2.5次元作品で活躍し、苦楽をともにしてきた鈴木拡樹さん、北村 諒さん、和田琢磨さん。出演する舞台『刀剣乱舞』の7周年を記念して、刀ステトーク。3人の仲良しぶりと舞台への愛が伝わる、前後編の後編です。
安心して舞台に立てるのはブレない拡樹くんのおかげ
手ごたえを感じた初演の勢いそのままに、大人気舞台へと駆け上がった刀ステ。成功の裏には演者たちの真摯な取り組みがあり、葛藤や苦悩も潜む。
和田 2020年の「科白劇」は大変でしたね。コロナ禍で自分の座長回が回ってきて、ある種、ろうそくの火が消えかかった瞬間に座組を任され、形容しがたいほどのプレッシャーに襲われて……。そんなとき、拡樹くんが掲げた“戦い続ける座組”というスローガンが頭をよぎり、それに救われたことも。無事にやり切ることができて本当によかった。
鈴木 しかも昨年、改めて「綺伝」をお客さまにお届けして。戦ってるなーと感動しました。
和田 「科白劇」のときは演者同士、2m以上距離をとった状態で芝居して。大変だったけど、制限されたなかでどう新しいものを作るかワクワクする気持ちもあったんだよね。結果的には、新しいものを作ろうと思ったら意外と古典になることに気づき……。戦う姿をどう見せようか悩んだとき、歌舞伎のように正面を向いて「わぁー!」とやったら、何とかなるもんだなと(笑)。
北村 回りまわって原点に戻ってくる。
和田 そう。貴重な経験でしたね。
鈴木 「无伝」のときも大変だったよね。
和田 100公演だもんな。
北村 「天伝」と「无伝」、合わせて200公演の予定で。僕は「无伝」に出演し、コロナ禍で83公演になったんですけど、あのときの大変さは体と記憶に深く刻まれてる(笑)。ただ、何がすごいって、公演中、拡樹くんがいちばん動き回って、体を酷使していたはずなのに、ケアしてくれてるトレーナーさんが「拡樹くんのコンディションがいちばんいい」と言っていて。
鈴木 あれは偶然。たまたまコンディションがよかったんだよ(笑)。
北村 偶然ってある(笑)? やっぱり体の使い方やケアが上手なんだなと思った。拡樹くんが絶対的な存在としてブレずにいてくれるから、僕らは安心して板の上に立てているんです。
鈴木 個人的に印象深いのは「悲伝」。僕が演じる三日月宗近だけは何度も同じ時間をループしていたことが判明した作品であり、大千秋楽公演だけは、それまでとは結末が変わるという。異端な作品でしたね。
和田 大千秋楽の朝に殺陣を稽古してたもんな(笑)。
北村 結末が違うからね。
鈴木 そうだね(笑)。
和田 大変だなーと思ってましたよ。
今、2.5次元は転換期を迎えているのかも
舞台『刀剣乱舞』をはじめとする2.5次元作品の人気はすでにブームから定着へ。その立役者でもある3人は進化のプロセスをどう感じているのだろう。
北村 僕が舞台に出演し始めた頃はまだジャンルとしてそこまで確立していなくて。その後、少しずつメディアで取り上げられ、2.5次元というワードが浸透しだすと、「3年で終わるだろう」みたいな言葉も耳に入ってきて。それでも一過性で終わらず、ここまで盛り上がっているのはすごいことだし、日本のアニメやマンガが海外にも誇れる文化になっている今、2.5次元というジャンルの成長にも大きな可能性を感じます。
和田 マンガやアニメ、ゲームを原作とした2.5次元作品の場合、キャラクターのセリフやポーズ、立ち方まで決まっている。そんな制限があるなかで、キャラクターを生き生きとさせるのは、実は高度な技術がいることだったりするんですよね。しかも、僕らが始めた頃は前例が多くなく、自分たちで試行錯誤して作り上げるしかなかった。今では参考にできるものも増えたけど、同時にお客さんの目も肥えてきているから、「はい、このパターンね」と中途半端に作っていては衰退していく一方だと思う。作り手側もその変化にしっかり対応していかなければならないし、そう考えられるぐらいジャンルとして定着してきたんだなと思いますね。
鈴木 刀ステにも出演している荒牧慶彦くんなんかは、このジャンルをもっと広めようと、今までにはなかった角度からの仕掛けにも挑戦していて。何事もやってみなければわからないですし、僕もできることは協力して、盛り上げていけたらいいなと思います。
ますます期待が高まる2・5次元界では次々と新たな作品が生まれ、有望な若手役者も続々誕生。20代前後のフレッシュな熱量に刺激を受けることも?
和田 熱量というか、“あの先輩たち、いつになったら退くんだろう”という圧は感じてます(笑)。
北村 むしろ、それをストレートに言われることもありますから(笑)。特に最近は2.5次元に憧れて入ってくる子も多く、「2.5次元舞台に出たいです」と言ってる子たちに会うと、なんだか申し訳ない気持ちになる(笑)。
鈴木 われわれは役者業のひとつとして2.5次元に関わっていて、2.5次元だけやっている役者という感覚はないから。
和田 俺ら世代はそうだよね。
鈴木 でも、若手の世代からは、2.5次元専門の役者が誕生するかもしれない。ミュージカル界にはミュージカル俳優がいて、歌舞伎界には歌舞伎役者さんがいるように、“2.5次元役者”というものが生まれて、そこでようやくひとつのコンテンツとして確立されるのだとしたら、今が新たな転換期なのかもしれないですね。
2.5次元舞台は、まだ確立されきっていないからこそ、いろんなチャレンジができると思う(鈴木)
鈴木拡樹
すずき ひろき●1985年6月4日生まれ、大阪府出身。舞台『刀剣乱舞』では座長を務め、多くの作品で主演を担う2.5次元のレジェンド。近年の出演作にミュージカル『SPY×FAMILY』、舞台『アルキメデスの大戦』、「バクマン。」THE STAGE、『映画刀剣乱舞-黎明-』など。
北村 諒
きたむら りょう●1991年1月25日生まれ、東京都出身。主な出演作に、EX『仮面ライダーギーツ』、「僕のヒーローアカデミア」The"Ultra"Stageシリーズ、舞台『青の炎』など。直近では8月3日より上演の舞台『転生したらスライムだった件』に出演。
和田琢磨
わだ たくま●1986年1月4日生まれ、山形県出身。2.5次元からストレートプレイまで幅広く活躍。出演作に舞台『鋼の錬金術師』、東映ムビ×ステ『仁義なき幕末』など。11月4日より上演のCOCOON PR ODUCTION 2023『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』に出演。
舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭-夢語刀宴會-
原案/「刀剣乱舞ONLINE」より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
出演/鈴木拡樹、北村諒(8/6のみ)、和田琢磨ほか
脚本・演出/末満健一
日程/2023年8月4日~6日
幕張メッセ 幕張イベントホールにて
詳細は公式HPへ
舞台『刀剣乱舞』の7周年を記念して、3日限りの感謝祭を開催。通常の公演とは異なるスペシャルな内容に!? 「科白劇」で刀装として登場した講談師・神田山緑も出演。
(北村さん)ジャケット¥79200・プルオーバー ¥39600・パンツ¥38500/DIET BUTCHER シューズ¥83600/FAITH(KIDS LOVE GAITE) リング ¥25300/GARNI Tokyo(GARNI)
(鈴木さん)シャツ¥22000/ナンバーナイン(ナンバーナイン) パンツ¥5940/シアン PR(キャスパージョン)その他/スタイリスト私物
撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア&メイク/城本麻紀(鈴木さん)、車谷 結〈zhoosh〉(北村さん)、野澤文愛(和田さん) スタイリスト/中村美保(鈴木さん)、石橋修一(北村さん)、ホカリキュウ(和田さん) 構成・原文/関川直子 ※BAILAhomme vol.3掲載
BAILAhommeは売り切れ次第終了!!
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