働く30代が抱える日々のもやもやを、一見冴えない(!?)アンガールズの田中卓志先輩にぶつける連載【隣の部署の田中先輩】第22回! 今回は、昭和の上司と令和の後輩。世代間ギャップに苦しんでいるという悩みに田中先輩が的確アドバイス!
《今月のお悩み》昭和の上司と令和の後輩。世代間ギャップに苦しんでいます(30歳・メーカー)
新入社員が今年もやってきましたが、いわゆる典型的なZ世代です。サクッと早く帰ったり、飲み会は当たり前に来なかったり。仕事だから無理する必要はないし全然いいと思うのですが、一方で上司の“昭和感”を受け止めるのがずーっと私の仕事のままでつらいです。私はどちらのわがままにも寄り添い続けなければいけないのでしょうか?
田中先輩の答え…世代の間に“緩衝材”の我々がいるから、新しい時代は生まれる
悪しき習慣を断ち切るZ世代はある意味、勇者
世代が変われば価値観や感覚は変わる。僕自身、他の世代とギャップを感じることはよくあります。たとえば、うちの若手マネージャー。僕と彼女の年齢差は22歳もあって。それだけに通ってきたカルチャーも全然違うわけで。昭和のバンド『ジッタリン・ジン』を知らない彼女は『死んだ隣人』と空耳。「このバンドについて田中さんに聞いてほしいとお願いされているんですけど。いくら調べても見つからないんです……」と、この世に存在しないバンド『死んだ隣人』を必死に探していたこともあったりして(笑)。
Z世代とは、聴いている音楽や持っている情報だけでなく、仕事との向き合い方も全然違う。それは芸人の世界も同じです。僕が若手の頃なんて、ネタを書いてライブに出てなんぼ、それができないと何も始まらないような世界だったけど。今の若手は「動画配信でネタを披露しています」みたいな。ライブ会場のステージではなくスマホの前に立っていたりするし。もはや、彼らにとってはテレビが絶対的な存在だった僕たちは旧世代の人間。「SNSのフォロワーの数のほうが結構大事っす」なんて言われちゃったりして。もう、やっていることが全然違うんだよね。で、ちょっと話を聞けば「田中さん、そんなことも知らないんですか⁉」と老人扱い。そのたびに言ってやりたくなりますからね。「全部、オレたち世代が育ててきたんだぞ」と。スマホもパソコンも、我々が不便な時代を生きてきた中で生まれたもの。「我々の試行錯誤あってこその今の便利な時代なんだぞ‼」と(笑)。
ギャップを感じるのは下の世代だけでなく上の世代もまた同じ。上の世代からは昭和のやり方を押しつけられて苦労してきた人もきっと多いはず。でも、今はそれと同じことを下の子にはできない。自分たちは先輩に気をつかうのが当たり前だったけど、今の子たちは昔の自分と同じように気をつかってはくれない。むしろ、自分たちのほうが下の子に気をつかっていたりして……。なんだか、損をしているような気持ちにもなるよね。でも、よくよく考えると、Z世代が言う「飲み会には行かない」「残業はしたくない」「ちゃんと有休をとりたい」なんて意見って、自分たちもどこかで「そうしたい」と思っていたことで。ある意味、我々が「なんかおかしい」と感じながらも言えなくて、心の中にずっとしまい込んでいたことを若い世代がハッキリと意思表示してくれているというか。それは自分たちにとっても悪いことではないと思うんだよね。
だからと言って、彼らの“わがまま”を全部聞くのはちょっと違うよね。言うべきことはちゃんと言ったほうがいいと思う。大学時代、僕が入っていたサークルは先輩がすごく厳しくて。僕らの世代は先輩が残したその厳しさをすべて排除。後輩を甘やかしに甘やかした結果、僕たちが卒業したあとすぐにそのサークルは廃部に(笑)。そんな経験からも思うのは「上の世代の厳しさにもやっぱり意味はある」ってこと。上の世代にも、下の世代にも、それぞれのよさがある。それを理解しつなげることができるのは僕ら“緩衝材世代”だけ。そんな自分たちの役割に誇りを持って、ムカついたときは「社内の平和を保っているのは私たちなんだ!もっと私たちに感謝しろ!」と心の中で叫びながら(笑)、皆でいい時代をつくっていきたいよね。
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田中卓志
たなか たくし●1976年生まれ、広島県出身。大学時代の友人、山根良顕とお笑いコンビ「アンガールズ」を結成。「呼び出し先生タナカ」(フジテレビ系)など多数のバラエティで活躍中。
撮影/黒沼 諭〈aosora〉 ヘア&メイク/高橋将氣 スタイリスト/高山良昭 イラスト/ますこえり 取材・原文/石井美輪 撮影協力/アワビーズ ※BAILA2024年10月号掲載