違って医師もプライバシーに配慮するようになっています。症状や状態により、内診をしなくても、おなかの上からの超音波検査で代用できることもあります。まずは内診に不安があることを医師に相談してみましょう」
内診の痛みが怖くて足が遠のきます…
いかに素早く終わらせるかは医師の腕! 緊張するほど痛みは増すので、深呼吸を
「内診の痛みは、主に子宮頸がん検診のときに、膣から子宮鏡を入れて膣を広げるときに生じる痛みですね。痛みを軽減させる方法としては、なるべくスピーディに終わらせることに尽きます。ただこの素早さは医師の腕や経験による部分も大きく、患者さんが事前に判断するのは難しいと思います。ご自身でできることとしては、内診が怖くて緊張していると膣に力が入って、子宮鏡を入れたときに膣が開きにくくなって痛みが強くなるので、内診の前に深呼吸をして息をフーッと吐くことです。力が抜けて痛みも弱まります。担当医に気になる症状について話す際、内診に対する不安な気持ちも一緒に伝えて、できるだけコミュニケーションをとるようにしておくと、緊張を和らげることができると思います」
正直、病気だとしても知るのがイヤというか…
がんも治らない病気ではない時代。“ただし初期のうちならば”が大原則
病気の発見が怖すぎて知りたくないという本音に、先生の回答は? 「特に怖いイメージがあるのはがんだと思いますが、昔と違って現在は子宮頸がん、子宮体がん、乳がんも完治する病気。ただし、“初期の段階で発見して、早期に治療をした場合ならば”という条件つきです。海外では、HPVワクチン接種が進んでいることや子宮がん検診の受診率が高いため、子宮頸がん、子宮体がんともに減少傾向にあります。しかし、残念ながら日本ではいまだに増加傾向。受診を避けている間に病気が進行してしまったら、治るものも治らなくなってしまいます。最初は勇気がいりますが、少なくとも“もしかしたら病気かも”という不安はなくなるので、“安心が手に入る”と考えてみては」
生理痛程度で病院に行くのは申し訳なくて…
生理痛には子宮内膜症などの病気が隠れていることも。ちょっとした不調でも迷わず受診を
生理痛はあるのが普通という認識だと、この程度で受診するのは悪いと思ってしまうよう。実際、行ってOK? 「生理痛があるなら、程度にかかわらず診療対象ですから遠慮は必要ありません。生理痛は我慢しないで、ラクに過ごせるように治療したほうがいいのです。治療法も鎮痛剤や漢方、ピルなど様々ですから自分に合う方法を検討できます。若いうちから妊娠・出産があった昔と比べて生理の回数が多い現代女性は、体の負担も大きく、子宮内膜症のリスクも高い。そう考えると、妊娠を希望しないときにピルで生理を抑えることは、将来の病気の予防にもつながるセルフケアといえます。“病気の治療”と身がまえず、体とのつきあい方を相談する感覚で受診してみてください」
特に自覚症状もないので行く必要を感じません
自覚症状がない婦人科系の病気も多数。中には、不妊につながるケースも。早期発見、早期治療がいちばんです
安易な自己判断は禁物!と善方先生。「子宮内膜症の一種であるチョコレート嚢胞や、性感染症のクラミジアなどは重症になって初めて症状が出るケースもあり、無症状でも少しずつ病気が進行していることがあります。これらの病気は、ほうっておくと不妊を招く場合もあるので、自覚症状の有無で判断してしまうのは危険。よく結婚前に“ブライダルチェック”を受けるといいといわれていますが、結婚前に限らず、子宮がん検診や性感染症検査、血液検査など、ブライダルチェックに含まれているような検査を、まず一度ひととおり受けておくといいですね。妊娠できる状態かどうかもチェックできて安心ですし、もし妊娠しづらい状態とわかった場合でも早めに治療を始められます」
いい病院や先生がわからない
日本産科婦人科学会専門医の資格があるかどうかが重要
いい婦人科や先生がわからないという場合、選び方のポイントとは? 「クチコミを調べるといいとよくいわれますが、それより大事なのは日本産科婦人科学会専門医の資格をもっている医師であることです。この資格は学会指定の病院で3年以上研修し、試験に合格したということで信頼できる医師かどうかを見極める重要なポイント。ホームページなどで医師の資格をチェックした上で選びましょう」
子宮頸がんワクチンが必要なのは若い人でしょ?
がん化しやすいHPVに未感染ならワクチンを打つことで予防できます
子宮頸がんはセックスによってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することが原因で、それを防げるのがHPVワクチン。「このワクチンはセックスの経験がない若い頃に受けないと意味がないと思っている人も多いようですが、そういうわけではありません。HPVにはがん化するタイプとしないタイプがあるので、すでにセックスの経験がある人でも、現時点でがん化するタイプのHPVに感染していないのであれば、HPVワクチンを打つことでその感染を防げるので打つ意味はあるのです。HPVに感染しているかどうかや、どのタイプに感染しているかは婦人科で調べることができます」
「薬」を飲むことに抵抗が…
薬で不快な症状をコントロールするのはむしろ賢い選択です
“結局薬を飲むだけなら行きたくない”という人も。「昔は依存性がある鎮痛剤もあったので、抵抗感があるのかもしれません。でも現在は、生理痛の原因となるプロスタグランジンという物質の合成を抑える作用が主流で、痛みが起きる前に飲んでおくとよく効きます。服用しても数時間後に尿とともに排出され体にたまることもありません。“痛みは耐えるべきもの”ではないし、薬で自分を楽にしてあげるのはポジティブなことですよ」
どのくらいの頻度で行くのが正解?
子宮がん検診は年1回が理想的。何か症状がある場合はもう少し早めに受診を
「婦人科検診の中でも、子宮がん検診は基本的には年1回受けるのが理想的。あとは何か症状があったり、異常が見つかった場合はもう少し短いペースで受診が必要になることもありますが、適切な頻度を担当医に確認すれば大丈夫です。受診し始めると、心のハードルも下がるはず。自分の体をケアする方法のひとつに婦人科があると思っていただけたら」
お金がかかるのも躊躇する理由です
症状があって受診した場合は保険がきき、低用量ピル1カ月分でも1000円未満
金銭的な負担が理由で受診を躊躇する人もいるけれど、費用は高い? 「症状があって受診をした場合は保険がきくので高くありません。たとえば低用量ピルは月経困難症や子宮内膜症の治療には保険適用で、1カ月分1000円未満に抑えられます。ただ検診は自費なので、医師に相談して今必要な検査にしぼったり、自治体の補助を利用するのがおすすめ」
イラスト/いいあい 取材・原文/和田美穂 ※BAILA2022年12月号掲載